エレファント / Elephant

 

Elephant (Trailer)
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概要

基本情報

2003年 アメリカ
監督:ガス・ヴァン・サント(Gus van Sant)
キャスト: ジョン・ロビンソン(John Robinson)/ ジョン
アレックス・フロスト(Alex Frost)/ アレックス
エリック・デューレン(Eric Deulen)/ エリック
ティモシー・ボトムス(Timothy Bottoms)/ ジョンの父親
マット・マロイ(Matt Malloy)/ 校長先生
イライアス・マッコネル(マクコーネル)(Elias McConnel)/ イーライ
ネイサン・タイソン(Nathan Tyson)/ ネイサン
キャリー・フィンクリー(Carrie Finklea)/ キャリー
クリスティン・ヒックス(Kristen Hicks)/ ミシェル
ブリタニー・マウンテン(Brittany Mountain)/ ブリタニー
ジョーダン・テイラー(Jordan Taylor)/ ジョーダン
ニコル・ジョージ(Nicole George)/ ニコル
ベニー・ディクソン(Bennie Dixon)/ ベニー
アリシア・マイルズ(Alicia Miles)/ アケイディア

解説

全米を震撼させたコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件に衝撃を受けた、『誘う女』のガス・ヴァン・サント監督入魂の問題作。彼は世界に向けて「なぜ?」と問い続ける。素人の高校生の実体験から真実の言葉を引き出した本作は、2003年のカンヌ国際映画祭で史上初のパルム・ドールと監督賞のW受賞と いう快挙を果たした。“あの事件”の脆くて傷つきやすい少年達の日常がリアルで切ない。静かだが強い衝撃を残す最高傑作だ。

あらすじ

オレゴン州ポートランド郊外の高校。ジョン(ジョン・ロビンソン)はアル中の父親のせいで遅刻し、イーライ(イライアス・マッコネル)はカメラ片手に公園を散歩。いつもと同じ一日のはずだったが……。

批評と受賞歴

カンヌ国際映画祭:パルムドール、監督賞

 

キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている

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キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている がキャッチコピー。

現実感と緊張感が面白い。上記の通りカンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞を史上初めて同時受賞した作品。とは言いつつも、実際の評価は真っ二つに割れたであろう作品。

というのも、基本的にはだらだらしているから飽きる人がいそう。自分も完全に理解できたという自負は全くもってなく、解説なんてもっての他で歯切れの悪いレビューしかできそうにない。

そしてトドメは監督自身が解釈を観客に丸投げしていること。問題を解決させずに映画を終わらせることで、観客にじっくり考えて欲しいと。丸投げって言うと責任放棄っぽく聞こえちゃうけど。

個人的には、感じ方なんて人それぞれだし、それが正解だと思ってもいる。押し付けがましく「こういう映画だぞ」ってあからさまなものよりも好き。だからね、

何を言っても書いても良いんだと開き直ることにした。

ということで。今回はほぼほぼネタバレなしの予習の立ち位置で参ります。

 

監督:ガスヴァンサント

よく知られているのはグッドウィルハンティングだろう。そう。私がこのブログを始めるきっかけを与えてくれた作品である。

事の顛末は、
グッドウィルハンティング観る

観たことを忘れる

グッドウィルハンティング観はじめる
観終わってから、観たことあることに気がつく

観たことを忘れる

グッドウィルハンティング観はじめる
半分くらい観て観たことあることに気がつく

監督、すみませんでした。

 

撮り方

日常をだらだらと撮る

徹底的に日常をひたすら映し出すことで、観客が誰に感情移入しようとしまいと関係なく、ただただこんな人がこんな日常を送っています、を描いている。

監督が意図的に入れているという「何の意味もないシーン」。普通の映画ならカットするようなシーンをあえて入れることで、現実感を全面に押し出している。

歩くシーンを後ろから長回し

登場人物が歩く姿を後ろから追っかけていくシーンが多数。監督曰く、観客に充分考える時間を与えるために、冗長とも言えるシーンばかりを繋いでいるらしい。こんな感じだから、何も起こらない退屈な映画だって思う人もいるんだろうなぁ、と思う。

ただ、コロンバイン高校の事件を題材にしていることを前提にして観ていると、

ものすごい緊張感がある。

事件が始まるまでも、始まってからも。そしてBGMも良い効果。不気味な感じ。

 

基本はアドリブ

衝撃なのは、基本的に本作品、セリフなどは 出演者のアドリブだということ。しかもメインキャストの多くはほぼ素人を採用(オーディションはもちろんしている)。脚本のアウトライン、出てくるキーワードなどを決めただけで、実際に彼らが話す内容、行動はキャストに委ねていたらしい。

というのも、「リアルな感じを出す」ことに重きを置いたから。だから、会話の内容とかもぶっちゃけ、どうでもいいんです。

うんこ漏らしたとか、
マック食い行こうぜーとか、
あームラムラするとか、
センテンススプリングとか、
昨今の国際情勢下における日本の立ち位置と今後の方針についてとか。

何を話してたかなんてどうでもよくて、この作品では会話なんてものはコミュニケーションの方法であって、観客に説明するのが主な目的にはしていない。ひたすらリアリティを描いていればそれで良いと。

 

校内グループとその交わり

気の合う人もいれば、合わない人もいる。学校では平等だって言われつつも、実態は力を持つ人と持たない人が出てくる。そうすると、類は友を呼ぶ理論でグループになる。

本当のコロンバイン高校の事件も、事件を起こした子はイジメられていて、校内で目立つ子たちを優先的に手をかけていったとのこと。あんまり、この作品ではそこまでエグいイジメの描写はないけどね。

群像劇とも言える本作品でも、メインキャストたちにはそれぞれの立ち位置がある。誰とでも愛想よく振る舞える人、社交的な人、内気で輪に入れない人、リア充な人、イジメられている人、他人の噂話をする人、ただただ自分の好きなことをする人、ゲイの人、同性・異性愛会の人。

この人たちのそれぞれ視点で同じシーンを描いたりする。

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「桐島、部活やめるってよ」との共通点

「桐島、部活やめるってよ」(記事へ) の時にも書いたけど、ライムスター宇多丸さんが吉田大八監督に直接聞いてた。「エレファントを参考にしてないか?」って。そしたら吉田大八監督も言ってた。「エレファントは観直しましたねぇ」って。

校内ヒエラルキー然り、演者ごとの視点とか、シーンの切り替えとか、結構似ている。

 

タイトル「elephant」の意味

アラン・クラーク(Alan Clarke)監督のショートフィルム「Elephant」

1989年にアランクラーク監督、ダニーボイル製作の同名「Elephant」という映画がある。イギリスBBCのために製作した北アイルランド紛争を描いた番組。

コロンバイン高校の事件を題材にした映画を撮りたいんだって言ったら、製作側から「エレファントみたいな映画だったら良いよ」って言われたから、そのまま使ったらしい。

“Elephant in the room”

慣用句で、“Elephant in the room” というものがある。

「誰の目にも明らかな大きい問題があるにもかかわらず、それについて誰も語ろうとせずに、避けて日常を過ごす」

という意味。

群盲象を評す

ことわざで、「群盲象を評す」というものがある。複数の盲人が一頭の象を触ってみて、象とは如何なる動物かを語ってみせると、同じ象でも、足を触った人は「木である」と言い、鼻を触れた人は「蛇である」と言ったという。ここから、

「論ずる対象が同じであっても、その印象も評価も人それぞれに異なる、という意味であり、わずか一部分を取り上げたところで、その事象の全てがわかるわけではないという意味。」

この、慣用句とかことわざの意味もタイトルに含ませているらしいです。真相は知らないけど。

 

どちらにしようかな。

事件が起こって銃を向けて放つセリフが本当に怖い。

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どちらにしようかな、って日本でも歌?があるけど、それの英語版。

“Eany, meeny, miny, moe, Catch a tiger by the toe. If he hollers, let him go, Eany, meeny, miny, moe.”

こえぇぇぇって思いつつこれを思い出す

Daft Punk – Technologic

Daft Punk – Technologic

キャスト

キャスト陣を少しだけ。

ジョン・ロビンソン

ジョンはエレファントの後もちょこちょこ出ている。「ロード・オブ・ドッグタウン(Lords of Dogtown)」(2005) ではエミール・ハーシュとかヒース・レジャーと共演。スケーターの話ね。

アレックス・フロスト

アレックスもエレファントの後、順調にちょこちょこと顔を出している。

イライアス・マッコネル

イーライはエレファントの後はガスヴァンサント監督の「パリ、ジュテーム(Paris, je t’aime)」(2006) とか 「ミルク(Milk)」(2008) に出演。

 

ということで

エレファントでした。

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