天才マックスの世界 / Rushmore

 

Rushmore – Trailer – (1998) – HQ
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概要

基本情報

1998年 アメリカ

監督:ウェス・アンダーソン

キャスト:
ジェイソン・シュワルツマン / マックス・フィッシャー
ビル・マーレイ / ハーマン・ブルーム
オリヴィア・ウィリアムズ / ローズマリー・クロス
シーモア・カッセル / バート・フィッシャー
ブライアン・コックス / ネルソン・グッケンハイム校長
メイソン・ギャンブル / ダーク・キャロウェイ
サラ・タナカ / マーガレット・ヤン
ステファン・マッコール / マグナス・ブッチャン
コニー・ニールセン / ミセス・キャロウェイ
ルーク・ウィルソン / ピーター・フリン
アンドリュー・ウィルソン / ベック
ロニー・マコーリー / ロニー・ブルーム
キース・マコーリー / ドニー・ブルーム
ヘイ・ジョーン・リー / アレックス
アル・フィールダー / アーニー
コリン・プラット / セルピコ
ジョージ・ファリッシュ / オライリー
エラ・プライヤー / ミセス・ブルーム
パトリシア・ウィンクラー / ホイットニー
マニング・モット / ホルステッド
アリ・クティリ / ベンジャミン
エリック・アンダーソン / 建築家
クマール・パナーラ / リトル・ジーンズ
セイヤー・マクラナハン / ジョージ

解説

 ラッシュモア校に通う少年マックスは、人並み外れた才能を持ちながらも落第を繰り返す落ちこぼれ。だがそんな彼が学園の美人教師に恋に落ちたことから奇想天外なドラマが始まって行く…。巨匠コッポラの甥っ子ジェイソン・シュワルツマンの存在感、一世一代の名演を見せるビル・マーレイ、登場人物の心象風景を音楽に託した斬新な演出、と見所満点の刺激的な一作だ。劇場未公開が惜しまれる、埋もれた傑作。是非一見をお勧めしたい。

 

ウェスアンダーソンのはじまり

ウェス・アンダーソンの長編映画2作目。2作目と言いつつも中身は1作目のようなもの。ウェスアンダーソンの溜まった思いをここにぶつけている。って町山さんが言ってた。

ウェスアンダーソン監督の独特のタッチはここから始まっている。オフビート感、シンメトリーな撮り方、歳の離れた人物の関係性。もうね、ウェスアンダーソン好きはこれを観ないと始まらない。

全然関係ないけど、オフビート感好きな人には 「バス男」(ナポレオンダイナマイト)がおすすめ。

本作、自分が観るのは2回目。1回目は正直、「ほぉーん、まぁ、まぁ、」くらいの感想だった。でもウェスアンダーソン監督の他の作品を色々と観てもう1回観直したら、また違った。本当に根底にあるものが詰まってる感じ。

ってことで。以下ネタバレありますご注意を。ネタバレっつっても町山さんの解説みたらもうそれだけで良い。ので、それのほぼ焼き直しをしつつ感想を述べるという無駄な作業をしてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトル

邦題は天才マックスの世界だけど、原題は、「Rushmore」。

ラシュモア山国立記念公園って、サウスダコタ州にあるアメリカ大統領 (ジョージワシントン、トーマスジェファーソン、セオドアルーズベルト、エイブラハムリンカーン)の顔が掘られてるやつ。これね。

Mountrushmore.jpg

これなんだけど、ウェスアンダーソンによると、ザ・アメリカ的な映画 にしたかったんだって。で、そのrushmoreの名前を借りて、映画の舞台になる学校の名前が「ラシュモア学園」

 

音楽と青春

The Americanな感じを目指してはいるんだけど、絵面的なものとか音楽的なものとかは「イギリス感」がすごく出ている。

ウェスアンダーソンって音楽の使い方がうまいって言われてて、1960年代、70年代の大流行した音楽ではなくて、ちょっとニッチな外した音楽を使う。その曲の歌詞とかをキャラクターの気持ちと映像にうまくマッチさせる。その辺からしてなんだかオシャレだよね、ウェスアンダーソン。

ビートルズとかストーンズとかクリエイションとかが一気にアメリカに進出した時代があって、それを「ブリティッシュインベージョン / British Invasion(イギリスの侵略)」って言う。ビートルズにストーンズ、キンクス、ザ・フー、ハーマンズ・ハーミッツ、デイブ・クラーク・ファイブ、アニマルズ、とか。

その頃の音楽をよく使ってるみたいなんだけど、そんな曲がなんで、このアメリカ映画にマッチするのか。

そもそもアメリカとイギリスの「青春」って違って、イギリスの中高生ってブレザーを着ている。対してアメリカでブレザー着てる人たちっていうのは本当に家柄の良い人たちしかいない。

ビートルズとかストーンズってブレザー着てたよね。

ビートルズ

thebeatles.jpg

ストーンズ

ROLLING-STONES.jpg

ラシュモア学園は家柄の良い人たちの私立の学校だからブレザーを着ている。この辺の感覚って確かに日本ではわかんない。

 

舞台とウェスアンダーソンとオーウェンウィルソン

このラシュモア学園のモデルというか撮影場所になっているのが、実際にウェスアンダーソンが通ってた中高一貫の学校。一方、途中でマックスがラシュモア学園を退学になって、通うことになる公立高校、に通ってたのがオーウェンウィルソン。本作の共同脚本家。

ウェスアンダーソンの映画に大体出てるよね。ちなみにオーウェンウィルソンは不良学校を退学になっている。。。ウェスアンダーソンとオーウェンウィルソンは大学で出会うわけだけど、そんな2人の青春時代を元に脚本書いてこの映画ができたわけだ。

つまり自分自身を表現している。今のウェスアンダーソンはこんなんだけど。

Wes-Anderson-01.jpg

昔のウェスアンダーソンはこんなん。

wess.jpg

そしてオーウェンウィルソンと2人。

WesAnderson_2.jpg

 

ストーリー

ストーリーというかテーマというかなんというか。ウェスアンダーソン自身を映画として表現しているわけだけども、マックスは「なんか居場所がないなー」って感じている。そのなんとも切ない感情はどっからきてるのかっていうのが、徐々に明らかになっていく。

まず、マックスは母親を亡くしていて、立ち直られていない。何度もお墓に行ったり形見のタイプライターを使っていたり。でも最終的には自分の書いた演劇で、「母に捧げる」ってかっこいいこと言って母親の死を乗り越えていく。

マックスが恋をしたローズマリークロス先生も、結婚後に若くして旦那を亡くして、そこに囚われていた。でも最終的にはマックスとかハーマンとの出会いを通じて、マックスの演劇を通じて乗り越えていく。

ハーマンはハーマンで、お金はあるけど人生つまらなそうにしてたハーマンだけど、マックスとローズマリークロス先生と出会って、今まで形だけの家族とはおさらばして若返っていく。

マックスとハーマンは先生を巡って戦いをしたけども、この戦いを通して、

ハーマンは若返り、マックスは大人になった。

ウェスアンダーソン自身も両親が離婚して居場所がなかった。そんな中で演劇を書いて、生き方を見つけていく。

芝居を通じて周りの関係を紡いでいく。

そんなところ。

 

オマージュ

1960年代、1970年代の映画へのオマージュがすごくある。

大人は判ってくれない(1959)

冒頭の数学の授業のシーン、連行されるシーンはこれ。ちなみに、スピルバーグはトリュフォー大好きらしいね。

卒業(1967)

ビルマーレイがプールの中で沈んでるシーンはこれ。

ダスティンホフマンとジェイソンシュワルツマンの顔が似てるらしい。

ダスティンホフマン

dhoffman-00.png

ジェイソンシュワルツマン

jasonschwartzman1.jpg

いや。。あの。これでも極力似てそうなやつを探そうと頑張ったんです。

卒業(記事へ)

セルピコ(1973)

マックスが舞台化してる。

ハロルドとモード 少年は虹を渡る(1971)

世の中がつまらない天才少年が自殺を繰り返す話。基本的にはハーマンの人生に飽きちゃってる感じのキャラクターを表現。

そして最初のマックスの課外活動紹介シーンはハロルドとモードの自殺紹介シーン。校長室に呼ばれた時のマックスの座り方がハロルドとモードの座り方を同じ。

ちなみにバッド・コートはライフアクアティックにも出ている。

早春(1970)

少年が年上のお姉さんに恋をして追っかけ回す物語。クロス先生の「私とセックスしたいの?」ってセリフはそのまんま早春のセリフでもあるとのこと。

キャットスティーヴンス

ハロルドとモード、早春はともにキャットスティーヴンスの曲を使っている。天才マックスでもキャットスティーヴンスの曲をいくつか使っている。だから基本的には、ハロルドとモード、早春が主な元ネタ。

ジョンレノン「OH YOKO」

ブリティッシュインベージョンとはちょっと違うジョンレノンの曲がかかるところがある。マックスがどん底から立ち直る時にかかる曲がこの「OH YOKO」。

マックスがどん底から立ち直る時きっかけになったのがマーガレット・ヤン。役は中国系だけど演じてるのは「サラ・タナカ」っていう日系の女の子。ジョンレノンが母親を亡くして失意に満ちていた時に立ち直るきっかけを与えたのがオノヨーコ。

チャーリーブラウン

ウェスアンダーソンは、横から役者を撮る構図でカメラが追っかけていく撮り方を他の映画でもやってるけど、これがチャーリーブラウンの見せ方。

チャーリーブラウンと同じ帽子をマックスがかぶる。

チャーリーブラウンの父親が床屋さん(定かではないけど、著者の父が床屋さんだからそうじゃないかって言われてる。)。マックスのお父さんも床屋さん。

メルビンとハワード(1980)

大富豪と労働者階級の2人が親子のような関係を結んだ話。

サムシングワイルド(1986)

音楽の使い方とポップな色使い。

 

全体的に

みたいな感じでいろんなものを取り入れてうまくまとめている。全体的にはサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」的な思想。ウェスアンダーソンの次作ロイヤル・テネンバウムズはサリンジャーのフラニーとズーイを元にしている。

 

ということで

とりあえず、ウェスアンダーソンを語るなら本作をまず観ようか。

大体ウェスアンダーソン作品は良いと思うけど

ライフアクアティックとか

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