概要
基本情報
2015年 オーストラリア
監督:ジョージ・ミラー(George Miller)
キャスト:
トム・ハーディ(Tom Hardy)/ マックス
シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)/ フュリオサ
ニコラス・ホルト(Nicholas Hoult)/ ニュークス
ヒュー・キース・バーン(Hugh Keays-Byrne)/ イモータン・ジョー
ロージー・ハンティントン=ホワイトリー(Rosie Huntington-Whiteley)/ スプレンディド
ライリー・キーオ(Riley Keough)/ ケイパブル
ゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)/ トースト
アビー・リー・カーショウ(Abbey Lee)/ ダグ
コートニー・イートン(Courtney Eaton)/ フラジール
ジョシュ・ヘルマン(Josh Helman)/ スリット
ネイサン・ジョーンズ(Nathan Jones)/ リクタス
ジョン・ハワード(John Howard)/ 人食い男爵
リチャード・カーター(Richard Carter)/ 武器将軍
アンガス・サンプソン(Angus Sampson)/ オーガニック・メカニック
iOTA / ドーフ・ウォーリアー
ミーガン・ゲイル(Megan Gale)/ バルキリー
メリッサ・ジャファー(Melissa Jaffer)/ 種を持つ老婆
解説
荒廃した近未来を舞台に妻子を暴走族に殺された男の壮絶な復讐(ふくしゅう)劇を描き、主演のメル・ギブソンの出世作となった『マッドマックス』シリーズ第4弾。同シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが再びメガホンを取り、主役を『ダークナイト ライジング』などのトム・ハーディが受け継ぐ。共演にはオスカー女優シャーリーズ・セロン、『ウォーム・ボディーズ』などのニコラス・ホルト、1作目で暴走族のボスを演じたヒュー・キース・バーンら多彩な顔ぶれが集結。
あらすじ
資源が底を突き荒廃した世界、愛する者も生きる望みも失い荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を牛耳る敵であるイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の一団に捕らわれ、深い傷を負ってしまう。そんな彼の前に、ジョーの配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの謎の男、そしてジョーと敵対関係にあるグループが出現。マックスは彼らと手を組み、強大なジョーの勢力に戦いを挑む。
批評と受賞歴
批評
・Rotten Tomatoes:97% 8.6 / 10
・Metacritic:90 / 100
・Roger Ebert:4 / 4
・IMDb:8.1 / 10
シリーズ4作目
めちゃめちゃ話題になったマッドマックスシリーズ4作目、マッドマックス 怒りのデスロード。シリーズ初アカデミー賞ノミネート&受賞(10部門ノミネート、6部門受賞)。これが観たくて今までシリーズ3作を観てきたわけだけど、
前3作、観なくても良かった。
というのも、本作の立ち位置はリブートで、主演やってたメルギブソンも出ない。
そして
登場シーンはアガった。ありがとう。
とは言いつつも、マックスの過去とか、マッドマックス自体の荒廃した世界観なんかは3作全部観ていた方がすっと入り込める。それに、前3作と同じようなシーンがいくつかある。もちろん意図的に。その辺を比較しつつ観るのもまた面白い。
そんなわけで、
前3作は観ておいた方がさらに面白い。
それから、今までのシリーズでもアクションを中心に絶賛されてきたけど、今回もミラー監督はやってくれている。ど迫力なアクション、素晴らしい。
話の進み的には、逃げる、戻る、の単純構造ではあるけど、その一方で、ウーマンリブっぽい社会的な物語の重みもあったりと、ただの爽快な男を奮起させるアクションだけではない。
サンダードーム以降、ベイブやらハッピーフィートやら、しばらくほのぼのほんわか映画を手がけてきた監督の腕は全くなまっていなかった。アクション好きはぜひ観た方が良い作品かと。
正直マッドマックス2以外はあまりハマらなかった自分だけど、今作はだいぶ楽しませて頂きました。ありがとうございました。
development hell
“development hell”。ディベロップメントヘル。映画業界とかゲーム業界とかメディア産業系で使われる専門用語、隠語。
割と曖昧な言葉だから、「完成しないままの作品のこと」だとか、「完成したけど興行的に振るわなかった作品のこと」だとか、「完成して大ヒットしたけど製作期間が長かった作品のこと」だとか、明確には定義されていないっぽい。もしくは使う人が自由に決めちゃって良いのかもしれない。
今回は、作品の完・未完、興行的な成功・失敗は考えずに、「企画は出たけどなかなか前に進まなくて全然完成しない状態のこと」をディベロップメントヘルとして書きます。
で、
マッドマックスはディベロップメントヘルに陥ったんだよね。
というこの一言を言いたかっただけ。
前作サンダードームが1985年公開、本作は2015年公開だから、実に30年の時を経て満を持しての公開だったわけだけど、実際は、2001年に撮影予定だった。でも911があって延期、2003年製作発表するもイラク戦争やらの世界情勢関係で延期、そんなこんなで予定していたメルギブソンのやる気がなくなって再キャスティング。てな感じで延び延びになっていた。
ちなみに再キャスティング当初はマックスの息子を描く物語にして、その息子役をヒースレジャーが演じるとか、メルギブソンがカメオ出演する、とかそんな噂も出た。
立ち位置とその他メディア
今回の4はリブートとして、新3部作的な構想で進めているとのこと(5が最後になるとミラー監督が言っているという噂もある)。
5作目は “Mad Max: The Wasteland“。リブートはリブートだけど、その世界観は崩さずに、同じ内容ではやりたくないなぁってミラー監督は思ったらしい。その結果、話の時系列的にはサンダードームの後の話ということになっている。
一応は2をベースにしたリブートになっていて(?)、あの犬も登場させる予定だった。というか撮影はしたけど、カットしたらしい。
本作の製作にあたって、映画だけでなく、ゲームとアニメを含めた3本で描く計画だった。ゲーム版でマックスの前日譚、 アニメ版でフュリオサの前日譚。
元々ミラー監督はマッドマックスのアニメを作りたかったみたいで、日本の前田真宏さんと試作を作ったりしていた。でも内容が大人向けだし、フル3Dということもあって、予算その他諸々の関係でアニメ版ができなくなって、前田さんを映画版のコンセプトデザイナーとして起用している。
アニメの代わりなのかどうかはわからないけど、コミックでも前日譚が描かれている。
- ニュークスとイモータンジョー
- フュリオサ
- マックス1部
- マックス2部
の4部構成で2015年5月から8月まで月一で出版された。
映画の劇中でマックスのフラッシュバックで見れる小さな女の子の正体、イモータンジョーがどうやって今の地位を築いたのか、フュリオサが脱走を決意した経緯、なんかが描かれている。
今回のテーマ
ミラー監督は「サバイバルがキーだ」って言っている。予告ですら「survive」って言ってるし。つまり、根底にあるのは生き残ること。
これを描くためのストーリーは
逃げる→戻る
実にシンプル。それの肉付けとして、カルト集団がいて、その内部に生きる人がいて、そのコミュニティの支配から逃げ出す人がいて、故郷とか新天地を探す人がいて、それぞれの目的のために団結する。
今までのシリーズではどちらかというと、ガソリンとかの資源の奪い合いだったのに対して、今作では、「人」の奪い合いとなっている。
と言っても、ファイブワイブズをはじめ、マックスが単なる輸血袋として扱われたり、言ってしまえばウォーボーイズもイモータンジョーを生かすためともとれるし、イモータンジョーからしたらモノの奪い合いとも言えるかもしれない。
そして今回のマックスのパートナーの筆頭がフュリオサという女性であり、彼らを囲むのもファイブワイブズの面々。サンダードームではメインの敵役としてティナターナーが出てきたけど、今回は味方側のメインが女性。
そこにミラー監督は劇作家であり、フェミニストであるイヴ・エンスラー(Eve Ensler)を招いてフェミニスト目線でも描き方を見てもらっている。そういう一面もあることから、ジャンルのひとつとして、 “Ozploitation” が含まれる。 “Ozploitation” ってのはオーストラリア版エクスプロイテーション映画のことを言うらしい。
神のために
イモータンジョーを神格化して、全てはイモータンジョーのために、そして自らの魂が英雄の館に行くために。劇中の印象的なシーンの1つと言えば、ウォーボーイズが口のところにスプレー吹っかけるやつ。
“the gates of Valhalla, shiny and chrome” って言ってたらしく、楽園に行けるみたいになってたけど、なんかのヒューキースバーンのインタビューではあの行為について、儀式的な意味合いもあるけど、幸福感のあるドラッグを吸入して、ハイになって死を厭わずにイモータンジョーに身を捧げるようにしていると。
さらに、”chrome” とか “chroming” って単語は、オーストラリアのスラングで吸入剤乱用の意味があるとか。
そしてもう1つ、崇められていたものがある。
そう、V8である。
ウォーボーイズが手を組んでるポーズはV8への崇拝を表している。当たり前のこと言うようで申し訳ないけど、
まぁ、真似したよね。
V8 V8 V8 V8
スプレー吹きかけるやつの余波
ちなみにこのスプレー吹きかけるやつは、とあるところに影響を与えた。
amazonである。
Wiltonというケーキのデコレーションの会社が作った “Color Mist” という商品がある。2015年の本作公開前はAmazonのページに数ページのレビューがあった。本作公開以降、このページ数が膨れ上がった。
さて、もう、言いたいことはわかるな。数々のウォーボーイズやらイモータンジョー様が現れた。
「バトル前に使うと最高です」
みたいなレビューとともに。
日本の人はこちらから買えます↓ レビューはあまりついてません。
とある説
本作を観ていてふと思ったことがある。
マックスの野生児感。
「あー」とかまともに喋らないことがある。そしてファンの中で1つの説が浮上した。
マックス = フェラルキッド 説
フェラルキッドってのはマッドマックス2で出てきた野生児。まともに言葉を喋らなくて荒々しいところがあるんだけど、マックスになついてオルゴールなんかをもらっている。
マックスへの傾倒ぶりは見て取れたし、彼がマックスっぽい行動に出たとしてもそれほど不思議でもなく破綻はない気がする。自分は完全に見逃したけど、劇中でマックスがオルゴールを持っているらしい。
で、それが2でフェラルキッドにあげたそれだと。でもコミックでは、今作のマックスは普通にメルギブソンが演じてたマックスと同一人物として描かれている。らしい。
キャスト関係のネタ
ニコラスホルト
ニュークス役のニコラスホルト。僕と彼の出会いはイギリスのティーンドラマ、「スキンズ」だった。
どハマりした。
カヤ・スコデラリオに。
あーかわいい。
メリッサ・ジャファー
当時78歳のメリッサジャファーが役を受けた理由。
「話をもらった時考えたんだよね、こんな機会はもう死ぬまでにこないんじゃないかって。だから引き受けた。いや、出られてめっちゃ良かったわぁ。」
ギタリスト iota
ギタリストが地味にいい仕事をしている。このお方、Sean Hapeという人で「IOTA」という名前で活動をしているミュージシャン。
彼のギターは132pounds(約60キロ)で、本物の炎を使っている。
ちなみに音楽関連で、日本版だけはエンドクレジットの曲が違うらしい。日本版はZebraheadとMAN WITH A MISSION の「Out of Control」。
撮影と編集関係
主演のトムハーディ、シャーリーズセロンを筆頭に、撮影中はミラー監督とはあんまりうまくいってなかったらしい。CG大量に使っていることもあってか、トムハーディなんかは、「監督は何をさせたいんだろう」ってフラストレーションが溜まってイライラしてたんだと。
作品が出来上がってようやく「ミラー監督の凄さがわかった、ごめん」って言ってた。
そんな状況の中取られた時間は470時間分。1日8時間みたとしてしてみるだけで3ヶ月近く。それを編集したのはミラー監督の奥さん、マーガレット・シックセル(Margaret Sixel)。 ベイブやらハッピーフィートやらミラー監督作の編集をやっていたりする。
彼女がミラー監督に「なんで私にやらせたの」って聞いたら、「だって男が編集したらどっかで見た他のアクション映画みたいになっちゃうだろ」って返した。結果、アカデミー編集賞を受賞。
それからミラー監督は映画のルックに関して2つの契約を結んだ。
1つは、色合いをカラフルにすること。通常、終末モノの色合いは彩度を下げて荒涼とした感じになるけど、それと差別化するために。本作では昼間と夜の色合いの寒暖差が素晴らしかったよね。
2つ目は、アートディレクションを美しくすること。アートディレクションを美しくするって何とも曖昧ではあるけども。そのかいあってか、アカデミー衣装デザイン賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。
ということで
シリーズ最高の評価をつけられた本作。とても良かったです。
ニコラスホルトが出演したカヤがかわいいドラマ、「スキンズ」、
無名時代のシャーリーズセロンがみれる「すべてをあなたに」
なんかもおすすめです。
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