台風クラブ

 

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概要

基本情報

1985年 日本
監督:相米慎二
キャスト:
三上祐一 / 三上恭一
紅林茂 / 清水健
松永敏行 / 山田明
工藤夕貴 / 高見理恵
大西結花 / 大町美智子
会沢朋子 / 宮田泰子
天童龍子 / 毛利由利
渕崎ゆり子 / 森崎みどり
三浦友和 / 梅宮安
尾美としのり / 小林
鶴見辰吾 / 三上敬士
小林かおり / 八木沢順子
石井富子 / 八木沢勝江
佐藤允 / 英夫
伊達三郎 / 岡部

解説・あらすじ

台風の接近とともに言いようのない感情の高ぶりを見せ騒乱状態に陥る中学生たちの姿を瑞々しく描き出した青春映画の傑作。監督は「セーラー服と機関銃」 「ションベン・ライダー」の相米慎二。東京近郊の地方都市。私立中学校のプールに夜、5人の生徒たちが泳ぎにやってくる。彼女たちは先に来ていた男子生徒 に気づき、イタズラをするが度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた。以来、生徒たちの間で徐々に何かが 狂い始めていくようだった……。

批評と受賞歴

・第1回東京国際映画祭:ヤングシネマ部門大賞受賞
・第7回ヨコハマ映画祭:最優秀新人賞受賞(大西結花)

 

はじめに

最近、何かと「桐島、部活やめるってよ」(記事へ)関連の映画を見ている。本作もその一つ。吉田大八監督が桐島を撮る時に参考にしたい部分があって見返した、って言ってた。だから期待度マックスで見た。

本作はなかなかカルト的な人気も出て、後にイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督にも創作意欲を刺激する影響を与えたとか。

中学生のなんともいえないモヤモヤ感とかを表現した青春映画なわけだけど、前回記事の青春映画の金字塔「ブレックファストクラブ」(記事へ)も奇しくも1985年の映画で、若者の感情を表す映画ってのが国をまたいで公開された、というのはなんとなく興味深い。

で、どうだったかって言うと、

なんかよくわからない。

よくわからないけど、今振り返ってみると、この、「よく分からなさ」が意外と重要な気がしてきた。そして考えているうちに、徐々に徐々に、よくできた映画なんじゃないかって思ってきた。

これは中学生のもやもやした思春期の感情を映像で表現している映画。28歳の中学生の頃の記憶がどんどん失われつつあるおっさんにとっては致命傷かもしれない。

というのも、中学生という微妙な年齢だからこそ感じる感覚があるから。

何の変哲もない日常で、何を探しているのかもわからないけど「何か」ないかなと常に探していて、外、他者、性、未来への興味と不安が最大限に沸いている状態。

そういう、いろんな感情が入り乱れる子供と大人の中間地点にいる最中でないと全てを感じ取ることは厳しいのかも、とふと今思った。

そして決定的なのが、相米監督のインタビュー記事にあった。

「誰が見りゃいいのかねぇ。でも、大人が見たってしゃあねぇしな。」

え。
まぁでもこんな感覚を映像を以って大人の観客に思わせるところが、本作が青春映画の傑作と言われるようになった所以かもしれない。そして将来、エゾカモシカになりたいと思っていた人はぜひ観るべき作品かもしれない。さらにこんな映画、多分今では撮れないと思う。

では、ネタバレありつつ参ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台風のワクワク感と中学生の爆発力

他の方もレビュー等でおっしゃられている通り、台風が来る時ってなんだかこう、ワクワクする。その台風のエネルギーに重ね合わせるように、彼らの内に秘めていたエネルギーを爆発させる、ってな感じの作りになっている。

なっているがしかし、

そんなに爆発力はない

って正直感じた。

家出学校での乱痴気。

言ってしまえばこれだけだから。これが28歳のおじさんの意見。

先生のセリフが蘇る。

「あと15年の命だ」

ああああぁぁ、もう死にかけてます。。

でも何か楽しいことないかなって探し続けちゃってます、すみません。あでも、レイプ未遂は爆発力あった。あの、好きっていう感情と、性への興味と、かまってほしい感情、それがごちゃごちゃして、後先考えずに行動に出ちゃった感。

怖いシーンではあるけど、何かにぶつけたい感情が表現できていると思う。

そういう意味でいうと、家出した理恵はそのままセリフで「このまま終わりたくない」的なことを言っていたし、学校での乱痴気も同様、これまでになかった “何か” を求めている。

すんごい中学生が懐かしくなった。

 

先生とその他大人

子供の敵は大人、生徒の敵は先生。ブレックファストクラブでも先生は5人の共通の敵だった。そしてブレックファストクラブの先生も言っていた。

「最近の子供はおかしい。」

ブレックファストクラブの用務員の人は答えた。

「あなたが変わったんですよ。」

今回出てくる先生の恋人の母親も学校へきたときに言っていた。

「最近の子供は。。」

自分の年代がゆとりと呼ばれるかどうか微妙なラインなのは置いておいて、いつの時代でもやっぱ子供はそう言われるらしい。

年配者が決まって言う「俺たちの頃はこうしてた」。

知るかぼけ

って思うけど。

でも、自分がさらにおっさんになったら子供達をみて、そんな風に思ってしまうかもしれない。大人も中学生を経て大人になっているわけだから、気持ちが分かるはずなんだけどね。人生いろいろ経験すると見えてくるものもあれば、忘れていくものあるんだよね。

うん、なんだか切なくなってきた。

 

現代の中学生は

最近は知らんけど、ゆとり世代からさとり世代へと変わり、人生を達観しちゃってるらしいからね。今どきの思春期の子たちにはこの作品は響かないかもしれない。

完全に偏見だけど。

いや、三上役に重ねられるのかな、もしかして。三上よりもさらに悟りを開いているイメージだけど。

 

三上の飛び降りと死んだかどうか

個は種を超越できるか

こんなことを真面目に考えていた三上。
一人で考えている姿が多かった三上。
みんなで騒いだ後も1人、考え込んでいた三上。

祭壇っぽいものを机と椅子で準備する三上の長回し。で、朝。

「死は生に先行する。厳粛に生きるための死が与えられていない」
「これが死だ」

自分は三島由紀夫を思い出していた。

taihu02.png

 

三上よ、
なんだか難しいわ

って、死んでない(と自分は思っている)から言えるんだけど。足がぴくぴくしてたし。

ちなみにこのシーン、普通に頭突っ込んで管通して息できるようにしてたんだって。でも実際はほとんど息できなかったから必死で息止めていたらしい。頭出した時ももちろんカメラ回してて(そこは使われないけど)、頭抜いた時の表情が最高だった、って相米監督が言ってた。

多分、「生きる」みたいな表情だったんだろうね。笑っちゃいけない気もするけど若干あるこの面白さ。

中学生なりに色々と考えて、それがどんな形でも表現する。結局何が正しくて何が正解かなんて分からないけど、三上にとって1つの答えを出せたんだろう。答えを出した結果、あんなポーズになってしまったわけだけど、結局死にきれない。

なんかそこにも中学生の曖昧な、中途半端な、微妙さが表れている気がしてならない。

ちなみに相米監督のインタビューで「三上は死んだかどうか」ってのに答えていた。以下引用。

相米監督:脚本でははっきり死んでるからな。俺は基本的に脚本の通りに撮ってるから。椅子をあんなに積んでったりするのはさ、俺がまだわかってないからあんなに長くなったりするんだろうしな、死ぬとかさ、そういうことがな。基本的には俺は死んだほうがいいと思うけどね。そうすれば・・・みんなああやって飛び降りてもさ、結局みんなチョンボして生き延びてきちゃってるわけじゃないか、みっともない大人になってるわけじゃないか、俺らみんな・・・あそこで死んでくれたほうが気持ちいいじゃないか、なぁ。

インタビュアー:(僕は生きてるのかなと思った)

相米監督:あ、生きてると思った?けっこう生きてると思った人が多いみたいだな。それならそれでいいしさ。何かみっともない大人ばかり増えるより、一人ぐらい死んでくれたほうが気持ちいいじゃない。

ということなので。

どっちでも良いみたいです。

 

桐島との共通点

てっきりスクールカースト的な要素があるのかと思っていたけど、全然違った。描いていることも、結構違った。

桐島の、桐島っていう指針を失った後、何したらいいかわかんない、って言うそのモヤモヤ感と、台風クラブの中学生たちのモヤモヤ感。

似ているような気もするし別のもののような気もするし。微妙。

桐島は人によっては自分が何するべきかってちゃんと分かってる人もいるわけで。というか桐島は台風クラブよりももっと万人受けするように撮られている。気がする。

その他、比較的似ている部分と言えば、

場所の限定的な描写

台風で校内に閉じ込められる話だから学校がメイン会場。基本的には校内の生徒とか先生との関係性。閉じ込められている閉塞感の中で、本当は外に出られないんだけど、外に飛び出して騒ぎ回るってのがね。

だからこそ理恵が家出するシーンでは原宿という都会の全くコミュニティ外の他者(大学生(?)とかオカリナの人)とのやりとりが際立ってくる。

時間軸の演出

「木曜日」とか「金曜日」とか。うん。それだけ。他の映画であるのかは知らない。エレファントは人物毎に区切ってた。

ということで

台風クラブでした。

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