概要
基本情報
2014年 ニュージーランド
監督:
ジェマイン・クレメント(Jemaine Clement)
タイカ・ワイティティ(Taika Waititi)
脚本:
ジェマイン・クレメント(Jemaine Clement)
タイカ・ワイティティ(Taika Waititi)
キャスト:
タイカ・ワイティティ(Taika Waititi)/ ヴィアゴ
ジェマイン・クレメント(Jemaine Clement)/ ヴラド
ジョナサン・ブロー(Jonathan Brugh)/ ディーコン
ベン・フランシャム(Ben Fransham)/ ピーター
ジャッキー・ヴァン=ビーク(Jackie Van Beek)/ ジャッキー
コリ・ゴンザレス=マクエル(Cori Gonzalez-Macuer)/ ニック
スチュー・ラザフォード(Stu Rutherford)/ スチュー
リス・ダービー(Rhys Darby)/ アントン
解説
現代の社会で一緒に暮らしているヴァンパイアたちの日常をモキュメンタリータッチでつづるホラーコメディー。それぞれに個性豊かなヴァンパイアたちが織り成す愉快な暮らしぶりや、共同生活の行方を描く。これまでのヴァンパイア映画にはない異色の設定が評判を呼び、トロント国際映画祭など各国の映画祭で観客賞を受賞した。ニュージーランド航空の「壮大すぎる機内安全ビデオ」に携ったタイカ・ワイティティと『メン・イン・ブラック3』出演のジェマイン・クレメントが監督を務め、ヴァンパイアも演じる。
あらすじ
ニュージーランドのウェリントンで共同で暮らしている4人のヴァンパイアは、楽器を演奏したりダンスしたり、時々郊外のパブでハメを外したりと自由気ままな日々を過ごしていた。そんなある日、8,000歳のピーター(ベン・フランシャム)がうっかりかんでしまった大学生のニック(コリ・ゴンザレス=マクエル)も彼らの仲間に。さらに、ニックが人間の親友スチュー(スチュー・ラザフォード)をシェアハウスに連れてきたことから騒動が巻き起こり……。
批評と受賞歴
25 wins and 18 nominations
批評
- Rotten Tomatoes:96 % 7.8 / 10
- Roger Ebert:3.5 / 4
- Metascore:76
- IMDb:7.6 / 10
素晴らしいヴァンパイアコメディ
これは素晴らしいニュージーランドのモキュメンタリー。85分という時間が短いという理由だけで鑑賞開始したわけだけど、ニヤニヤの止まらない85分。これは面白かった。
ある人曰く、トワイライトも、ダークシャドウも楽しめなかった人でも、本作なら楽しめるだろうと。僕はどちらも観ていないから分からない。
批評家、一般の人に関わらず、すごく良い評価もされて、rotten tomatoes では、Top 100 comedies of all timeの68位に躍り出た。今(2017/10/11)見たら73位だったけど。
ヴァンパイアの映画だけど、怖くない完全なるコメディのでご注意を。ぜひハロウィンの時期に。結構ヴァンパイア映画へのパロもあったりする。
てな感じで小ネタ挟みつつネタバレありで参ります。
元々のショートフィルム
本作は、監督・脚本を務めた2人(タイカ・ワイティティとジェマイン・クレメント)が2005年に製作した短編映画を長編にしたもの。
What We Do in the Shadows: Interviews with some Vampires
これかな?インタビューってタイトルについてる通り、30分くらいのうち、話を聞いているのが大半。本作のブルーレイに特典映像としてついているとのこと。キバのおかげで話しづらそう。
これをベースに本作を製作。スチューも出てきます。
製作陣とキャスト
タイカ・ワイティティ
ヴィアゴを演じたタイカワイティティ。クレジットでは、タイカ・コーエン(Taika Cohen)となっている時もある。製作、監督、脚本、俳優と、なんでもこなす人。
後述するジェマイン・クレメントとは大学で出会って、5人組のコメディのグループ “So You’re a Man” で一緒に活動していた。クレメントとはコメディのデュオもやっていて、1999年にニュージーランドのコメディのすごい(らしい)賞 “Billy T Award” を受賞している。
その後は、俳優と監督業に専念し始めて、ショートフィルムの “Two Cars, One Night” で2004年のアカデミー短編映画賞にノミネート。
以降、監督やら俳優業に携わりつつ、2010年の “boy” 、2016年の ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(Hunt for the Wilderpeople)でかなり評価されて、ニュージーランドの過去最高興行収入を上回っている。
本格的なハリウッド進出として、今年2017年11月公開予定のマイティソー バトルロイヤルの監督を務めている。ということで、ドクターストレンジのタグシーン(mid-credits シーン)を撮ったりしている。
あとはモアナと伝説の海の初期の台本を書いたりしている。(アンクレジットで)
ジェマイン・クレメント
ヴラドを演じたクレメントの方は、タイカワイティティとのデュオで賞を取った後は、ちょろちょろと俳優業をやりつつ、上述の “So You’re a Man” のメンバーの1人、ブレット・マッケンジー(Bret McKenzie)との音楽コメディデュオ(で合っているか微妙)、フライト・オブ・ザ・コンコルズ(Flight of the Conchords)の活動をメインに。
このデュオに人気が出て、BBCラジオシリーズになり、その後アメリカのHBOのシリーズになって2シーズンやってた。これでエミー賞ノミネートされている。このシリーズについては、映画もやりたいね、みたいな話はしているっぽいけどまだ具体的ではない模様。
同時期に絶妙な雰囲気の「ナポレオンダイナマイト」を撮ったジャレッドヘス監督の「Mr.ゴールデン・ボール / 史上最低の盗作ウォーズ」でインディペンデントスピリット賞助演男優賞ノミネート。
本作の前には、メンインブラック3とかネームバリューのある作品にも出演。
ちなみに僕の好きなリックアンドモーティでfart
の声もやっていたりする。
スチュー・ラザフォード
スチューはみんなから愛され、守られる良い立ち位置だったよね。なんとなく分かる。
スチュー役のスチューラザフォードは、元になったショートフィルムでもカメオ出演していて、本作ではより重要な役柄で出演。ただ、本人にはどんな役かは伝えられず、「少しだけ出て」と言われていたらしい。そして公開されてからようやく気づくという。
というかスチューに限らず、より自然体で、そして演者自体にも驚いてほしいという意図で、脚本は結構書いていたけど、演者達にはほとんど見せなかったらしい。だから割と即興に近い形。
ちなみにスチューは本当にIT関連の仕事をしている模様。タイカワイティティ作品でも結構出演している。
吸血鬼のイメージを取り込む
本作に登場するヴァンパイアたちは、家事についてのミーティングしたり、最新のIT機器を使って見たり、アンデッドの舞踏会に参加してみたり、街に繰り出してクラブに行ってみたり、オオカミ男たちと争ってみたり、現代で暮らすヴァンパイアを描いている。
けど、あくまでもヴァンパイア。これまで築かれているヴァンパイア像、鏡に映らないとか、招かれないと家に入れないとか、銀に弱いとかの伝統的な伝承をうまく使って、現代風に、そしてコミカルにキャラを仕上げている。
中でもヴァンパイア映画から少しずつ取り入れている。と言っている人がいた。
ピーターは、吸血鬼ノスフェラトゥ(Nosferatu)から。
ディーコンは、魔神ドラキュラ(Dracula)のルゴシ・ベーラ(Lugosi Bela)から。画像は「古城の妖鬼」かも。
ヴラドはドラキュラ(1992)のゲイリーオールドマンのドラキュラから。ヴラドの名前については、ドラキュラ公と呼ばれたヴラド3世から。
ヴィアゴはインタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(Interview with the Vampire: The Vampire Chronicles)のルイス・デ・ポアント・ドゥ・ラック(Louis de Pointe du Lac)から。
とのこと。あくまでも一意見として。僕は1つも観てないので何も言えず。
続編とスピンオフ
オオカミ男をメインに据えた続編を計画中とのこと。タイトルは、”What We Do in the Moonlight” かもしくは “We’re Wolves” と言われている。
また、スピンオフとして、劇中で出てきた警官2人(Karen と Mike)を描くスピンオフも計画中とのこと。”Paranormal Event Response Unit” というタイトルで、30分を6エピソード。
ヴァンパイアのドキュメンタリーがここまで面白くなるとは
モキュメンタリーという形がより面白くさせる。普段は人間社会に溶け込むようにしているから、あまり普通の人とは関わりがないけど、そんな彼らの生活を追っかけてみましたと。
批評とか感想を見ていると、MTVの番組を引き合いにしている人が結構いた。
The Real World
この番組なんだけど、内容としては、一般人7人がアパートに同居する、というもの。1992年に始まって、その後のアメリカのリアリティ番組ブームの先駆けとなっている。
コメントしてた人曰く、本作のヴァンパイアの様子は、その番組の内容よりもリアルで、それっぽいと。
と、ここまで書いたところで、公式サイトに町山さんのコラムにも書かれていることに気づく。引用。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』というタイトルは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)のパロディだが、ビデオ・カメラで吸血鬼たちの生活に密着するのは、MTVの老舗番組『リアル・ワールド』を基にしている。『リアル・ワールド』は若者たちが一緒に暮らすアパートにビデオ・カメラを置いて、彼らの生活や本音をドキュメントする番組。たいていあるのが、夜中に酔って騒いでいると近所の人に通報されて警官が入ってくるシーンで、この『シェアハウス~』でもネタにされている。
です。公式サイトはこちら。
http://www.shochiku.co.jp/swv/
松竹のサイトリニューアルでページなくなった(?)模様。
全然関係ないんだけど、ヴァンパイアを調べているうちにこんなサイトがあった。ヴァンパイアが人間の血を吸い終わるまでにかかる時間について。
ヴァンパイア社会でも変わらない普遍さ
ヴァンパイアではあるものの、人間味のあるところがまた良い。元々は人間だから当たり前と言えば当たり前なんだけど。
ヴァンパイアとしての、鏡に映らないとか、招かれないと家に入れないとか、そういう特有の悩みはありつつも、普通の人間と同じように、シェアハウス仲間との関係、恋の悩み、対立しているグループとの関係(と見えて意外と仲良かったり)、等々に悩んだりする。
新入りのニックがヴァンパイア成り立てで調子に乗っちゃうところとか、銀はいけないと分かっていながらも思い出の銀のロケットをつけちゃうところとか、そういう一面が垣間見れるだけで味方につきたくなる。
ヴァンパイアとしての生態と意外と人間味のある様子を、笑いどころをこまめに挟んで描いてくれるから、気づくと彼らが次にどんな行動をするのか、何が起こるのかが楽しみになっているという。
人間社会にはヴァンパイアの他、ゾンビやらバンシーやらのアンデッド系が意外と潜んで馴染んでいるという設定も良し。
ヴァンパイアにも、それぞれに個性もあって、ただただ人の首噛んで血飲んでるわけじゃない。
僕らだってただ血飲んで、のうのうと暮らしているわけじゃないんです。
って言いそう。言ってないけど。
さらっと性差の描写も。ジャッキーがヴァンパイア化を後回しにされた時のセリフ。
「私が男だったら違ってた」
ふむ。
基本的にはコメディだけど、その中で、自然と男の友情物語的な内容にも仕上がっている。モキュメンタリーという形もそれを加速させる。特に終盤のスチューのくだりなんてね。
ということで
この後あなたの記憶は消えます。
後半にヴァンパイアが登場するフロムダスクティルドーン
ゾンビとコメディなら
なんかもおすすめです。
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