概要
基本情報
1953年 日本
監督:小津安二郎
キャスト:
笠智衆 / 平山周吉
東山千栄子 / とみ(周吉の妻)
原節子 / 紀子
杉村春子 / 金子志げ
山村聡 / 平山幸一
三宅邦子 / 文子(幸一の妻)
香川京子 / 京子
東野英治郎 / 沼田三平
中村伸郎 / 金子庫造
大坂志郎 / 平山敬三
十朱久雄 / 服部修
長岡輝子 / よね
解説・あらすじ
日本映画を代表する傑作の1本。巨匠・小津安二郎監督が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。家でひとり侘しくたたずむ笠智衆を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。
批評と受賞歴
批評
・Rotten Tomatoes:100% 9.7 / 10
・Roger Ebert:4 / 4
・IMDb:8.3 / 10
海外でも愛される
やー、これは良い映画じゃけぇ、ほんとじゃよ。
どうも、ありがーと。
と、ちょっと恥ずかしくなったところで今回は名作、東京物語。大学のとある授業で数回に分けて鑑賞した以来の鑑賞。何年かに一度行われる、なんちゃらベストテンとかなんちゃら映画100みたいなランキング系にすんごい選ばれてる本作。
2012年の英国映画協会の映画至上最高の作品ベストテンの「映画監督が選ぶベストテン」の1位にもなっている。その他はwikipedia参照。
ちなみに英語タイトルは “Tokyo Story” 。そのまんま。
家族のあり方とか、人の一生とか、建前と本音とか。海外のランキングでも選ばれていたり、多くの人に、これだけ長い間愛され続けるということは、それだけ普遍的なテーマだということ。
見方によっては何も起こらなくて派手さがないから、物語の展開とかが単調でつまらないとか、あんまり動きのある画ではないから、面白くないとか思う人もいるかもしれないけど、淡々としてあんまり表情がないからこそ、観る側はより客観的に観られるのかもしれない。
あの家族が見せてくれる家族の関係を見て、何かしら感じることがあると思う。シンプルだけど、何かが訴えてくる。本当、作品が持つ力って感じ。
観る人の年齢でも変わってくるかもしれない。僕は田舎で生まれて大学進学で上京してそのまま仕事について現在に至っているけど、今までずっと一緒に暮らしていた家族と離れて、実家に帰らないわけではないけど年々その頻度は減っていて、親と一緒に過ごす時間はまぁとてつもなく少なくなった。
そんな経験をしているからこそ感じることもあるし、映画を観て改めて親に対して、兄弟に対しての思いもこみ上げてくる。
全体的に寂しさがじんわりしてるところも自分好み。「忙しいんじゃない?」って何回も聞いてるとこう、胸が。
と、そんな感じで、世界中から愛される一度は観た方が良い作品。以下ネタバレありつつ参ります。ご注意ください。
紀子物語
見事にいい人っぷりを見せつけてくれた原節子演じる紀子さん。お母さん単独で紀子さん宅に泊まった時とか、最後のシーンでもお父さんの台詞としてもかなり直接的に言っているけど、血の繋がった子供達からはやっかいもの扱いされても、紀子さんだけは真摯に誠実に対応してくれた。
素直に見れば、「すんごい良い人な夫婦なのに」と「血のつながりのない紀子さんが」ってところがポイントなんだろうけど、田舎から上京して都会の人に騙されないようにしようと常日頃心がけてきた自分にとっては、すごく紀子さん 危うい。
こんなに良い人がいるんだろうか、ってどうも疑り深くなってしまって。そして日本映画ということもあってどうしても台詞の中に本音と建前の文化の影響を見出してしまう。
お母さんを泊めたシーンでも、もっと尾道来れば良いのに的な台詞に対して正面から「ええ、もうちょっと近ければ」。でも夫婦が東京に上陸したした時に「来てみると意外と近いんだねぇ」のような発言があったからなーとか思ってしまう。
そして追い討ちをかけるようにお母さんにお小遣いを渡す。なんかこう、黒い意味をもたせたお金のように思えてきてしまう。だから最後にようやく本音を言い始めた時には、続きを観るのがちょっと怖くなったけど、一連の台詞を聞いて、それまでの2時間を振り返って、ようやく安心できた。
そして気づいた。
自分は完全に人を見る目がない。
映画全体で見たらやっぱり紀子さんは良い人で、どこを切り取っても夫婦のためを思っての言動が見られる。危篤と聞いた時の表情も。最後まで家に残っていたところも。
疑ってすみませんでした。
安心できたところでもう一回見直したい。あとは解釈の余地がでてきそうな紀子さんの終盤の台詞、「わたしずるいんです」。この本当の意味が明らかにされているのかどうかはわからないけど、考察しているサイトもあるので参考に。
いやでも。ラストシーンのあの一連の会話は本当に。もう。ずるい。もう一回見たい。
元ネタとリメイクその他
本作は1937年のレオ・マッケリー(Leo McCarey)監督の 「明日は来らず(Make Way for Tomorrow)」をベースにしていると言われている。小津さんは観ていなかったけど、一緒に脚本を書いた野田高梧さんが 観ていたらしい。そして本作のオマージュやらリメイクやらとして、日本だけでなく海外でもいくつか取り上げられている。wikipediaに載ってます。
小津さんの撮り方
本作以外でも見られるらしいけど、ロー・ポジションっていう低い位置にカメラを置いて、ちょっとだけ上向きにして撮る構図が小津さん作品には多い。海外では
通称 “ tatami shot” 。
そうです。ただ
tatami shotって言いたかっただけ。
ということで
東京物語、本当に素晴らしい作品でした。また観たい。
白黒映画は全然観てないけど、 欲望という名の電車(記事へ)、サンセット大通り(記事へ)、市民ケーン(記事へ)
なんかもおすすめです。
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