何これ。
めちゃくちゃ面白いんだけど。
カンヌで大絶賛された本作。外面はカニバリズムなのでジャンルはホラー。と、なってはいるけど、完全に僕の中では青春映画。
上映時に失神したり、吐いたりした人がいて、ロスのとある劇場ではゲロ袋を渡すという対処もされたという有様。
確かにグロ描写・暴力シーンもあったりするけど、個人的にはそこまでどぎついとは思わなかった。そういうのが苦手な人には辛いかもしれない。逆にそれが平気であれば、一回観てもらいたい。
フランス映画っぽい繊細な映像と、それをぶっ壊してくるカニバリズムの衝撃シーン。語られるのは愛の物語。(監督の意向は若干違うっぽいけど)
なんとも不思議な感覚だけど、それを楽しんでほしい。これは、本当に、すごい映画に出会ったと僕は思った。
てな感じで若干のネタバレを入れつつ参ります。
概要
基本情報
2016年 フランス、ベルギー
監督:ジュリア・デュクルノー(Julia Ducournau)
キャスト:
ギャランス・マリリエ(Garance Marillier)/ ジュスティーヌ
エラ・ルンプフ(Ella Rumpf)/ アレックス
ラバ・ナイト・ウーフェラ(Rabah Naït Oufella)/ アドリアン
ローラン・リュカ(Laurent Lucas)/ 父
ジョアンナ・プレス(Joana Preiss)/ 母
解説
獣医学校に入学した少女を主人公にした衝撃のホラー。ベジタリアンの少女が動物を口にしたことをきっかけに変貌していく様子と、彼女の秘密を映し出す。メガホンを取ったのは、本作が長編デビューとなるジュリア・デュクルノー。主演は、デュクルノー監督の短編映画にも出演したギャランス・マリリエ。
あらすじ
厳格なベジタリアンの家に育ったジュスティーヌ(ギャランス・マリリエ)は、姉も在学する獣医学校に入った後、新入生の通過儀礼としてうさぎの生の腎臓を食べることを強要され、口にしてしまう。その日を境に、ジュスティーヌの隠れた本性が明らかになり……。
製作陣
本作の監督を務めたジュリア・デュクルノー。なんともお美しいフランス人女性。
2011年のカンヌに出したショートフィルム「Junior」でPetit Rail d’Orを取っている。と言ってはみたものの、正直僕はパルムドール等のコンペティション系の賞以外はよくわかっていない。
それは良いとして、この作品には本作の主演の女の子、ギャランスマリリエも出演。ショートフィルム「Junior」で、監督はこの子に魅了されて、本作の役をやらせたかった模様。
確かに本作でも物語が進むに連れてどんどん目が変わっていく姿はヤバかった。あんなんされたら引き込まれないわけがない。結構ショートムービーとか、テレビ映画に出ているっぽい。
お姉ちゃん役のエラルンプフはフランス生まれ、スイス育ちの役者さん。この子はあれだね。
こういう感じも可愛い。
2015年のWarで、Swiss Film Awardの助演女優賞ノミネート。2017年のTiger Girlという映画でも評価された模様。
タイトル
原題はgrave。フランス語での意味は、「重大な」とか、「深刻な」とか。英語で言えば、seriousとかその辺。
これが英題では、”raw” になっている。パッと思いつくのは「生」的なものだよね。むき出し感というか。
個人的にはなかなか良いタイトルだと思う。野生感もありつつ、カニバリズム的な雰囲気もありつつ、自分の知らなかった部分がむき出しになっていく感。
ふむ。
それにつられてかどうかは知らないけど、邦題は「RAW〜少女のめざめ〜」。英題は単語一文字のタイトルは割とあるけど、邦題はこういう副題みたいのついてくるからね。
で、この「少女の目覚め」。あらすじを読んでまず思うのは、カニバリズムに目覚める、ということ。
ではあるけど、メタファー的な目線から言えば、「少女の(性の)目覚め」と。
処女性を失って、ハマっていく感じね。
多分そういう内容が含まれるから、ある種の恋愛映画にも見えてくるという不思議。
語られるもの
ジャンルはホラーとなっているけど、監督自身は、当初はホラーにするつもりは全然なくて、「女性が初潮を迎えた時、自分の内側から何か別物になってしまうような感覚、それを表現しようと思ったらこうなってた。」みたいなことを言っていたらしい。
ほー、なるほどねー、と思っていた一方で、「食べる」という行為はとてつもない愛情表現だと町山さんが言っているのを聞いて、何となく僕は、バナナマン日村が「好きな人とか好きな人の物を食べちゃいたい」みたいなことを言っているのを思い出していた。
本当にやったら変態チックだけど、言わんとしていることは分かる。目に入れても痛くない的な表現をしているだけで。
ジュスティーヌは衝動を抑えきれずに、お姉ちゃんの指を食べてしまうけど、挿入される音も相まって、
まぁ笑うよね。
あそこで、多分笑う人とリバースする人とで分かれるのかな。恐怖と笑いの本質は同じだと楳図かずお先生も言っていたけど、そういうの面白いよね。
ラストシーンについては「やっぱりか」とも思ってしまったけど、あれだけで、性欲を凌ぐ本当の愛を表現できるのはすごい。
それと、目覚めのキッカケになるウサギを食べてジンマシンが出るところは、「少女」から「女性」へと脱皮する表現だと。
あれからどんどん欲求が抑えられなくなっていくわけだけど、別にそれは自然現象だと、そんなことも監督は言っている。
その辺からハイヒール履いたり良い感じの服を着たりしてたしね。性欲に目覚め、そして私は肉を喰らって生きていくんだと。
最終的に超えてはいけないラインを越えてしまうけど、なんかもう「うわー」って。ものすごくなんて表現したらいいか分からない感覚。「うわー」って。
それが良い。
ダンスシーン
なんだか僕は妙に見入ってしまったジュスティーヌのダンスシーン。
Ortiesという双子姉妹のグループの”Plus Putes que toutes les Putes” という曲。
動画見れば予想できると思うけど、なかなかな内容。そして映画の方も、このMVを意識してるよね。
とりあえず、タイトル”Plus Putes que toutes les Putes” をgoogle翻訳に投げてみたら、こんな感じ。
すべての売春婦よりも売春婦
歌詞のざっくりの翻訳はここで見れる。
ということで
これは面白かった。
同じようなおすすめをお伝えしたいところだけど、基本的に僕は(怖いから)ホラー映画は見ないので分からないという。
とある人は、2018年にハリウッドリメイクされた1977年のイタリアのホラー映画、サスペリア(Suspiria)を引き合いに出していたり、
2000年のGinger Snapsを引き合いに出していたりした。
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