市民ケーン / Citizen Kane

 

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概要

基本情報

1941年 アメリカ
監督:オーソン・ウェルズ(Orson Welles)
脚本:ハーマン・J・マンキーウィッツ(Herman Jacob Mankiewicz)
製作:オーソン・ウェルズ
キャスト:
オーソンウェルズ(Orson Welles)/ チャールズ・フォスター・ケーン
ジョゼフ・コットン(Joseph Cotten)/ ジェデッドアイア・リーランド
ルース・ウォリック(Ruth Warrick)/ エミリー・ノートン
ドロシー・カミンゴア(Dorothy Commingore)/ スーザン・アレクサンダー
アグネス・ムーアヘッド(Agnes Moorehead)/ ミセス・ケーン
ジョージ・クールリス(George Coulouris)/ ウォルター・サッチャー
ウィリアム・アランド(William Alland)/ トンプソン
エヴェレット・スローン(Everett Sloane)/ バーンスタイン
レイ・コリンズ(Ray Collins)/ ジェームズ・W・ゲティス

解説

新聞王ケーンが、“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死んだ。新聞記者のトンプソンは、その言葉の意味を求めて、生前のケーンを知る人物にあたるが……。様々な人物の証言から、新聞界に君臨した男の実像が浮かび上がる、斬新な構成と演出で評判を呼んだ、ウェルズ弱冠25歳の処女作。

 

史上最高の映画

史上最高の映画の呼び声高いオーソンウェルズ監督による市民ケーン。誤解されないように先に言っておこう。

観るべし。

幼い頃、母親から「市民ケーンやってるよ!」って言われて見始めて10分で飽きて以来、昔の白黒映画ってなんてつまらないんだろうって思って生きてきた。そういう小さい時の記憶って絶大な影響力を持っていて、昔の白黒映画に対してある種アレルギー的な嫌悪感も持ってた。

そして2011年、アカデミー賞5部門を受賞した「アーティスト(The Artist)」を観に行って気づいた。

やっぱり白黒サイレント映画はつまらない。

正直そう思った。

もうちょっと厳密に言えば「アーティスト」がつまらないわけではなくて、むしろストーリーの展開なんかはうまいこと進行しててすごく良い映画だとは思う。でも物心ついた時からテレビが当たり前にあって、カラーでがんがん喋ってる映像を観て育ってきたからには今更時代を逆行して映像化するなんて全くもって不要だと思っている。

アーティストの内容、構成を表現するのには白黒サイレントが一番効果的なんだよ、

って言われましても。まぁそうなんでしょうけど。

チャップリンなんかは「パントマイムこそが唯一の世界共通言語」とも言っていたし、言いたいことの意味は分かるし理解でもできる。

でも、技術面とか規制なんかでできないことがある中で試行錯誤しながら作られるからこそ、今となってはあたりまえになっていることでも、その当時に映像化されるからこそ、意味があって、評価される、と。そう思うわけです。

やっぱりなんだか物足りないなぁと思ってしまった、アーティストに関して言うと。

 

本題「市民ケーン」

ちょっと前置きが調子乗った感じになりましたけど、本題の市民ケーンは、

よくやってくれた。

とりあえず、自分の白黒映画アレルギーは払拭してくれた(サイレントは知らない)。

なんというか、

普通に面白い映画だった。

なんか煮え切らない言い方になっているけど、率直な感想としてはこの言い方。「普通に」っていうのが重要だと思っていて。現在2016年、市民ケーンの製作は1941年。75年も前の映画を観て、「普通に」楽しめる映画ってなかなかないと思う。

スターウォーズエピソード1を観た後にエピソード5を観て、

「え?ヨーダ・・え?」

ってなることを考えたら、市民ケーンは本当に今後も語り継がれる映画なんだろうと思う。ケーンが最後に言った「バラのつぼみ(rosebud)」とは何だったのか。それを探る映画ということで今回はネタバレなしで参ります。

 

史上最高の映画

これ、なんで未だに最高の映画として語り継がれているかって言うと、「今観ても普通に観られる映画」っていうのが1つ目。

高校の時の国語の教師が言っていたけど、夏目漱石の「こゝろ」を教材にした授業(だったような)で、

「天才は100年先が見えている」

って言っていて、人間の本質的なところを書いてるから、今の人たちが読んでも夏目漱石のメッセージを受け取ることができる、とそんな感じだった。名作というかずっと読み続けられたり観続けられる作品っていうのは、結局そういうもんなんだろう。

ドーンバーンのド派手なアクションものなんて技術が発展したらすぐ陳腐化する。10年経ったら見るに堪えない代物になってしまう。

だからこそ、アクション映画は今、この瞬間に観ておかなければならないのである。

あ、違った、市民ケーンだった。本題は。

いつの時代でも共通する価値観というか世界観というか、人生の生き方というか人生の悩みというか。目に映る光景は違っても、本質的には同じだよ、ということ。

 

影響を受けた作品と影響を与えた作品

なんで史上最高の映画なのか、の2つ目。

「この作品に影響を受けて今の映画は成り立っているから。」

そんなこと言い出したらキリがないけど。でもだいぶ映画の発展に貢献している。影響を受けたものをいくつか。

グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)

町山さんだったかな、元ネタとまでは言ってないけど、根本にあるものは一緒って言っていたものが、アメリカ文学を代表する作品の1つと言われているスコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)」。これはもうアメリカ人のための作品だと。

貧乏なところから金持ちになりました、で、今何を手にしているんだろう?

ということ。

今は金持ちのアメリカだけど、ルーツを辿ると元々はみんな貧乏だった。そんな彼らのお話ですと言ってた気がする。

力と栄光(The Power And The Glory)(1933)

もう一つ、市民ケーンに影響を与えたものとしては、「力と栄光」。プレストン・スタージェス(Preston Sturges)が脚本担当。この作品で、ナラタージュ(人物の語りや回想で過去を再現する手法)が確立された。

ちなみにこのプレストンスタージェスが脚本家兼監督の立ち位置を確立してくれたおかげで、その後ジョンヒューストンとかビリーワイルダージョセフLマンキーウィッツとかが出てきた。

ジョンヒューストンは前回の「チャイナタウン」(記事へ)にも出てたね。ジョセフLマンキーウィッツは市民ケーンの脚本家ハーマンLマンキーウィッツの実弟。

 

影響を与えたもの

逆に影響を与えた作品は計り知れない。スタンリーキューブリック、スティーブンスピルバーグ、ロマンポランスキー、シドニーポラック、ウディアレン、テリーギリアム、ガスヴァンサント、ポールトーマスアンダーソン。。

ね。彼らのベスト10に入っているわけですよ、市民ケーンは。最近の作品でいうと、デヴィッドフィンチャー監督の「ソーシャルネットワーク」。何回も言うけどこれのラストシーンがすんごい好き。

で、監督自らが現代の市民ケーンだって言って作っているのが「ソーシャルネットワーク」。だから撮り方とか構成なんかは本当にそっくり。らしい。内容は今思うと確かに同じだよね。

 

技術面

パンフォーカス、クレーンショット、ローアングル、コントラスト、超クローズアップ。。

他にもいろいろ。探せばいっぱい出てくると思います。今では当たり前になった技術も、当時のことを考えると、めちゃめちゃ革新的な映画だった。ってレビュアーの皆様方はおっしゃってました。

 

バックグラウンド

映画自体ではなくてね、この映画のモデルになったと言われているランドルフ・ハースト(William Randolph Hearst)って人がいるんだけどね。

その人自身の話とか、オーソンウェルズとの関係とか、その辺の情報もすっごいいっぱい出てくるから探してみると面白い。

 

製作陣

製作陣って言っても、製作・監督・主演、(一部脚本)がオーソンウェルズですからね。脚本のハーマン・J・マンキーウィッツがアカデミー脚本賞を受賞。

あと特筆するとしたら音楽、バーナード・ハーマン(Bernard Herrmann)。この方、市民ケーン以外にもヒッチコックの「めまい(Vertigo)」(1958)、マーティンスコセッシの「タクシードライバー(Taxi Driver)」(1976)とかに楽曲提供している。

それから撮影監督、グレッグ・トーランド(Gregg Toland)。ジョン・フォードとか色んな監督さんとやってて何度かアカデミー賞にもノミネート。最後が1948年の作品だからな、、勉強しないと。

 

キャスト

オーソンウェルズとジョゼフコットンは省略。

ドロシーカミンゴア

ちっちゃい劇場でお芝居してるところをあのチャップリンに見出されたんだって。市民ケーンに出た後は、みんな使いたがったんだけどRKOが拒否したと。こちらもランドルフハースト関係でなんやかんや色々ありそう。(英語が読めない)

エヴェレットスローンとレイコリンズ

オーソンウェルズとエヴェレットスローンとレイコリンズはThe March of Timeっていうニュース映画(?)に出てたりして、オーソンウェルズのマーキュリー劇団に入ることになった。

で、仲良くなってなんやかんやで市民ケーンに出ちゃいましたと。

アグネスムーアヘッド

ジョゼフコットンと同じくらいオーソンウェルズのマーキュリー劇団にとって重要な人。市民ケーンで映画デビューして、オーソンウェルズの2作目「偉大なるアンバーソン家の人々」で助演女優賞ノミネートされてる。

ルースウォリック

前にちらっと説明した「All My Children」って連続ドラマでの役が有名らしい。1970年から亡くなられる2005年までずっと。すごいよね、ずっとって。彼女も市民ケーンで映画デビュー。

ウィリアムアランド

ある意味でこの市民ケーンの中で一番重要であり一番かわいそうな役柄な気がするウィリアムアランド。ケーンの謎を探る中々重要な役のはずが、後ろ姿とかロングショットの画ばっかりだからね。でも観客自身が謎を探れるような撮り方なんだと思う。

ちなみに俳優だけじゃなくてプロデューサーとか脚本とか監督とかもやってる。そんなところか。

ここに書いてないジョージクールリスとかアースキン・サンフォード(Erskine Sanford)もそうだけど、1つ言えることは、みんな、 オーソンウェルズとの出会いによって、絶大な影響を受けているということ。すごいね、オーソンウェルズ。

 

最後に

まぁ、なんだ、歴史だよね。思想とか技術とかが受け継がれていく。昔があるから今がある。だから、昔の映画ってつまらない、なんて思わずに色々を観ることで映画でなくても、音楽でも小説でもなんでもそうだけど、昔のことを知ることでより一層現在の作品がどんな作品かを知ることができる。

あ、でも1つ注意。

日本語字幕が雑。

までも特に白黒映画アレルギーの方々、

観るべし

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