概要
基本情報
2005年 アメリカ
監督:アン・リー(李安 / Ang Lee)
脚本:
ラリー・マクマートリー(Larry McMurtry)
ダイアナ・オサナ(Diana Ossana)
撮影:ロドリゴ・プリエト(Rodrigo Prieto)
音楽:グスターボ・サンタオラヤ(Gustavo Santaolalla)
キャスト:
ヒース・レジャー(Heath Andrew Ledger) / イニス・デルマー
ジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal) / ジャック・ツイスト
アン・ハサウェイ(Anne Hathaway) / ラリーン・ニューサム
ミシェル・ウィリアムズ(Michelle Ingrid Williams) / アルマ・ビアーズ
ランディ・クエイド(Randy Quaid) / ジョー・アギーレ
リンダ・カーデリーニ(Linda Cardellini) / キャシー
アンナ・ファリス(Anna Faris) / ラショーン・マローン
ケイト・マーラ(Kate Mara) / アルマ・ジュニア
原作:アニー・プルー(Annie Proulx)
解説
保守的なアメリカの西部で、20年以上にも渡って男同士の愛を貫いた2人の“普遍の愛”を描く人間ドラマ。2005年のヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞したほか、数々の映画賞にノミネートされている話題作。主演はヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールが20歳から40歳までの年齢も繊細に表現した演技を見せる。監督は『グリーン・ディスティニー』のアン・リー。ブロークバックの山々を美しく映し出した映像にも注目。
あらすじ
1963年の夏。ワイオミング州のブロークバック・マウンテンでイニス(ヒース・レジャー)は羊番の仕事を始める。たまたま一緒に組んで仕事をしていたジャック(ジェイク・ギレンホール)との間に友情が芽生えるが……。
批評と受賞歴
2005年
ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・主演男優賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー:監督賞・助演男優賞 ベストシネマ選出
ロサンゼルス映画批評家協会賞:作品賞・監督賞
ヴェネツィア国際映画祭:グランプリ
フェニックス映画批評家協会賞:脚色賞・撮影賞 年間ベスト作品選出 主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞(ミシェルウィエイアムズ)
セントルイス映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞
シカゴ映画批評家協会賞:撮影賞・作曲賞
フロリダ映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞
ユタ映画批評家協会賞:作品賞・監督賞
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞
サウスイースタン映画批評家協会賞:ベストワン映画賞・監督賞・脚本賞
ラスベガス映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・主演男優賞・作曲賞
サンフランシスコ映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・主演男優賞
ゴールデン・サテライト賞:作品賞・監督賞・オリジナル主題歌賞・編集賞
ボストン映画批評家協会賞:作品賞・監督賞
モーション・ピクチャー・クラブ:ディレクターオブザイヤー、スターオブトゥモロー(ミシェルウィリアムズ)
パームスプリング映画祭:デザート・パーム貢献賞(ジェイクジレンホール)
サンタバーバラ国際映画祭:ブレークスルーパフォーマンスオブザイヤー(ヒースレジャー)
ハリウッド映画祭:ブレークスルー賞(ジェイクジレンホール)、キャスティングディレクターオブザイヤー(アヴィ・カウフマン)
アメリカン・フィルム・インスティチュート:年間ベストテン作品
アメリカ映画批評家選出賞:年間ベストテン作品
ニューヨーク映画批評家オンライン:年間ベストナイン作品
トロント国際映画祭:マスターズ部門正式上映作品
2006年
アカデミー賞:監督賞・脚色賞・作曲賞
インディペンデント・スピリット賞:最優秀作品賞・最優秀監督賞
英国アカデミー賞:作品賞・監督賞・脚色賞・助演男優賞
ロンドン映画批評家協会賞:最優秀作品賞・監督賞
ゴールデングローブ賞:作品賞・監督賞・脚本賞・オリジナル主題歌賞
PAG(全米製作者協会)賞:最優秀作品賞
放送映画批評家協会賞:作品賞・監督賞・助演女優賞(ミシェルウィリアムズ)
アカデミー賞は作品賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、撮影賞にノミネート。合計8部門。
批評
ローリングストーン誌:映画評論家ピータートラヴァース(Peter Travers)
「レジャーの壮麗な演技は、まさに演技における奇跡である」
ニューヨークタイムズ紙:音楽・映画批評家のステファンホールデン(Stephen Holden)
「レジャーの演技はマーロンブロンドやショーンペンの最良の演技に匹敵するくらい、偉大な演技である」
ダニエル・デイ=ルイス(Daniel Day-Lewis)
「ブロークバックマウンテンの彼の演技は比類なく、完璧でした」
と、まぁこんな感じで 絶賛です。これは観ないわけにはいかない。
スタッフとキャスト陣
グスターボサンタオラヤ
本作でアカデミー作曲賞を受賞。次の2006年には「バベル」でも作曲賞を受賞。他には「21グラム(21 Grams)」(2003)、「モーターサイクル・ダイアリーズ(Diarios de motocicleta)」(2004)とか。最近だと「8月の家族たち(August: Osage Country)」(2013)(記事へ)とか。
ロドリゴプリエト
本作でアカデミー撮影賞ノミネート。この人もあれだね、「21グラム(21 Grams)」(2003)、「バベル(Babel)」をやってたり、最近だと「ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)」(2013)(記事へ)。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督とよく組んでいる。この監督さんは前回のアカデミー賞、「バートマン」で作品賞受賞してたね。今年も「レヴェナント」ノミネートされてて2年連続か楽しみだね。
キャスト陣省略。
4人
ヒースレジャーとジェイクギレンホールとミシェルウィエイアムズとアンハサウェイ。
こいつら無敵だと思った。
みんな演技うまかった。4人(主にヒースレジャーとジェイクジレンホール)は映画の中で20年経ってるけど、少しだけメイクとかヒゲとかで小細工しただけ。でも歳とってるんだよなぁ、すごいよなぁ。だから省略。
強いて言うなら、この作品で共演したヒースレジャーとミシェルウィリアムズと結婚した、というくらい。あとあれ、ケイトマーラ(ジュニア役)。妹はそう、ルーニー・マーラ(Rooney Mara)。キャロルはどうなるかねぇ。
大自然と音楽
設定はワイオミング州。ワイオミング州は全米50州の中で最も人口が少ない。そして自然が豊富。癒される景色。そこに合わせてくる音楽。
最高。
複数回観れる
アン・リー監督曰く、これは「普遍の愛」の話。愛について知りたい人は観てください。1回目は。2回目以降は、細かい演出に注目。いやまぁ1回目からでもいいけどね。たぶん2回以上観た方が
「うぉーもうここからこれかよぉなんだよぉ」
「あれはそれがこういうことかよぉ」
みたいな感動が結構あるはず。自分は今の所1回しか観てないけど。。
ということで以下よりネタバレあります、ご注意を。
演出
全体的に、うまいこと演出されていると思った。自分みたいにあまり読解力がなくても、前半の細かい描写が後半に活きてきたり、各々の別々の暮らしと2人きりになった時の態度とか行動がうまく重なってね。
「ん?」って違和感のあるシーンは何かしら後々「そういうことか」ってのがついてくる。少しだけ挙げてみる。
冒頭シーンの車のミラーでイニスを観察するところ
ただ単純に警戒心で見てただけだと思ってた。でも知った後ではあの時からすでにそういう目で見てたんだろう。
手前にジャック、後ろにイニスの全裸シーン
そのシーン観た時は、
「全裸だけどハットは取らないんだ。。」
って思ってただけだけど、今考えると、その時からジャックは意識してたんだろう。だからあのシーンが必要になってくるんだろう。面白いよね。
置いてきたシャツ
超重要なやつ。冒頭の方でチラッと「シャツ置いてきちゃったわぁ」って言うくらい。でもそれが最後にあんななってるなんてな。さらに持ち帰って逆にしてるなんてな。
謎の嗚咽
2人が出会った最初のブロークバックマウンテンでの作業が終わって帰る時、イニスは道端で急に嗚咽して、崩れ落ちる。腹おさえてたから吐き気なんだろうなぁと思ったんだけど、泣き始めもしたから実はすっごい好きになっちゃったから別れが相当辛くなっちゃったのかなぁとか思ったけど、
正解は ない らしい。
原作でも「原因はわからない」って書いてあったとのこと。ゲイじゃないと思っていたから、ワンナイトラブした後も普通を装ってはいたけども、
・自分自身を抑えたい気持ちとでも抑えられない衝動
と
・あれ、俺どうしちゃったんだろうみたいな懐疑的な気持ち
と
・昔父親に見せられたゲイに対する仕打ちやら宗教観
と、他にもすんごい色んな想いががそこにあったんだろうね。
ジャックの死について
これはゲイ差別者からやられたんだと思っているけど、どうだろう。「事故」ということになってはいるみたいだけど、実際に被害に遭って殺されちゃった人を目撃しているイニスからしたら、もはやそれとしか思えないんじゃないかなぁ。
だから聞いた瞬間にあの映像が思い浮かんだんだし、事実が本当に事故だったとしても疑ってしまうだろう、イニスは。
そしてラリーンは2人の関係わかっているような。どの時点で知ったかはもう1回くらい観たいところだけど、「奥さんにばれてないの?」的な発言に対するジャックの感じと、亡くなった後のイニスからラリーンへの電話の時のラリーンの表情。夫が年に数回会う友達だけど名前聞いた時の表情とその後の発言。
「お知らせしようと思ったけど住所が分からなくて。夫は暗記してたから」
とかね。
それにラリーンの家は、まぁそれはそれは大層なお家なので夫がゲイなんて知られたらその時代やっていけないだろうし。だから「事故」ということにしたのかなぁと。他の人のレビューでは「義理父が制裁を加えたのでは」みたいに言ってた。
言われてみればそれもあるかもしれない。イニスが目撃した事件では彼の父が手を下していたわけだし、散々「ロデオ」ってバカにしてた義理の息子から怒鳴られたのをきっかけに、イライラもだいぶ溜まったんだろう。
ちなみに自分はイニスはもともとゲイじゃなかったって思ってたけど、他の人のレビューでは、「イニスはもともとゲイ疑惑があった、その予兆がみれたから父親が改めさせようとゲイを殺害したんじゃないか。」との意見があった。なるほど確かに。
現代じゃあLGBTなんて言葉もだいぶ浸透してきて、だいぶ認められてきたというか、良い悪いじゃなくて、そういうのもあるんだっていう認知度とか理解はかなり高くなってきてるよね。
繰り返すけど、この映画、アンリー監督が言ってるのはゲイがどうこうというよりは、ラブストーリー、「普遍の愛」を表現したとのこと。うん。たぶん観客がそれをうまく読み取れたから興収的にも成功したんだろう。
と、偉そうなことを言ってみる。ゲイの映画で有名なのは「ミルク(Milk)」(2008)かね。観た(はず)けどあんまり覚えてない。
妙に漂う切なさ
ちょっと悲しさもある気がしたんだよね、途中。ジャックと出会ってある1晩によって人生が狂ったイニス。
ジャックよりも家庭を大事にしたがって、どちらかというと保守的で「こうあるべき」みたいなものに則って生きたいタイプだと思ったんだけど、イニスの方が離婚をして、子供とも離れて、再婚もできずに、最後はトレーラーで暮らしている。
対してジャックは本当にイニスと暮らすことを望んでいたけど、イニスの了承を得られないから実行できなくて、でも結婚して子供もできて、裕福にもなって、やりたいことが何でもできる。イニスと一緒になる以外は。という状況。
ジャックはイニスさえいればなんだかんだで家を捨てる決断もできたんじゃないかな。お互いがお互いを想ってはいるんだけど、それは確かなんだけど、うまくいかない。すれ違っている。
この家庭の対比が余計さみしくさせている気がする。
宗教
宗教の会話も途中でちらり。
イニス:メソジスト、ジャック:ペンテコステ派
こっちがあれでそっちがこう、みたいな細かいことは知らん。でも基本的には教えをちゃんと守る派の模様。ジャックが「俺たちは地獄に堕ちる」的な発言をしてたから、昔ながらの考え寄りの教派なんだろう。
この辺の考えで面白いレビューというか解説があった。
ブロークバックマウンテンは失楽園つまりアダムとイヴの話だと。 ググればすぐ出てくると思う。一読の価値あり。
ラストシーンとラストの台詞
和訳にだいぶ文句が入っていたらしい。
英語は「 I swear 」
和訳は「永遠に一緒」
まぁ難しいよね、「I swear」なんて意味が広すぎるし、人それぞれの感覚だからなぁ。 最後のイニスは悲しさもありつつ、ちょっとスッキリした表情だったよね。娘も「愛し合っている」2人で結婚できるみたいだし。
自分はもうジャックが好きなんだって心から認めて、I swear の台詞。
うん、I swear以外、表現が見つからない。自分のことを拒絶するんじゃなくて、ありのままの自分を受け入れることが幸せにつながる。そういうことだ。そんなことも教えてくれた気がする。
とちょっと憎たらしいことも言ってみる。
ということで
なんやかんやだらだら書いちゃったけど、すごい映画でした。演出とか、演技は素晴らしいものがあった。何回も観れる映画、なかなかない。
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