卒業 / The Graduate

 

The Graduate (1967) Official Trailer
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概要

基本情報

1967年 アメリカ
監督:マイク・ニコルズ(Mike Nichols)
脚本:バック・ヘンリー(Buck Henry)
キャスト:
ダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)/ ベンジャミン
アン・バンクロフト(Anne Bancroft)/ ミセス・ロビンソン
キャサリン・ロス(Katharine Ross)/ エレーン
マーレイ・ハミルトン(Murray Hamilton)/ ミスター・ロビンソン
ウィリアム・ダニエルズ(William Daniels)/ ミスター・ブラドック
エリザベス・ウィルソン(Elizabeth Wilson)/ ミセス・ブラドック
ブライアン・エイヴリー(Brian Avery)/ カール
バック・ヘンリー(Buck Henry)/ フロント係
リチャード・ドレイファス(Richard Dreyfuss)/ 下宿先の人

解説

大学を卒業し前途洋々のベンジャミン。彼は、祝賀パーティの席で誘惑をかけてきた中年女性ロビンソン夫人と逢瀬を重ねることに。だが彼女の娘エレインが現れた事で、その関係は崩れていく。親の勧めで不承不承エレインと付き合うことになるベンジャミンは、彼女に惹かれていったのだ。一方、そんな若い2人に嫉妬するロビンソン夫人。やがて、彼女とベンジャミンの関係がエレインの知るところとなるのだが……。

批評と受賞歴

受賞

アカデミー監督賞 ゴールデングローブ賞:主演女優賞(アンバンクロフト)、監督賞、作品賞、新人男優賞(ダスティンホフマン)

ノミネート

アカデミー作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞
ゴールデングローブ賞:主演男優賞、脚本賞

 

アメリカを変えた映画

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アメリカを変えた映画「卒業」

すごくかっこいいよね、この感じ。

今後の映画ライフを楽しむために観るべき1本。

でも1つ、注意点。 予習をしてから観ること をおすすめする。しなくても良いけども、予習した方がより楽しめる。

簡単に言えばこの映画

前半:情事

後半:ストーキング

だからね。後半ストーキング部分はちょっとゴリ押しすぎてあんまり好きじゃない。正直。何も考えずに観ると、

は?

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ってなりかねない(画像はマラソンマンのダスティンホフマン)。でもこの映画を楽しめた後なら 他の映画も楽しめるようになる。

何の予習すれば良いかってのをここでは書こうと思うんだけど、

町山さんの解説を観よ

これだけで良いです。でも寂しいからちょっとまとめ+自分の解釈を少し。前半予習ネタ、後半ネタバレありでいきます、ご注意を。

映画の意味するもの:時代背景

初っ端から核心の部分。 反体制 something different

これがテーマとなっている。「アメリカンニューシネマ」ジャンルの先駆けとなる作品。だから、当時のアメリカの時代がよく表れている点ですごく重要視される作品。

「卒業(The Graduate)」(1967)
「俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)」(1967)
「イージーライダー(Easy Rider)」(1969)

この辺が有名。1967年の映画だけど、アメリカンニューシネマが生まれたきっかけを知っていると、1960年後半〜1970年代の映画がぐっと面白くなる、はず。

アメリカンニューシネマってなんなの?ってことだけど、

「今までの価値観とか制度とかなんやかんやぶっ壊してやるわぁ権力者どもめ」

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って映画だね。だいぶざっくりした説明だけど。

ベトナム戦争をきっかけにアメリカ国民のアメリカに対する不満とか不信感が募りに募って、政府なんてぶっつぶしまえばいっか、という考えに至る。これがカウンターカルチャー

そんなん少人数でやってても中々動けないよね。でも少人数なんかじゃない。その時の若者っていうのは日本でいう「団塊の世代」。第二次世界大戦が終結して帰ってきた人たちがこぞって結婚して、その子供たちが一大勢力となっていた。その人たちがアメリカが今まで隠していた真実を暴こうとして、ものすごいムーブメントになった。

映画に関していうと、セックスとか暴力とかドラッグとかはヘイズコードに沿って描かないようにしてた。でもマイクニコルズ監督の「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない(Who’s Afraid of Virginia Woolf?)」(1966)を突破口にヘイズコードの緩和とか廃止って流れになっていった。

そういう、国に対する不信感を思いっきりぶつけていこう、これまでのハリウッド映画なんてぶっこわそうっていう反体制の映画がアメリカンニューシネマ。

だらだらしそうだからこの辺で。この辺の事情知ってるだけで、だいぶ変わると思う。さて、ここからネタバレありでいきます。

 

 

 

 

 

 

名セリフベスト100に選ばれた「Plastics」

これね。 主人公ベンジャミンの卒業パーティーでおっさんがベンジャミンに言う言葉。

「お前に一言だけ言っておく。プラスティック。」

プラスティックってここから産業的に伸びてくるから株買っとけよ、が表向きの意味。アメリカってのはプラスティックみたいに作り物ばっかりだ、が真意。って町山さんが言ってた。

こういう細かいところでも伝えたいテーマが一貫して練りこまれている。ちなみに原作にはこのセリフないんだって。脚本書いたバックヘンリーが付け加えたんだって。

 

ミセスロビンソンが象徴するもの

体制側、体制に負けてしまった側、体制に取り込もうとする側、今まで正しいと思われてたもの、ってこと。すごく怖いものとして描いている。この人を乗り越えるのが試練。

 

ラストシーン

すごく有名なラストのシーケンス。結婚式中に割り込んで連れ去るやつね。全体的には失楽園のアダムとイブ。これまでぬるま湯で育ってきた2人にとっては、その楽園を飛び出して、神(ミセスロビンソン)から逃げ出して、2人で戦っていかなければならない。

だから教会から飛び出してバスに乗り込んだ瞬間は笑顔なんだけど、バスの中にはじじばば(旧体制)が一杯でこっちを見てきてるから、そこからは困難ばっかりなんだなぁ、頑張らないと。ってのを真面目な顔をすることで表現している。すごく印象的なシーン。

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ベンジャミンが「エレーン」って叫ぶところがキリストの磔の格好と同じだって言ってたけど、え?って感じだった。どうでもいいけど。

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というかこの辺は結構イライラしてた。映画の真意とかストーリーの展開とかはおいてといてね、自分の母親と関係を持ったやつにストーキングされて何で好きでいられるのかな、と。そんだけ思いを寄せられる何かがあるんだろうけどね、この辺がイマイチ共感できなかった。

というのが不満点。

 

音楽:サイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)

主題歌がサイモン&ガーファンクルのサウンド・オブ・サイレンス(The Sound of Silence)

The Sound of Silence (Original Version from 1964)

これがね、「聞いているようで聞いてない、見てるようで見てない」って歌らしい。この曲の使い方がすんごいうまい。あと有名なのはミセス・ロビンソン(Mrs. Robinson)

Simon & Garfunkel – Mrs. Robinson (Audio)

とかね。

 

卒業に対するオマージュ作品

ジャッキーブラウン(Jackie Brown)/ クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)

オープニングのシーン。すっごいよく覚えている。

卒業

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ジャッキーブラウン

JackieBrown.jpg

ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street) / マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)

Mrs.Robinsonのパンクバージョンを使用。腐敗していく感じで。

Lemonheads – Mrs Robinson

天才マックスの世界(Rushmore) / ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)

天才マックスの世界(記事へ)。ウェスアンダーソンは卒業が大好きだと思われる。というか本当に映画自体が好きなんだなぁといった感じ。天才マックスの世界では、ビルマーレイがプールに沈むところ。あとマックスの「居場所を探している」感じがベンジャミンとよく似ている。

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卒業白書(Risky Buisiness) / ポール・ブリックマン(Paul Brickman)

情事を楽しむベンジャミン。昼間はプールでのんびり。その時サングラスをかける。このサングラスをかけるのはダークサイドに堕ちた象徴らしい。卒業白書でもその象徴として描いている。らしい。

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ブルーベルベット(Blue Velvet) / デヴィッド・リンチ(David Lynch)

郊外の欲望と暴力がテーマになってる。

 

個人的に好きなシーン

情事に耽ってるシーン中、プールの中から飛び出したと思ったらミセスロビンソンに乗っかって、かと思ったら「お前何してんだ?」って父から言われるところ。

あのフワフワ感がすごい好き。というかこの映画、

音楽の使い方とシーンの繋ぎとか撮り方がすごく良い。

ぶっちゃけ、内容とかどうでもいいです、そういう撮り方とかの方に注目して観てほしい。

 

ということで

町山さんの解説が本当に参考になるから映画観た後も復習編を見た方が良い。アメリカ映画を変えた作品、卒業。ここからハリウッド映画が変わっていった。いろんな映画に影響を与えているから、これから映画を上で一回は見ておいて損はないかと。

ぜひご覧ください。

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