スカーフェイス / Scarface

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概要

基本情報

1983年 アメリカ
監督:ブライアン・デ・パルマ(Brian De Palma)
脚本:オリバー・ストーン(Oliver Stone)
製作:マーティン・ブレグマン(Martin Bregman)
キャスト:
アル・パチーノ(Al Pacino)/ アントニオ・”トニー”・モンタナ
スティーヴン・バウアー(Steven Bauer)/ マニー・リベラ
ミシェル・ファイファー(Michelle Pfeiffer)/ エルヴィラ・ハンコック
メアリー・エリザベス・マストラントニオ(Mary Elizabeth)/ ジーナ・モンタナ
ポール・シェナー(Paul Shenar)/ アレハンドロ・ソーサ
ロバート・ロッジア(Robert Loggia)/ フランク・ロペス
ミリアム・コロン(Miriam Colon)/ トニーの母親
F・マーリー・エイブラハム(F. Murray Abraham)/ オマー・スアレス
ハリス・ユーリン(Harris Yulin)/ メル・バーンスタイン

解説・あらすじ

ハワード・ホークスの「暗黒街の顔役」を現代風にリメイク。キューバからアメリカに渡った青年が、死に物狂いで暗黒街にのしあがっていく姿を描く。3時間近い長尺を徹底したバイオレンスとスラングの洪水で埋め尽くし、A・パチーノの力演共々、比類なき迫力を持って観る者にせまる。

批評と受賞歴

7 nominations

ノミネート

ゴールデングローブ賞:主演男優賞(アル・パチーノ)、助演男優賞(スティーヴン・バウアー)、作曲賞(ジョルジオ・モロダー)

批評

  • Rotten Tomatoes:82 % 7.4 / 10
  • Roger Ebert:4 / 4
  • Metascore:65
  • IMDb:8.3 / 10

 

一度は観るべきギャング映画

OK。

のし上がり系、成り上がり系の最たるものとして君臨する本作。その内容から多くのラッパーたちにも影響を与え、今もなお崇められている。

なんて言ったら流石に大げさかもしれないけど、地位も名誉もお金も、人種的な社会的立場も何もない若者が、野心に燃えて一つ一つのチャンスをものにしてアメリカンドリームを掴むまで、そしてそこから転落していく様子を描く。

上にいる奴らは全員倒す

そんな映画。そしてアルパチーノの迫真の演技。これは一度は観るべき映画。

公開時はそのバイオレンスさと汚い言葉とドラッグを使っていることで、あまり良い評価は得られなかったけど、徐々に再評価されて、AFIのジャンル別ランキング、ギャング映画部門のトップ10にも選ばれてたり、マフィア映画の帝王マーティンスコセッシからも賞賛されていたり、多方面に影響を与えていたりする。

影響を与えたものについては影響力を参照。ランキング系についてはランキングを参照。

予備知識と豆知識をメインに、最後の方で少しネタバレしますのでご注意ください。

 

 

元ネタと舞台

元々は、アルパチーノが1932年の映画を見て、これはリメイクの価値があるとプロデューサーに話し、そこからプロジェクトが始まったと言われている。

元ネタ「暗黒街の顔役」

アルパチーノがリメイクしたいと思った作品。1932年公開の映画の原題は同名、”Scarface”。邦題は「暗黒街の顔役」。ハワード・ヒューズ製作、ハワード・ホークス監督、ベン・ヘクト脚本。アルカポネをモデルにしているので、”スカーフェイス” というニックネームが題名に使われている。ただ、全然スカーフェイスとは呼ばれたりせず、一度だけ、スペイン語で ”Cara de cicatriz” という単語が出てくるだけ(僕は未確認)。元々アルカポネ自身も、そのニックネームは嫌だったらしくて、本人目の前にして呼ぶ人はいなかったようだし、それはそれで良いか。

 

ハワードヒューズがアルカポネをモデルにしたギャング映画を作ろうと思って、ハワードホークスを招き、そのハワードホークスがアルカポネの話に近親相姦やらボルジア家っぽさを入れるアイディアを思いつき、それに賛同したベンヘクトが脚本を書いた、と。

ハワードホークスがベンヘクトに相談したのは、アメリカギャング映画の最古と言われる「暗黒街」(1927)の原案をベンヘクトが作っていたから。ベンヘクトは「暗黒街」で第一回アカデミー原案賞を受賞している。ボルジア家っぽさというのは、ボルジア家のイメージ、好色さ、強欲さ、残忍さ、冷酷さ、等々。

本作の最後に、「捧ぐ」ってなってたその対象は、リメイク元の監督と脚本家に対してだったと。

ちなみにブライアンデパルマ監督は、この後再びアルカポネをモデルにした映画を撮っている。アンタッチャブル。

1980年の要素を追加

本作スカーフェイスでは、リメイク元の「暗黒街の顔役」のストーリーとかキャラクターの大枠は割とそのままに、それに現在(当時)のことを織り交ぜて構成している。その当時の出来事というのが、オープニングシーンで説明されている1980年のキューバのボートピープルの件。

1980年、フィデルカストロはキューバのマリエル港を解放して、出国できることを発表。5ヶ月間くらいで約125,000人の亡命希望者が出国。その中には犯罪歴のある者も含まれていて、受け入れ先のマイアミは一気に危険な街と化した。

本作の製作当初は、シドニー・ルメット(Sidney Lumet)が監督をする予定で、キューバからの移民のアイディアは彼が盛り込んだ。でも、オリバーストーンの脚本に何かを感じなかったらしく、辞退したとのこと。

製作陣は、本当は「暗黒街の顔役」の年代で撮りたかったようだけど、予算の兼ね合いでできなかったという話もあったりする。

 

各紙のランキング

結構いろんなところでランクインしていたりする。

AFI アメリカ映画の名セリフベスト100

2005: AFI’s 100 Years… 100 Movie Quotes

61位:Say ‘hello’ to my little friend!(これがご挨拶だ)

ちなみにこの銃撃戦シーンを撮影してた時に、実はスティーヴンスピルバーグがいて、彼は彼で撮影していたらしい。使われてはいないだろうけど。

AFI 10ジャンルのトップ10

2008: AFI’s 10 Top 10

10位

※暗黒街の顔役は6位にランクイン。

EW カルト映画トップ50

2003: Entertainment Weekly’s Top 50 Cult Movies of All-Time

8位

Empire 史上最高の映画500

Empire’s 500 Greatest Movies of All Time

284位

(おまけ)fuckを行った回数

200回を超えて、50位くらいには入っていそう。

(おまけ)AFI アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100

2003: AFI’s 100 Years… 100 Heroes and Villains

ノミネートはされた?という話がある。暗黒街の顔役の方のトニーはランクインしている。

(おまけ)Roger Ebert

ロジャーイーバートのGreat Moviesにリスト入り。

 

影響力

ヒップホップ界を筆頭に、テレビ、コミックブック、テレビゲーム等々、その影響範囲はなかなか広い。

ラッパー

本作に影響を受けたラッパーは数知れず、ショーン・コムズ、エミネムなんかも好きだと公表していたり、各ラッパーが自身の曲の歌詞中にセリフを引用していたり、サンプリングに使っていたりする。

こちらのサイトでまとめてくれている。

http://www.ifc.com/2013/09/11-rap-songs-that-reference-scarface

 

ピックして少しだけ。

NAS

NASはトニーモンタナと自分を重ね合わせ、「the world is yours」という曲を出している。

 

Jay-Z

ジェイ・Zも、スカーフェイスのセリフを引用した曲、MOMENT OF CLARITYを作っている。
引用元は”All I have in this world is my balls and my word”

同じセリフを引用したYoung Bleedも。

 

Mobb Deep

G.O.D. Pt. III では、オープニングでも使われている音楽をサンプリングしている。

 

Geto Boys

ゲトーボーイズはサンプリングして使っていたり、そのグループのうちの1人は、スカーフェイスと名乗っている。

 

その他の影響

ラッパー以外でも細かいものを含めたら色々と。

グランドセフトオート

グランドセフトオートは本作に影響を受けて作成されたと言われている。「Scarface: The World is Yours」という映画の内容を元にしたゲームも出ていたりはする。

エディ・ゲレロ

あまりプロレスには詳しくないけど、新日とかにも参戦していたeddie guerreroというプロレスラーがいた。その人が、スカーフェイスをモチーフにしたTシャツを作っている。

サダムフセイン

ちょっと本当かどうかはわからない。わからないけど、アダムフセインが所有していた信託ファンドの名前が “Montana Management” という名前だった。彼と息子たちはスカーフェイスが好きだったと言われている。

 

なくなった続編と、さらなるリメイク

キャンセルになった続編

またもやラッパーの登場。今度はキューバン・リンク(Cuban Link)。2001年に、彼が脚本・主演の ”Sons of Tony” という作品を作る計画を立てていた。でも、アンオフィシャルだったから、権利を持つ人たちがその噂を聞きつけて、速攻キャンセルにさせた、とのこと。

リブート

こちらは公式に動いているっぽい。2011年にユニバーサルがニューバージョンを作ろうとしていると発表。「暗黒街の顔役」と「スカーフェイス」の両方の要素があり、帝王になった人のアメリカン・ドリームを掴むまでの話、とのこと。

スカーフェイスのプロデューサー、マーティンブレグマンが引き続き製作。でも監督やら脚本やら主演やらは色々と難航した結果、現在は、2018年8月公開、コーエン兄弟脚本、ディエゴルナ(Diego Luna)主演、で動いている。

 

登りつめて変わるもの、変わらないもの

ストーリーの内容に触れるのでネタバレ気にする方は以下ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

お金も権力もコネも社会的地位も何もないところから始まり、手にした一つ一つのチャンスをきっちりものにしてきたトニー。何も持っていないからこそ、大胆でリスクを負った行動ができる。セリフでも言及されていたけど、本当の彼の武器は、” 気持ち ” とそこから出てくる ” 言葉 ”。これで勝負。

魂で話しているからこそ、想いは相手に伝わり、信用を勝ち取ることができる。信用されるからこそ、大きい仕事の話も舞い込んでくるし、チャンスが広がっていく。

そして目的のためには、上にいる奴らは突き落として這い上がっていく。金と権力を求めたその野望、野心の強さのおかげでついに頂点に立つわけだけど、ここで終わったら映画じゃない。金と権力と女を手にした人間がどうなるか。

トニーの場合は横暴になった。信用できるのは自分だけ。ほぼ一目惚れして元ボスを手にかけてまで手に入れたエルヴィラに対しても、アメリカにやってきた時からずっと一緒に行動を共にしてきたマニーに対しても上から目線で傲慢な態度。

誠実でないと人は離れていく。エルヴィラも、マニーも、そして最愛の妹ジーナも。富と権力に固執した結果、自分のせいで周りの人はいなくなり、全てが崩れ落ちた。

それを象徴するラストシーン。わかりやすく物理的にも上から下へ落ちて血に染まる。

 

最愛の妹ジーナ

ただの過保護なのか近親相姦的な感情を抱いているのか、明らかにされてはいない。インセストだと言う人もいれば、ラストシーンのくだりで、「私を抱きたいんでしょ」的な言葉をジーナから言われた時に、困って何言ってんだよ的な表情を見せたので、度を越した過保護だと言う人もいる。

いずれにせよ、トニーにとってジーナは、無垢で、純粋で、綺麗で、ずっと清らかなもの、という存在。外部の汚いもの(まさにトニーの周りにひしめく暴力とかドラッグ)からは隔離しないといけない。そしてそれを排除するのは自分の役目だと、トニーは思っているのだと。

そうか。ここまで書いて、トニーの話は富と権力のために魂を売ったファウスト的な話なのかもと突如思う。でも、そうした時に、努力をする過程が美しいものとする描写、そして最後の救済をどこに見出すか。んー。これは違いそう。

 

ということで

スカーフェイスでした。

本作が好きなら、ゴッドファーザー、グッドフェローズ、パルプフィクション、

実はキャスティング候補に上がっていたロバートデニーロとオーディションを受けたと言われているシャロンストーンならカジノ

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