カメラを止めるな! / ONE CUT OF THE DEAD

映画『カメラを止めるな!』予告編

最高かよぉおい!

これは久々に、内から楽しさが湧き上がってくる、何かが掻き立てられる映画だった。随所で見られる「今年ベスト級」ならぬ「生涯ベスト級」、それは間違いない。何かが変わるとは到底思えない僕の一票も投じたい。

この映画に関して、「なんか盛り上がってるけど面白いの?」状態の方はそのまま何にも情報収集せずに劇場へ直行して下さい

新作映画弱者、そして流行弱者な僕自身、そんくらいの情報しか持ち合わせていなかったけど、映画の構造を言うだけでもまぁまぁなネタバレになるという感想文を書くには全く向いていない本作は何にも知らない方が絶対に楽しめる。

「ソフト化されてからで良いかなー」なんて言っているヒマはない。ぜひ、ぜひ劇場で楽しんで頂きたい。そしたらきっとこう思う。

やっぱり映画は面白い。

色んなところでのネタバレ防止の風潮に乗っかって僕も今回はキツめのネタバレは無しで参ります。

ですが、一切のネタバレも許さないという方は以下ご注意を。

※個人的に役名を言われてもピンと来ないので自分用にどんな役所かを書いていたり、あらすじすらネタバレになりかねないので、概要部分にもご注意ください。

以下ネタバレありますのでご注意ください。

 

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概要

基本情報

2018年 日本

監督・脚本・編集:上田慎一郎

原案:劇団PEACE「GHOST IN THE BOX!」

キャスト:
濱津隆之 / 日暮隆之(監督)
真魚 / 日暮真央(娘)
しゅはまはるみ / 日暮晴美(妻)
長屋和彰 / 神谷和明(人気の若手俳優)
細井学 / 細田学(のんべえ)
市原洋 / 山ノ内洋(メガネの助監督)
山﨑俊太郎 / 山越俊助(軟水硬水)
大沢真一郎 / 古沢真一郎(イケメンプロデューサー)
竹原芳子 / 笹原芳子(おばちゃんプロデューサー)
吉田美紀 / 吉野美紀(おばちゃんAD)
合田純奈 / 栗原綾奈(若手AD)
浅森咲希奈 / 松浦早希(カメラマン助手)
秋山ゆずき / 松本逢花(よろしくでーす)

あらすじ

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる!​大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。

 

まずは前半のワンカットオブザデッド

ご覧になった方なら分かるこの前半部分。宇多丸師匠は「頑張ってる感」と言っていたけど、そんなことも知らずに見始めた僕はその中途半端さに戸惑っていた。

変な描写が至る所にあって、「ん?どういうことだ?こういうことか?」と考えている内に次なる変な描写が挟み込まれる

そうかそうかやはりまだ僕の読解力では太刀打ち出来ない代物だったのかな、と思いつつ、これが何で大衆受けをしているのだろうと思いつつ、本作を教えてくれた知人に何て感想を言おうと考えつつ、最終的には

「なんなの?」と頭フル回転で「ワンカットオブザデッド」のラストカットを眺めていた。

が、本番はここからだった。

初見の段階で僕は監督の「最高かよおい」のセリフで笑っていたけども、それどころじゃなかった。このセリフに関しては完全に僕のマイブームになっているけども、本作ではそういう笑いが本質的なものではなかった。

いや。ほんとに、ほんとにすみませんでした。

ちなみに海外タイトルは「ONE CUT OF THE DEAD」とのこと。

 

繋ぎと言えど、なければ成立しない

ワンカットオブザデッドが終わるとメタ的な視点に移り、なぜワンカットオブザデッドを撮ることになったか、各キャラクターの背景、人柄、関係者との関係、その辺が描かれる。

前段のワンカットオブザデッドがあった上で、さらにこの後に続く最高のクライマックスに向けての前提を描く大切な部分。

ここが始まって、「あー、なるほどね、そういう作りね。その辺がウケたのかな」と、まだちょっと舐めてる感を漂わせる僕。

ただ、徐々に、徐々に、ワンカットオブザデッドと繋がってくる部分が見えてきて、気づけば完全にワクワクして前のめり状態な僕。

 

怒涛の伏線回収で巻き返して笑いの渦に巻き込まれる

それは、凄まじく、テンポよく、

駆け抜けていった。

ワンカットオブザデッドの答え合わせとなるこの最期のパート。

もはや最初の監督の怒り爆発のシーンからニヤニヤが止まらない。どんな経緯があって、どんな思いでここまで来たかをちゃんと描いたからこそ、伝わってくる本気の思い。ここから最後まで僕はニヤニヤしっぱなしだった。

親子の関係に胸を打たれた方も多くいたようだけど、個人的には正直あってもなくても良かった。ただのゾンビコメディ+メイキング風映画としてそのまま突っ走ってもらっても全然僕は楽しめたと思う。

何はともあれ、この答え合わせパートでは予想できてしまうこともあるんだけど、気持ち的には製作陣の味方。何でも楽しめる状態。これを最大限に発揮してほしい。

そして仕上げは、言うまでもなく、エンドロール。映画で描いてきたメタ視点の最も上から見ていシーン。これを見るだけでワクワクして、そして感慨深い思いになる。

映画製作自体を作品にしているという意味では、フェリーニの「8 1/2」とか、スパイクジョーンズの「アダプテーション」とかまぁ諸々あるけども、どちらかと言うと製作中の悩みを主題に置いているのに対して、本作はもっとポジティブに映画愛に溢れた映画だというのも良い。

 

なぜ劇場が良いか

導入部分でも書いたように、劇場公開している内に観に行った方が良いというのには理由がある。

一度劇場にインしたら最後まで観なきゃいけない(こともないけど)映画。前半には仮につまらないと思われてもしょうがないパートを挿入。そしてこの長い前フリがあってこその後半部分で畳み掛ける。

これがテレビ映画だったりドラマだったりするともしかしたら前半で離れてしまう人がいるかもしれない。

それを強制的に観させるのが映画で、回収パートで一気に気持ちを盛り上げてくれるのが映画。それをうまく使っている。

そして、もう一つ。会場に自分以外の人間もいるということ。その場にいる人たちと面白さを共有できる、盛り上がる会場の雰囲気というのも映画ならではの楽しさを再認識させてくれる。

予想はできるけど、この手の盛り上がっている映画というのは恐ろしくリピーターが多い。とある情報では、「42回観た」なんて猛者もいる模様(42という数字は映画内で出てくる)。

本作好きな人たちのコミュニティも出来るだろう(というかきっと既にできているだろう)。

そういう意味ではロッキーホラーショー的な立ち位置にもなり得るかもしれない。

ぜひ、「あの映画をリアルタイムで劇場で観た」というステータスを手に入れて下さい。この盛り上がり方はなら、まだ間に合う。

もちろんソフト化された後も本質的な面白さは変わらないかと思うけど、

カルト映画の発端を見逃すなかれ。

 

ということで

しばらくこれを越える作品は出て来ないだろう。それほどの面白さを持った本作。いや、良かった。

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