ライフ・アクアティック / The Life Aquatic with Steve Zissou

 

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概要

基本情報

2004年 アメリカ
監督:ウェス・アンダーソン
キャスト:
ビル・マーレイ / スティーヴ・ズィスー
アンジェリカ・ヒューストン / エレノア・ズィスー
オーウェン・ウィルソン / ネッド・プリンプトン
ケイト・ブランシェット / ジェーン・ウィンスレット=リチャードソン
ウィレム・デフォー / クラウス・ダイムラー
ジェフ・ゴールドブラム / アリステア・ヘネシー
マイケル・ガンボン / オセアリー
ノア・テイラー / ウラディミール
セウ・ジョルジ / ペレ
シーモア・カッセル / エステバン
バッド・コート / ビル・ユーベル

解説

主演は『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイ。アカデミー女優のケイト・ブランシェットも雑誌記者の役で登場している。ブラジリアン・ソウルのカリスマ、セウ・ジョルジがポルトガル語でカバーしたデヴィッド・ボウイのヒット・ナンバーも見逃せない。

あらすじ

世界的に有名な海洋探検家にして海洋ドキュメンタリー監督のスティーヴ・ズィスー(ビル・マーレイ)は、幻のジャガーザメに殺された仲間の仇を討つために、最後の航海へ乗り出す。

 

はじめに

ウェス・アンダーソン監督4作目。色使い、真正面・真横・左右対称カット、音楽の使い方、オフビート感、昔の映画へのオマージュ。そしていつもの人たちといつものテーマ。

今回も

ウェスアンダーソンテイストがたっぷり詰まっていて面白い

ということは、

ファンの人はぜひ観てください。引き込まれます。

嫌いな方はどちらでも良いです、たぶん寝ます。

ウェスアンダーソンをよく知らない人は、ウェスアンダーソンの違う作品を観てください。

小洒落た感じが嫌いだ、
かっこいいアクション映画が好きだ、
ビビッドカラーは目がチカチカするから嫌いだ、
現実的な物語が好きだ、
始発まであと2時間くらいだから映画でも観るか、
って人はやめた方がいい。

全体的に淡々と、だらだらと、のんびりとしていて、リアリティがない。ウェスアンダーソンの作品によく言われるけど、絵本を1ページずつめくっていくような感覚。

一応コメディとなっているけど、がっつりのコメディでは全然ない。大爆笑を最大値10としたら1くらいのコメディ感。個人的には爆笑できるものも好きだけど、こう、なんというか、むずむずというか、ニヤリというか、ふふっ、というか。そのくらいの笑いの方が好き。

受賞歴的なものを言うと 米衣装デザイナー組合賞(Costume Designers Guild Awards)現代映画部門 を受賞している。ラスベガス映画批評家協会賞(Las Vegas Film Critics Society Awards) 助演女優賞 と セントラルオハイオ映画批評家協会賞 (Central Ohio Film Critics Association Awards) アクターオブザイヤー をケイトブランシェットが受賞しているけど、99%はアビエイターのおかげだろう。。と言われている。

やっぱり元ネタとか本作のエッセンス的なものを知っていた方がより楽しめると思うので、今回も町山さんのお知恵を借りつつ、ネタバレしつつ進みます。

 

醸し出すオフビート感の要素

ド派手に決めるぜっ

って感じは全くもって皆無。のんびりとして、現実感がまるでない。でも独特な世界観がそこにはある。

1. 主演がビルマーレイ

天才マックスの世界、ザ・ロイヤル・テネンバウムズに続いての出演。相も変わらず、やる気のなさそうな感じ。表情と、動き方と、佇まいと。

あと体型。

オフビート感に必須。

2. 海洋生物がストップモーションアニメーション

海洋生物がちょこちょこと出てくる。これがストップモーションで作られてるんだけど。なんとも良い感じのファンタジーな感じ雰囲気を出してくれている。

ヘンリーセリック(Henry Selick)ってナイトメアビフォアクリスマスの監督さんが担当。「コララインとボタンの魔女」でアカデミー長編アニメ部門ノミネートされた人。

ちなみにその年の同じく長編アニメ部門にはウェスアンダーソンの「ファンタスティック Mr.FOX」がノミネートされている。

ヘンリーセリックってこの人なんだけど。。

なんというか、、The Nightmare Before Christmass な感じ。。というか1993年って。そんな昔なんだ。

制作のティムバートンと。

3. 音楽

音楽が流れるんだよ、アコギで。デビッドボウイの曲。「お?良い感じの曲」って思ってるとブラジル人のペレがギター弾いて歌ってるんだよ。いいよぉ。これがまた、まったり感を演出している。

ブラジル人のペレはブラジルの歌手セウ・ジョルジが演じる。演じるっていうか、アコギ弾きながら歌ってるところがほとんどだけど。

ちなみにデビッドボウイの息子のダンカンジョーンズは映画監督で 月に囚われた男(記事へ)とかミッション:8ミニッツとか撮っている。

4. ポップな映像

ウェスアンダーソンの真骨頂、ポップな映像。 左右対称カット、ビビッドな色使い。今回見て欲しそうなのは、だな。ベルフォンテ号。ベラフォンテ号?(belafonte)。

この船を真ん中でぶった切って断面図的に見せている。撮影のセット感まるだしなんだけど。それが良いんだよね。それが絵本感を出しているんだよね。実際、お気に入りだってウェスアンダーソンが言ってたし。

では紹介しよう。

Let me tell you about my boat” なんか英会話表現ですっごい使えそう。

ってことで、オフビート感の要素たっぷりである。

元ネタ / オマージュ

ジャック=イヴ・クストー(Jacques-Yves Cousteau)

フランスの海洋学者。この人は、調査船に乗って海の生物を研究しながら本とか記録映画にした。撮ったドキュメンタリー映画「沈黙の世界」はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞してる。

テレビ番組で「クストーの海底世界」シリーズが世界で放送されて、すっごい人気になった。少年たちが心を躍らせたんだって。(日本でも「驚異の世界・ノンフィクションアワー」って番組で紹介されたとのこと。)

どんな内容かっていうと、「冒険」だよね。たぶんだけど。クストーが海に潜って撮影するための道具、技術を開発して、次のダンジョンに挑む。みたいなね。というか雰囲気みてみてくれ。

一瞬クストーさんお出ましになったけど。みた? 赤い帽子かぶってたよね。クストー氏のトレードマーク。ズィスーも赤い帽子かぶってたよね。ファッション的なところでいくと、青いユニフォームもクストーの調査団のスタッフが着ていたものらしい。ズィスーのスタッフたちもみんな青いやつ着てたよね。

クストー

ズィスー船長たち

ドキュメンタリー映画撮ってるんだけど、ライフアクアティックも最初と最後で映画祭のシーンあるし、劇中でもずっとカメラ回してるよね。ドキュメンタリー撮ってるよね。

発明家的なところでいくと、ライフアクアティックの劇中でズィスー隊長が「クストーは無線付きのヘルメットを開発したけど」みたいなセリフを言うシーンがある。もはや名前だしちゃったね。

クストーは無線付きのヘルメットを開発したけど、俺は音楽を聞けるようにした

そう言って微妙に踊るズィスー。

もう一回一番上の予告編を見るんだ。冒頭にそのシーンがある。見るんだ!まぁ、つまり、完全にクストーを元ネタにした物語。

その他のオマージュ

8 1/2 / Otto e mezzo

はっかにぶんのいち。イタリアの巨匠「映像の魔術師」フェデリコ・フェリーニ監督の作品。マーティン・スコセッシ、ウディ・アレン、ギレルモ・デル・トロ、ライアン・ジョンソン他多数の映画監督たちにものすごい影響を与えた作品。映画監督が主人公で、療養のために温泉地へやってきて苦悩して現実逃避する話。

ライフアクアティックも映画監督が落ち込んでる話だよね。映画祭で始まり映画祭で終わる。そしてイタリアで撮影している。

死刑台のメロディ

イタリア映画つながりで(正確にはイタリア・フランス合作)「死刑台のメロディ」(1971)の主題歌「Here’s to you」を劇中に使用している。

死刑台のメロディはアメリカで起こったサッコ・ヴァンゼッティ事件を元にしたイタリア側の映画。「Here’s to you」はエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)の音楽にジョーン・バエズ(Joan Baez)が歌っている。

ちなみにメタルギアソリッド4でも使われているっぽい。

エンニオ・モリコーネといえば色んな映画音楽作っている。タランティーノの最新作「ヘイトフル・エイト」でも担当するとのこと。

バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー / the adventures of buckaroo banzai across the 8th dimension

ライフアクアティックのエンドクレジットに入るところ。映画祭終わって、ズィスー船長が歩き出すシーン。最初は船長1人だけど、どんどん人が増えていって横一列で歩く演出。

ここすっごい好き。では、バカルーのエンディングみてみようか。

一応画像も。

似てるよね。で、ポイントなのが、この映画にジェフ・ゴールドブラムが出ているということ。

昔。

最近。

 

テーマ

今回もそうです。家族、というか父親像的なね。天才マックスの世界もそう、ロイヤルテネンバウムズもそう、ダージリン急行もそう、ファンタスティックMr.フォックスもそう、最近のグランドブダペストホテルもそう。歳の離れたコンシェルジュと若いベルボーイ。

「歳の離れた」親子の(ような)関係を描く。いろんな映画監督の過去の作品を通じて、自分自身を築いていった。ウェスアンダーソンの父親の代わりになっている、らしい。

 

ということで

ぐだぐだ見るならこれは最高の映画だ。ライフアクアティックのオフビート感を楽しもう。

ウェスアンダーソンを知るには、まずはこれ、天才マックスの世界

天才マックスの世界 / Rushmore
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ストップモーション担当のヘンリーセリックならコララインとボタンの魔女

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