灼熱の魂 / Incendies

映画『灼熱の魂』予告編

重い、、がしかし面白い。こういうの好き。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品鑑賞は本作が初だったけど、こういう系が多いのであれば他の作品も観てみようか。本作は2011年アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされている。受賞はできなかったものの、各批評家からは大絶賛されている。

映画の後味的には、観た人の捉え方次第、と言ってしまえばそれで終わってしまうけど、出来事自体はまぁショッキングな内容。それにどう反応するか。今回、あんまりあーだこーだ書いていないけど、これを読んでいる暇があるなら、重めが好きな人も、そうでない方も、とりあえず観て欲しい。

ミステリー含むのでネタバレ嫌な方はご注意を。参ります。

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概要

基本情報

2010年 カナダ、フランス

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ(Denis Villeneuve)

原作:ワジディ・ムアワッド(Wajdi Mouawad)

キャスト:
ルブナ・アザバル(Lubna Azabal)/ ナワル・マルワン
メリッサ・デゾルモー=プーラン(Mélissa Désormeaux-Poulin)/ ジャンヌ
マクシム・ゴーデット(Maxim Gaudette)/ シモン
レミ・ジラール(Rémy Girard)/ 公証人ジャン・ルベル
アブデルガフール・エラージズ(Abdelghafour Elaaziz)/ アブ・タレク
アレン・アルトマン(Allen Altman)/ 公証人マダッド
モハメド・マジュド(Mohamed Majd)/ ワラット・シャムセディン:
ナビル・サワラ(Nabil Sawalha)/ ファヒーム・ハルサ:学校の用務員
バヤ・ベラル(Baya Belal)/ マイカ

解説

『渦』のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督と脚本を務め、レバノン出身の劇作家ワジ・ムアワッドの原作を映画化した珠玉の人間ドラマ。中東からカナダに移り住んだある女性の壮絶な人生を、過去と現代を行きつ戻りつしながら映し出す。『パラダイス・ナウ』のルブナ・アザバルが陰のある母親を演じ、その娘を、カナダのテレビで活躍するメリッサ・デゾルモー=プーランが演じている。過酷な生涯を生きた女性の胸に秘められた思いに涙する。

あらすじ

ある日、カナダで暮らす双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)の母親ナワル(ルブナ・アザバル)が永眠する。後日、長年彼女を秘書として雇っていた公証人(レミー・ジラール)により、母の遺言が読み上げられる。その内容は、所在がわからない自分たちの父と兄に手紙を渡してほしいというもので……。

受賞歴

Nominated for 1 Oscar. Another 39 wins & 15 nominations.

 

ストーリーのベース

本作の元ネタは、レバノン出身のワジディ・ムアワッド(Wajdi Mouawad)という人の2003年の同名の戯曲。これを観た監督は直感で「僕は傑作を目の前にしている」と思って脚本に着手。アラブ文化には詳しくなかったけど、ギリシャ悲劇の現代版みたいなものだと感じたらしい。ギリシャ悲劇の最高傑作と言われるオイディプス王も似たような話だけど、主人公として据えられる人物が異なっている。誰の目線から描くか。

タイトルとなっている “Incendies” はフランス語。意味は

  1. 火事、火災。
  2. 戦火、動乱。
  3. 真っ赤に燃える光。
  4. 激情、激昂。

とのこと。鑑賞後にこの意味を眺めると、まさに、って感じがする。

そのワジディ・ムアワッドの戯曲「アンサンディ」では、レバノン内戦をベースに、Soha Bechara という人の人生と自叙伝から引っ張っている。「炎」とか「焼け焦げるたましい」というタイトルで日本での舞台化もされている。

Soha Bechara という人は、東方正教会(ギリシャ正教会?)の家で育ち、父がレバノン共産党だったこともありそのまま参加。1988年、21歳の時、エアロビのインストラクターとして南レバノン軍のリーダーだったアントワーヌ・ラハド(Antoine Lahad)の家に潜入して暗殺を試みて逮捕。悪名高いKhiam prisonという刑務所に入れられてそこで10年過ごしている。2000年には彼女の若い頃と、刑務所内での出来事を綴った自伝、Résistante が出版されている。ワジディ・ムアワッドさんはおそらくそれを基にしているんだと思う。

映画内でははっきりと「レバノン」 とは出てこないけど、上記のようなこととからレバノン内戦時代のことを示唆している。ということもあり、レバノン内戦についての知識があった方がより映画に入り込めるかと。ただ、レバノン内戦はかなり複雑。超ざっくりと、レバノン内にはキリスト教とイスラム教が同じくらいの比率でいて、そこの対立だと捉えていればまぁなんとかなる。それくらいであれば劇中でも痛いくらいに描かれているからすぐわかるけど。レバノン内戦は本当はもっとキリスト教内、イスラム教内の宗派だったり隣国イスラエルやシリアだったりPLOだったり、いろんなものが絡んでいる。

 

1+1=1

1+1=1という衝撃の事実が明らかになり、その真相を理解した瞬間にゾワっとするあの感覚。ショッキングではあるけど、たまらないよね。

数式という点では、コラッツ問題というものをがチラッと出てくる。コラッツの問題というのは、wikipediaから引用すると、

「任意の正の整数 n をとり、
・n が偶数の場合、n を 2 で割る
・n が奇数の場合、n に 3 をかけて 1 を足す
という操作を繰り返すと、どうなるか

という問題。それに対して、

どんな初期値から始めても、有限回の操作のうちに必ず 1 に到達する(そして 1→4→2→1 というループに入る)」という主張が、コラッツの予想である。

とのこと。この最終的に “1に到達する” という意味で、結構序盤から示唆していたんだなぁ、と。それからループに入るという点では、母が求めた「連鎖を断ち切る」ということにも繋がるのかもしれない。

 

ということで

灼熱の魂。一度は。

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ちょっと重い系と言えば、オールドボーイとか、私が生きる肌とか

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