いかにもデヴィッドリンチな本作品。と言っても僕はそこまで観ているわけではないけど。
本作の少し後のマルホランドドライブの前身とも言われるように、超難解映画が多いと言われる作品群の中でも、特に色んな解釈が出来そうなロストハイウェイ。
マルホランドドライブとの共通点について触れている人も多数。
公開当初は、支離滅裂だと、批評家からは非難されたらしい。でも、よくあるパターンでカルト的に人気が出てきて、そのうち賞賛されるようになっていったと。
あまり解説チックには書いていませんが、ネタバレありつつ参ります。
概要
基本情報
1997年 アメリカ・フランス
監督:
デヴィッド・リンチ(David Lynch)
キャスト:
ビル・プルマン(Bill Pullman)/ フレッド・マディソン
パトリシア・アークエット(Patricia Arquette)/ レニー・マディソン、アリス・ウェイクフィールド
バルサザール・ゲティ(Balthazar Getty)/ ピーター・レイモンド・デイトン
ロバート・ロッジア(Robert Loggia)/ ミスター・エディ
ロバート・ブレイク(Robert Blake)/ 謎の男
ナターシャ・グレグソン・ワグナー(Natasha Gregson Wagner)/ シェイラ
リチャード・プライヤー(Richard Pryor)/ アーニー
ジョヴァンニ・リビシ(Giovanni Ribisi)/ スティーヴ
ゲイリー・ビジー(Gary Busey)/ ビル(ピーターの父親)
あらすじ
デヴィッド・リンチ監督による衝撃的なサイコ・スリラー。妻レネエと平凡な生活を送る、サックス奏者のフレッド。ところがある日、ディック・ロランドは死んだ、と誰かがインターフォンで謎のメッセージを告げた。やがて一本のビデオ・テープが届く。そこには、妻をバラバラに切り刻む彼の姿が写っていた……。
サイコジェニックフーガ
リンチ監督自身は本作を「psychogenic fugue」と表現している。
psychogenicは、「心因性の」とか「精神性の」の意味。fugueは「フーガ」。イタリア語が語源らしく、「逃走」の意味。
フーガをもう少し掘り下げると、
フーガの大きな特徴は、カノン同様、同じ旋律が複数の声部に順次現れるということである。 この部分を主題提示部、または単に提示部、主部と呼ぶ
とのこと。素人の僕は「なるほど、カエルの歌か」と思ったけど、どちらかというとカノンらしい。カノンよりも自由度が上がって複雑になったものがフーガだと、僕は適当に理解をした。
そう、つまり、よく分かっていない、ということである。
そんな曖昧な状態でリンチ監督が言った「サイコジェニックフーガ」を鑑みると、
な、る、?、ほ、ど、?
分かったようなまだまだ分からないような。そんな感覚。
少しずつ変化を遂げたり、2つの世界が重なったり、自由にやってみたり、そう考えると確かにそうだなという気もするし、イマイチ掴みきれていないような気もするし。
2人が切り変わるところなんかは、平行世界のようにも思えてきたり。グニャッとしつつリンクしている感じは、結構メビウスの輪になんかに例えられたりしている模様。
リンチ監督自身は本作をサイコジェニックフーガの他に「アイデンティティ」についての話とも言っている。そして、とても抽象的で色んな解釈ができる、と。鑑賞者がそれぞれの解釈をすれば良いと。
だからまぁ、このシーンはこういうこと、なんて素人の僕が言えるはずもなく。
ロストハイウェイとは
タイトルになっている「lost highway」。
オープニングから、ワクワクするような恐ろしいような緊張してきそうな、そんな鼓動を早くさせてくる音楽に合わせて暗闇のハイウェイを走る描写。こんなに何かが起こりそう感を出してくる作品もなかなかないだろう。
そこで使われている音楽はデヴィッド・ボウイの「I’m Deranged」
音楽に関して言えば、デヴィッドボウイの他、マリリンマンソン、ラムシュタイン等々。めちゃくちゃカッコいい曲が揃っている。
この辺とか。
lost highwayという単語は、一緒に脚本を書いているBarry Giffordの本「Night People」の中で出てくるらしい。
リンチの前の作品、「ワイルド・アット・ハート(Wild at Heart)」は彼の同名小説を脚色したものだし、バリーギフォードのことはよく知っていたらしい。
ロストハイウェイをどういう作品にするか、2人とも違う意見だったらしいけど、書いて行くうちに元々のアイディアはどちらもボツにした模様。
本作での2人の主人公はお互いにリンクしている。結構そんなところが2人で書いているところに影響しているのかもしれない。
ダークな全体の雰囲気
最初は白黒で撮りたかったらしい。商業的なことを考慮してカラーになったけど、実際暗めのルックになっている。それが功を奏して、なかなか手探りな状態っぽい雰囲気になっている。
というか意図的にそういう「何か分からないけどよく見たら見えてきそうな、でも結局分からない」感じを作り出したかった、はず。
ダークで重めな雰囲気はフィルムノワールを前面に押し出してくる。ある批評家は主人公を典型的なフィルムノワールのヒーローだと言っている。性的で、暗くて、暴力もあり。
それ以外に関わるジャンルとしては、サイコスリラー、ホラー、それにドイツ表現主義やヌーヴェルヴァーグっぽさ。
インスパイアされた作品
インスパイアされた作品は以下のようなもがある、と言われている。
・恐怖のまわり道(Detour)1945
→エドガー・G・ウルマー監督作品。神経症のナイトクラブのミュージシャンが主人公。
・キッスで殺せ!(Kiss Me Deadly)1955
→ロバート・アルドリッチ監督作品。
・午後の網目(Meshes of the Afternoon)1943
→マヤ・デレン監督の短編映画。全体的な雰囲気。
・めまい(Vertigo)1958
→ヒッチコック監督作品。女のことが頭から離れなくなる。
製作年からもわかるように、ほぼほぼフィルムノワール作品。
OJシンプソンの事件
もう1つ発想の起点となったものとしてリンチ監督が言っているのは、OJシンプソンの事件。妻殺害の容疑をかけられたところ。
運命的というかなんというか、これに関連して、謎の男を演じたロバートブレイクも妻殺害の容疑がかけられていた。
実体験込みで
さらに、リンチ監督の実体験も取り込まれている。
冒頭のシーン、”Dick Laurent is dead” とインターフォン越しに言われる場面は、実際にリンチ監督が体験したことらしい。リンチ監督のとなりの家は、俳優のDavid Landerが住んでいたらしく、住所間違えちゃったんじゃないかってリンチ監督は思っている模様。でも、外を見ても誰もいなかったらしい。恐ろしすぎる。
ということで
何はともあれ、曖昧さを楽しめば良い。
リンチ監督作品ならマルホランドドライブ
現実のものと捉えてしまう映画の最高峰と言えばサンセット大通り
ラストが論争になった未来世紀ブラジル
なんかもおすすめです。
コメント