アリスのままで / Still Alice

参ったね。

年々涙もろくなっている僕にとって、これはまずい。

生まれながらにして高い感受性を持っていると言われている魚座の僕にとって、これはまずい。

周りに若年性アルツハイマーだったりその他同系の病気にかかっている人は幸いいないのだけど、気づけばモロに入り込んで、悲しみやら切なさやら困惑やら期待やら絶望やら不安やら怒りやら色んな感情が湧き出てきた

そして迎えるラストのあれ。

無理無理無理。

普通の感動物語とかではない。あらすじ読めば分かるけど、みんな幸せ超ハッピーなラストなんて待っていない。

現実的であることがさらに胸を締め付けるけど、現実的だからこそ、ただの他人事にならずに心に残る

家族と言えど、それぞれの人生があって、それぞれの生き方がある。起こったことに対して、何かしらの選択をする。

ふむ。

本作でジュリアンムーアがアカデミー取ったけど、これは納得。彼女の全ての演技が僕のあらゆる感情を呼び起こした。

と、偉そうに言ってみたけど、その年の主演女優賞ノミネート作品は一本も観ていない。

後は余談を入れつつネタバレありつつ参ります。

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以下ネタバレありますのでご注意ください。
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概要

基本情報

2014年 アメリカ

監督・脚本:
リチャード・グラツァー(Richard Glatzer)
ワッシュ・ウェストモアランド(Wash Westmoreland)

原作:
リサ・ジェノヴァ(Lisa Genova)

キャスト:
ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)/ アリス・ハウランド
アレック・ボールドウィン(Alec Baldwin)/ ジョン・ハウランド
クリステン・スチュワート(Kristen Stewart)/ リディア・ハウランド
ケイト・ボスワース(Kate Bosworth)/ アナ・ハウランド=ジョーンズ
ハンター・パリッシュ(Hunter Parrish)/ トム・ハウランド
シェーン・マクレー(Shane McRae)/ チャーリー・ジョーンズ
ステファン・クンケン(Stephen Kunken)/ ベンジャミン先生
ヴィクトリア・カルタヘナ(Victoria Cartagena)
セス・ギリアム(Seth Gilliam)

解説

若年性アルツハイマー病と診断された50歳の言語学者の苦悩と葛藤、そして彼女を支える家族との絆を描く人間ドラマ。ベストセラー小説「静かなアリス」を基に、自身もALS(筋委縮性側索硬化症)を患ったリチャード・グラツァーと、ワッシュ・ウェストモアランドのコンビが監督を務めた。日に日に記憶を失っていくヒロインをジュリアン・ムーアが熱演し、数多くの映画賞を席巻。彼女を見守る家族をアレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワースが演じる。

あらすじ

50歳の言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)は、大学での講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に家に戻るルートがわからなくなるなどの異変に戸惑う。やがて若年性アルツハイマー病と診断された彼女は、家族からサポートを受けるも徐々に記憶が薄れていく。ある日、アリスはパソコンに保存されていたビデオメッセージを発見し……。

 

製作陣とアルツハイマー

原作者リサ・ジェノヴァ

解説にもあるように、元ネタはリサ・ジェノヴァの同名小説、”Still Alice”。邦題は「静かなアリス」なんだね。

個人的には映画の邦題「アリスのままで」の方が好み。原作は読んでいないので、原作と映画でメインのメッセージが同じかどうかは分からないけど、記憶を失っていく中で、自分自身と家族、その他関わりのある人たちにとって、「アリスのままでいる」ということに重きを置いている感があって好き。

あらすじ読むと、実話に基づく物語っぽいけど、フィクション。フィクションと言えど、元々リサジェノヴァは実際ハーバードで神経科学の博士号を取得している神経科学者で、TEDとかでもアルツハイマーについて語っているから、その辺の描写はまぁリアル。

TEDでは、「アルツハイマー病を 予防するためにできること」として、外国語を習ったり、新しい友達を作ったり、本を読んだり、TEDトークを聞いたり、そうやって、記憶の関連付けをする経路を増やすのが良い、と語っている。

そして動画内の最後の言葉。

「もしアルツハイマーと診断されても、明日死んでしまうわけではない。生き続けてください。感情記憶は失わないから、まだ愛や喜びがわかります。5分前に言われた言葉を覚えていられなくても、どんな感情を抱いたかは覚えている。」

これを最後に持ってきたあたり、「アリスのままで」のラストと通ずるところがあって、なんだかグッときた。

小説のStill Aliceは最初自費出版しているけど、人気もあってどっかと契約してその後ペーパーバックかなんかで出版されている。

これ以降も何本か書いていて、半側空間無視、自閉症、ハンチントン病なんかの患者たちに関連する小説を書いている。「アリスのままで」と同様に、そういう特定の病気にかかっている人と、その周りの人たちとの関わり方なんかに焦点が当たる。らしい。

ちなみに映画との関わりとしてジェノバは、リディアの演劇のシーンの一観客としてチラッとカメオ出演している模様。

監督2人

本作の監督はリチャード・グラツァーとワッシュ・ウェストモアランドの2人。

最初はリチャード・グラツァーに話がいったらしいんだけど、彼が元々患っていたALSが進行してしまって、そのまま続けるのが厳しかったらしい。最後の方はiPadでテキスト入力してやり取りするしかコミュニケーション取れなかったレベルで。

それで、結婚相手のワッシュ・ウェストモアランドがサポートとして入ったと。ちなみにウェストモアランドの方は、福岡大学で東アジアの研究をしていたらしい。

どんどん病気が進行してしまう感じは、映画の中でも同様にあって、それがなんとも切ない。そのいい感じの切なさは彼らだからこそできたのかもしれない。本人と、その人をサポートする周りの対応。グラツァーは残念ながら公開の翌年、2015年に亡くなっている。

そんなジュリアンムーアとクリステンスチュワートはグラツァーのためにアイスバケツチャレンジをやっている。

ジュリアンムーア

クリステンスチュワート

ジュリアンムーア

とんでもなく高い評価を得たジュリアンムーア。この役のために4ヶ月くらいアルツハイマーについて勉強したらしい。

ドキュメンタリーを見たり、患者と話したり、彼らをサポートする人たちと会ったり。劇中でも行われていた認知テストとかもやったと。

ジュリアンムーア自身はそれまでもアカデミーにはノミネートは何回かされていたけど、本作で初の受賞。

アカデミー受賞の時。監督についても少しだけ話に出している。

もうね、ちょっとした仕草とか表情とか、たまらない。たまらないってのは、「こんな演技できんのかすげー」というエキサイトな方面でもそうだし、「アリスの感情とか心のあり方を想像しちゃって耐えられないよ」というメランコリックな方面でもそう。

全て含めての、

たまらない。

その辺も後ほど書きます。

音楽イラン・エシュケリ

音楽を担当したイラン・エシュケリ(Ilan Eshkeri)。彼はアルツハイマーの人と接点があったようで、本作の製作の話を聞いて、かなりやる気に満ち溢れていた。本作以外にも、そういう仕事をいくつかやっている。

2012年のイギリスのスリラー映画「Ashes」とか(アルツハイマーを患っている人が出てくる。)(ジムスタージェスとかが出ている)、

ティムウィーラーの2014年のアルバム「ロスト・ドメイン(Lost Domain)」とか(アルバム発表の数年前にティムウィーラーは実父をアルツハイマーで亡くしており、それがきっかけで制作された)、

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Alzheimer’s Societyという認知症絡みの協会?団体?(Alzheimer’s Societyは名前の割にアルツハイマーのサポートはしていないみたい)のチャリティーとしてコンサートをやったりとか、結構活動している。

ちなみに他の映画音楽で言えば、

2007年の「スターダスト(Stardust)」、2009年の「ヴィクトリア女王 世紀の愛(The Young Victoria)」なんかで仕事をしている。

 

観るべきところは

観るべきというか、自然と感情が揺さぶられて沸き起こってくるからその感覚を大いに楽しんでほしいのだけど、その根底にあるのはやっぱりジュリアンムーアの演技。

序盤のジョギングシーンの、「あれ?ここは?」みたいなところから、中盤の必死にアルツハイマーに抗おうとしているところを経ての、終盤のもうどうしようもできないようなところまで、何から何まで。

観ていて本当に胸が苦しくなるようなシーンも多い。ある意味残酷で、えぐられる。心がかき乱されて、悲しくなって、でもさらに病気は進行していく。

こういう病気系の映画って言うほどあんまり観ているわけではないけど、幸い自分は大きな病気になったこともないし、そんなに共感的なものはないだろうと思っていた。

それが完全に罠だったね。

ちゃんと大人になって、ある程度は共感力を身に付けての鑑賞で本当に良かった。高校生の時に「世界の中心で愛を叫ぶ」を観て何にも心に響かなかった僕は「心のない人」という烙印を押されてムッとしていたけど、本作観て思った、一本映画観て何も感じなかったからってそれだけで判断するなタコ、と。

それはそれとして。

とにかく、ジュリアンムーアの演技に引き込まれて下さい。アルツハイマーが進行していくのを見るのは辛いけど、最後の最後まで、とにかくすごい。

そしてものすごくどうでも小ネタだけど、この前年、ブルージャスミンに出ていたケイトブランシェットがアカデミー主演女優賞を受賞している。そのブルージャスミンでのケイトブランシェットの夫役を、アレックボールドウィンが演じているという。

ブルージャスミンでのケイトブランシェットもものすごかった。ああいう、何というか、色々と際どい演技ができる人を、きっと僕は好きなんだろう。

 

家族との関わり

ただ単純に、アリスの病気の進行を描いて終わりではなくて、周りの、特に家族がどう対応して、どう反応して、どう考えるのか、そこをものすごく直接的に考えさせられる。

もし、自分がそんな状態になってしまったら。

もし、自分の最愛の人がそんな状態になってしまったら。

冒頭のシーンで、アリスたちが人生を謳歌していそうな家族だということははっきり描かれるけど、ここから落ちていくのかと思ったら最初から切なくなる。

で、そんなアリスの家族ももちろんサポートしていくわけだけど、彼らにもそれぞれ考えがあって、人生がある。家庭を持ったり、やりたいことを優先したり。

アリスは遺伝性のあるタイプだっから、それを受けて子供達が検査を受ける受けないの選択、そして、結果を出た後の反応、それもなかなかキャラが出ていた。

ずっと一緒に何事もなく過ごせるのがベストなのは分かってはいるけど、やりたくても出来ないことがある。

本作の中でも特に重要な立ち位置なのは、クリステンスチュワート演じるリディアだった。家族の中でも特にアリスとはぶつかることが多かったけど、そこは映画的展開というか、1番アリスとの絆が描かれた。今まで家族の中で1番自由に自分を出してきたリディア。その分アリスと一緒にいるというね。

そんなんあっての、ラストシーン。

あーーー。

 

ということで

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