概要
基本情報
1950年 日本
監督:黒澤明
脚本:
黒澤明
橋本忍
原作:芥川龍之介
キャスト:
三船敏郎 / 多襄丸
森雅之 / 金沢武弘
京マチ子 / 真砂
志村喬 / 杣売り
千秋実 / 旅法師
上田吉二郎 / 下人
本間文子 / 巫女
加東大介 / 放免
解説
芥川龍之介の小説「藪の中」を故・黒澤明監督が映画化した時代劇。ある侍の死に立ち会った、男女4人それぞれの視点から見た事件の内幕を生々しく再現する。本作の成功で黒澤監督とともに海外で高い評価を受けた三船敏郎や、『七人の侍』などの名優志村喬、大映の看板女優だった京マチ子ら豪華キャストが共演。1951年のヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、モノクロームの斬新で美しい映像や、俳優たちの鬼気迫る熱演に魅了される。
あらすじ
平安時代、羅生門の下で雨宿りをする下男(上田吉二郎)相手に、旅法師(千秋実)と杣売り(志村喬)が奇妙な話を語り始める。京の都で悪名高き盗賊多襄丸(三船敏郎)が山中で侍夫婦の妻(京マチ子)を襲い、夫(森雅之)を殺害したという。だが、検非違使による調査が始まると、盗賊と妻の証言はまったく異なっており……。
批評と受賞歴
受賞
ブルーリボン賞:脚本賞
毎日映画コンクール助演演技賞
ヴェネツィア国際映画祭:金獅子賞、イタリア批評家賞
アカデミー賞:名誉賞(現在の外国語映画賞)
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:監督賞
全米映画評論委員会賞:監督賞
ノミネート
アカデミー賞:美術監督賞
英国アカデミー賞:総合作品賞
アメリカ監督組合賞
批評
・Rotten Tomatoes:100% 9.3 / 10
・Roger Ebert:4 / 4
・IMDb:8.3 / 10
日本映画の金字塔
日本映画初となるヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー名誉賞を受賞したことで、日本映画が世界で認知・評価されるきっかけとなった。ってwikipediaに書いてあった。
まさに日本映画の金字塔。
国内国外問わず批評家からは絶大な人気を誇る本作、何が良いかは観ればわかる。まだ観てない方はぜひご覧ください。
タイトルは「羅生門」だけど、話の下敷きは「藪の中」。どちらも芥川龍之介著作。恥ずかしながら僕は芥川作品では羅生門しか読んだことない。それも高校の授業で読んだだけで、遺体の髪を抜いてた老婆に出くわした下人がなんやかんやあって結局追い剥ぎしたとかそんな感じ、だったっけ?くらいの記憶しかなかった。
本作の「羅生門」というタイトルから芥川龍之介の羅生門を映画化したやつなんだと勝手に思い込んでいたから、映画を観始めて、そして観終わって、「ああ、こんな感じだったんだ羅生門。」って勘違いしてた。
タイトルに騙されないようにご注意ください。
あんまり見る気になれないって思う人は、冒頭の方の杣売りが森の中を歩くシーンだけでも見て欲しい。ここは結構世界の映画関係者が好きなシーン。だと思われる。
ということでネタバレありつつ参ります。以下ご注意を。
元ネタいろいろ
上でも書いたけど、中心の話は「藪の中」。殺人と強姦の事件を4人の目撃者と3人の当事者が証言する。その証言内容が矛盾し錯綜する、と。
このメインの話に、羅生門要素をくっつけたのが、本作の内容。藪の中自体は、今昔物語集を下敷きにしているけどその他にも、アンブローズ・ビアス(Ambrose Bierce)の「月明かりの道」、ロバート・ブラウニング(Robert Browning)の「指輪と本」からも着想を得ていると言われている。
引き合いに出された市民ケーン
海外の批評家が本作を観て絶賛した時、オーソンウェルズの市民ケーンに影響を受けている的な感じに思ったらしいけど、黒澤監督はそれまでオーソンウェルズ作は観ていなかったらしい。でも確かに、フラッシュバック的に各人の証言を聞き出していくところは市民ケーンに似ている。
だから、最後の下人の態度を抜きにすれば、下人が観客の代わりに真相を探っていく構成。ただ、証言を聞くところは下人の立場だけど、杣売りの話が終わって短刀の件がバレたところで役割がシフト。
下人があっさりと赤ん坊を追い剥ぎしたことに対して、例え時代的に生き残るために必要だったことだとしても、それが良いのか悪いのか、倫理的にどうなのか、でも、自分はどうなんだ、人のこと言えるのかって。
保身とかプライドとか体裁を保つために小さな嘘はおそらくほとんどの人が経験があると思う。だから、平然と生きるために悪を出せる下人よりも、善と悪を揺れ動いてる杣売りの方に自分を重ねやすい、と思う。
とは言いつつも、自分には善の心があると思っていても、実際にその立場になったらどうなんろうと、ちょっと自信がない。善の心があるとは思いたいけれども。。
誰が武士を殺したか、のミステリー
誰がどこでどんな嘘をついたのか、で、結局誰が武士を殺したのか、については
知りません。
各人の言動を細かく見ていけばわかるのかもしれないし、追求するのも面白いかもしれない。しれないけど、そこに囚われすぎなくて良いと思う。ただ、3人の話の食い違いを見て、杣売りの話を聞いて、如何に自分勝手に物事を捉えて、他人によく見せようとしているのが気持ち悪いかって感覚に陥れば良いと思う。
ちなみに個人的には、短刀を盗んだことを隠していたことはおいといて、杣売りの話は本物で、赤ん坊を引き取ったのも本ものだと思っている。杣売りの話が嘘だったとしたら、前段の3人の話の気持ち悪さが際立たないし、短刀を盗んだのを隠す程度の嘘にしないと、最後の赤ん坊を引き取るところの希望がなくなる。
希望を断つ終わり方でも、それはそれで偽善の気持ち悪さが出て良いとは思うけど。ただ、赤ん坊を実は捨ててたりしたら杣売りの話全部があやふやになるし、映画的な物語を考えてもやっぱり本物の善と考えた方がしっくりくる。
あと、表現方法だから直接的ではないけど、よく映画内で使われる天気の表現。最初は土砂降りで最後は晴天。ってことはラストは前向きな気持ちがあるはず。
ということで
なかなかあっさりしてますが、一度は観たい本作。
名誉賞(外国語映画賞)を受賞した24回アカデミーで12部門ノミネートされた欲望という名の電車、
海外で引き合いに出された市民ケーン
なんかもおすすめです。
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