インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 / Inside Llewyn Davis

映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』予告編

静かに、ゆったりと、切なくも、暖かい、1961年のフォークシーンの物語。

音楽は素晴らしいし、描かれる人間模様も素晴らしい。出会う人々に出会う出来事。主人公のルーウィンデイヴィスが何も考えずに流されて生きているように見えて、実は色々と考えて葛藤しつつ生きている。色々と巻き起こる中で、それがトラブル続きだったとしても、人生は進むというね。

何かを変えようとしても結局変えることができない見込みのなさというか、報われない感じというか、それが薄々分かっているのにトライし続けるのはカッコいいし、周りからも手を差し伸べてもらえるところもまた良い。そういう雰囲気が好きなら、本作もかなり好きになれると思う。

豆知識中心で参ります。

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概要

基本情報

2013年 アメリカ

監督:
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン

キャスト:
オスカー・アイザック(Oscar Isaac)/ ルーウィン・デイヴィス
キャリー・マリガン(Carey Mulligan)/ ジーン・バーキー
ジョン・グッドマン(John Goodman)/ ローランド・ターナー
ギャレット・ヘドランド(Garrett Hedlund)/ ジョニー・ファイヴ
ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)/ ジム・バーキー
F・マーリー・エイブラハム(F. Murray Abraham)/ バド・グロスマン
スターク・サンズ(Stark Sands)/ トロイ・ネルソン
ジニーン・セラルズ(Jeanine Serralles)/ ジョイ
アダム・ドライバー(Adam Driver)/ アル・コーディ
イーサン・フィリップス(Ethan Phillips)/ ミッチ・ゴーフェイン
アレックス・カルボウスキー(Alex Karpovsky)/ マーティ・グリーン
マックス・カセラ(Max Casella)/ パッピ・コルシカート
クリス・エルドリッジ(Chris Eldridge)/ マイク・ティムリン

解説

第66回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したジョエル、イーサン・コーエン監督によるドラマ。フォークソングで有名な1960年代のニューヨークはグリニッジビレッジを舞台に、音楽活動に奔走しながらも苦闘するシンガー・ソングライターが過ごす1週間を見つめる。『ボーン・レガシー』などのオスカー・アイザック、『17歳の肖像』などのキャリー・マリガンなど、実力派俳優が結集する。コーエン兄弟ならではのユーモラスな語り口に加え、詳細に再現された1960年代フォークシーンの描写も見もの。

あらすじ

1960年代のニューヨーク、冬。若い世代のアートやカルチャーが花開いていたエリア、グリニッジビレッジのライブハウスでフォークソングを歌い続けるシンガー・ソングライターのルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)。熱心に音楽に取り組む彼だったが、なかなかレコードは売れない。それゆえに音楽で食べていくのを諦めようとする彼だが、何かと友人たちに手を差し伸べられ……。

受賞歴

Nominated for 2 Oscars. Another 47 wins & 169 nominations.

 

続ける、続けない、続けられる、続けられない

音楽、映画、絵画、写真、そういう芸術関係はもちろん、自分が心から好きなことを生業にして生活していきたいと思ったことがある人は相当数いると思うけど、成功する人は限られている。

才能、努力、タイミング、コネクション、時代性。成功するか失敗するかは色々と要因があるとは思うけど、引き際をいつにするか、本当に辞めてしまうのかは、やりたいという気持ちとの葛藤が必要。そして有名になれたとしても、自分が本当にやりたかった音楽とか映像で認められるかは別問題。

どこまで妥協できるか、どこで夢を諦めるか。こう言うとネガティブな考えになってしまうけど、実際現実とは向き合わないといけない時がある。

その辺の描き方がね、本作の良いところ。哀愁とか切なさテイストが好きな人には良いと思う。まさに僕。そんな映画全体の雰囲気が先行してなのか、元々の絵作りのおかげなのか、カラー映像なのに白黒のような印象を受ける。なかなかそんな体験は珍しい。

 

モデル的な話

本作はデイヴ・ヴァン・ロンク(Dave Van Ronk)の自伝、The Mayor of MacDougal Street (2005)からコーエン兄弟がヒントを得て作られた。本人は2002年に亡くなっているけど、友人のイライジャ・ワルド(Elijah Wald)が書き上げている。

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あくまでもインスピレーションを受けたものとしてだから、伝記映画と言うわけでもなくて、主人公のルーウィンデイヴィスは本作用の架空のキャラ。とは言いつつも、その他の登場人物なんかも含め結構実在の人物をモチーフにしている部分も多数ある模様。ということでざっと紹介。

ルーウィン・デイヴィス

デイヴ・ヴァン・ロンク。1960年代のグリニッジヴィレッジとかフォークミュージックリバイバルの時代で重要な立ち位置にいた人。

本作のラストではルーウィンデイヴィスはボブディランと接触はしていないけど、デイヴ・ヴァン・ロンク本人の方はボブディランを始めフォークミュージック界で後に有名になるような人たちに音楽を教えたり一緒に活動したりしている。日本繋がりで言えば、友部正人さんなんかにもギターを教えていたり。

タイトルとなっている「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」は彼が出している1964年のアルバム、「Inside Dave Van Ronk」から取られている。

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劇中でも一瞬登場する、ルーウィンデイヴィス版アルバムのカバー写真。

ジムとジーン

ジムをジャスティンティンバーレイクが、ジーンをキャリーマリガンが演じていたけど、Jim and Jean は Jim Glover と Jean Ray の本当にいたフォークデュオ。彼らも結婚している(いた)。

ジムは、オハイオ州立大学で、フィル・オックス(Phil Ochs)に出会い、彼にフォークミュージックを教えたと。少しだけ2人でデュオも組んでいたらしい。一方、ジーンの方は、ニールヤングの Cinnamon Girl という歌のインスピレーションとなったと言われている。

Neil Young – Cinnamon Girl

バド・グロスマン

F・マーリー・エイブラハム演じるバド・グロスマンは、アルバート・グロスマン(Albert Grossman)をベースにしている。彼は劇中でも出てきたシカゴのゲイト・オブ・ホーン(Gate of Horn)のプロデューサーであり、フォーク界、ロック界の有名人たちをマネジメントしている。ボブディラン、ジャニスジョプリン、ピーター・ポール&マリーとかその辺。

トロイ・ネルソン

トロイネルソンのキャラは、トム・パクストン(Tom Paxton)。彼の歌、The Last Thing On My Mind は劇中でも使われている。

Tom Paxton – The Last Thing On My Mind (1966)

4人組

アイリッシュの4人組はThe Clancy Brothersという世界的に60年代に名声を得たグループ。

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ジョニー・ファイヴ

ローランドターナーの従者、ジョニーファイヴは演技をやっていて、3週間だけ “The Brig” というやつで演じたことがあると言ったいた。The Brig は、本当にあった劇で、The Living Theatre で1963年から始まり、オビー賞で作品賞とかを受賞。1964年にはJonas Mekas監督によって映画化されたりもしている。この映画は1983年のドキュメンタリー映画 Signals Through The Flames では引用されている。

 

ルーウィンデイヴィス猫説

気づくといる、というポジションを獲得した猫。コーエン兄弟曰く、本作にはプロットというプロットがないからどうしようかなーって思って、猫を投入したとのこと。ちなみに上記でも触れた、デイヴ・ヴァン・ロンクのアルバムの写真には猫が写っていたりもするんだけど、猫投入は偶然らしい。

結構な時間を猫と共にしたルーウィンデイヴィスだけど、演じたオスカーアイザックは昔猫に噛まれてから超猫嫌いになったらしい。そしてコーエン兄弟も、本作で猫の扱いが難しいから最終的に猫嫌いになるという。

最初は明かされていなかった猫の名前。それを追い求めるわけではないけど、猫の名前がユリシーズだということと、名前が発覚するまでルーウィンが言っていた「Gorfein’s cat」の発音には意味がある。っていう解説的なものは他のサイトでもたくさん書かれているので気になる方はそちらを参照ください。オデュッセウスとか絡めて検索すれば一発。

ルーウィンデイヴィス自体が猫なんじゃないかという考察もちらほらとある中で、セリフという視点での裏付けとして、

・冒頭のエレベータの人との会話

ルーウィンデイヴィス「猫預かってもらえない?」
エレベータの人「私が?」
ルーウィンデイヴィス「Yeah, I, it’s Gorfein’s cat.」

・そのすぐ後のゴーファインさんに伝言を残す

ルーウィンデイヴィス「don’t worry , Llewyn has the cat.」
電話を取った人「Llewyn is…the cat.」
ルーウィンデイヴィス「Llewyn has cat. I’m Llewyn.」

・ローランドターナーとの会話でも

ルーウィンデイヴィス「Ah, I, it’s not my cat」

こんな感じで、猫関連の話題の前に「I」と言いかけている、ってのを持ち出している。その場で間違えたわけではなく、実際に脚本にはそう書かれている。

とにかく、なんとなく投入したというコーエン兄弟だけど、その意味合いはかなりなウェイトを占めている。猫目線でもう一回見直すのも良いかもしれない。やらないけど。

 

ということで

人生の岐路に立っているなら考え方としてこんな映画もよろしいかと。

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同じくオデュッセイアを原案にしているコーエン兄弟のオー・ブラザー!とかも良いかもしれない。

内容とか終わりとかは違うけど、全体の静かなゆったりとした雰囲気はネブラスカ

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なんかもおすすめです。

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