概要
基本情報
1950年 アメリカ
監督:ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)
キャスト:
グロリア・スワンソン(Gloria Swanson)/ ノーマ・デズモンド
ウィリアム・ホールデン(William Holden)/ ジョー・ギリス
エリッヒ・フォン・シュトロハイム(Erich von stroheim)/ マックス
ナンシー・オルソン(Nancy Olson)/ ベティ・シェーファー
ジャック・ウェッブ(Jack Webb)/ アーティ・グリーン
フレッド・クラーク(Fred Clark)/ シェルドレイク
セシル・B・デミル(Cecil B. DeMille)/ 本人役
バスター・キートン(Buster Keaton)/ 本人役
H・B・ワーナー(H. B. Warner)/ 本人役
アンナ・Q・ニルソン(Anna Q. Nilsson)/ 本人役
ヘッダ・ホッパー(Hedda Hopper)/ 本人役
ジェイ・リビングストン(Jay Livingston)/ 本人役
レイ・エバンス(Ray Evans)/ 本人役
解説・あらすじ
豪邸で隠遁生活を送るサイレント映画時代の伝説的女優と、彼女が自身のために書いたシナリオの修正をまかされた売れない脚本家。ジゴロ気取りで邸宅での日々を過ごしていた脚本家が、仕事だけでなく私生活すら束縛される事に怒りを感じ始めた時、物語は悲劇を迎える……。ハリウッドの光と影をb・ワイルダーが見事に活写した傑作。
批評と受賞歴
・AFIアメリカ映画100年シリーズ
- 1998年 アメリカ映画ベスト100 12位
- 2007年 アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)16位
・映画至上最高の作品ベストテン(英国映画協会)
- 1992年 映画批評家が選ぶベストテン 91位
- 2012年 映画批評家が選ぶベストテン 63位
- 2012年 映画監督が選ぶベストテン 67位
・2008年 歴代最高の映画ランキング500(英エンパイア誌) 63位
・アカデミー賞(11部門ノミネート、3部門受賞)
受賞:美術監督・装置賞 白黒部門、脚本賞(チャールズ・ブラケット、ビリーワイルダー、D・M・マーシュマン・Jr)、作曲賞 ドラマ・コメディ部門(フランツ・ワックスマン)
・ゴールデングローブ賞(7部門ノミネート、4部門受賞)
受賞:作品賞 ドラマ部門、主演女優賞 ドラマ部門、監督賞、作曲賞
現実と虚構の入り混じる世界
これは本当に名作だった。絶対に観た方が良い。オープニングなんて特に観た方が良い。いろいろと予備知識を得た上でもう一回観た方が良い。これは絶対に観た方が良い。
現実と虚構の入り混じる世界。
映画の中での現実と妄想、という意味ではなくて、生きている本当の現実と映画の中の役柄がめちゃくちゃリンクしていて、その混沌としたぐっちゃぐちゃのごっちゃごちゃの世界観だけでも十分に楽しめる。
そしてラストのゾクゾク感。
たまらん。
1回は絶対に観るべき作品だと思う。1950年で古い映画ではあるけど、オープニング観て全く古臭い感じがしない。すんなり観れると思う。
ということで、今回は基本ネタバレなしで参ります。
オマージュ
マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)
デヴィッド・リンチ(David Lynch)監督作品。冒頭の交通事故が起きる通りが「マルホランドドライブ」っていう名前の通り。そこから歩いてたどり着くところが「サンセット大通り」。
ちなみにパラマウントのシーンではサンセット大通りに出てくる実際の車を置いている。それを借りるのに一番お金かかったんだって。
マルホランドドライブ(記事へ)
アメリカン・ビューティー(American Beauty)
サンセット大通りのオープニングでは死体がナレーションで説明をする。これがアメリカンビューティーに使われているとのこと。見てないから知らない。
アーティスト(The Artist)
どんな状況でも忠実に仕える運転手、的な部分がオマージュとして捧げられているとのこと。アーティストにそんな人いたっけ?ピンとこない。。
ブラックジャック
手塚治虫氏のブラックジャックの中に「忘れられた大女優マリリン・スワンソン」が登場。
麗猫伝説
日本の映像史を最先端で切り開いた大林宣彦監督の作品。ストーリーと人物配置はほぼそのままらしい。
第23回アカデミー賞
作品賞とったのはジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の「イヴの総て(All About Eve)」。この監督のお兄ちゃんはハーマン・J・マンキーウィッツで 市民ケーン(記事へ)で脚本賞とった人だね。
で、面白いのが、イヴの総ての話の内容。
イヴの総て:ブロードウェイの裏側を描く。
サンセット大通り:ハリウッドの裏側を描く。
イヴの総ては14部門ノミネート、6部門受賞。
サンセット大通りは11部門ノミネート、3部門受賞。
奇しくも裏側を描く映画対決となる。そしてハリウッドのアカデミー賞が下した決断は、「イヴの総て」だった。イヴの総ても、すんごい面白いらしいね。これを元ネタに「Wの悲劇」って日本ドラマが作られて、Wの悲劇を元ネタに「あまちゃん」が作られた。
混沌
出演者の現実世界のキャラクター、実名での出演、その辺をうまーく組み合わせることによって、もう現実と映画がごちゃごちゃとした世界になっている。
「落ちぶれた往年の大女優」ノーマ・デズモンド役
だいぶオファーをお断りされたらしい。役柄的にやっぱりあまり良い物ではないからね。だいぶ苦労をしたらしい。
グレタ・ガルボ(Greta Garbo):
サイレント映画、トーキー初期の伝説的スター。すでに引退。
メイ・ウエスト(Mae West)
メアリー・ピックフォード(Mary Pickford):
チャップリンとかとユナイテッド・アーティスト社を設立。
ポーラ・ネグリ(Pola Negri)
といった大女優に声をかけるも断られる。
名前のノーマ・デズモンドっていうのも、元ネタがあって、2人の名前をとってきてたはず。
セシル・B・デミル監督(Cecil Blount DeMille)本人役
実際にノーマデズモンド役のグロリアスワンソンとサイレント映画で大成功した。
バスター・キートン(Buster Keaton)本人役
サイレント映画時代に名を馳せたキートン山田の芸名の由来になった人でもある。この人も実名でブリッジをするシーンで出ている。
画像検索したら栗原類が出てきた。これは確かに似ているかもしれない。佇まいが特に。
バスターキートン
栗原類
他にも実名、本人役で出演している人が何人かいる。
こんな感じで現実世界とかなり深く絡み合ってすごい状況になっている。それがまた面白さを増している要因なのかと。そのあたりもチェックするとより楽しめるかと。
逸話 fxxk you !
ビリーワイルダー大先生のお言葉を紹介。
「サンセット大通り」の試写をした時にMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の支配者 ルイス・B・メイヤーが怒った。ハリウッドの裏側を暴いちゃったから。
ルイス・B・メイヤー:
“You have disgraced the industry that made and fed you! You should be tarred and feathered and run out of Hollywood!”
(大体の訳):
「お前を育てたこの映画産業を侮辱しやがって。ハリウッドから追放してやる」
これに対するビリーワイルダーの返答:
“I am Mr.Wilder, and go fuck yourself!”
かっこいい。もはや落ち目だったとは言え、時の権威者に面と向かってこんなハッキリと物申せるとは。ちなみにメイヤー氏の言葉の中に「tarred and feathered」ってあるけど、こういう熟語というか、言い回しがあるらしい。
“tar and feather” は「タールを塗って鳥の羽をつける」意味がわからないよね。中世ヨーロッパとアメリカとかの植民地で行われていた刑罰とのこと。ここから転じて「〜を厳しく非難する」って意味として使われている。
今日の英語教室おわり。
製作陣とキャスト
グロリアスワンソン
サイレント映画時代に活躍し、トーキーの時代になってから姿を消した演者たちがいる。その中の1人。大女優グロリアスワンソン。映画内で彼女の役ノーマデズモンドも言っていた通り、 彼女がいなければパラマウントは本当になかったかもしれない。 それだけの功績を残した人物である。とか知ったかぶってみる。
1931年の映画に出た以降は姿を消し、1950年の本作、サンセット大通りでアカデミー賞ノミネート。週に100万ドル稼ぎ100万ドル使うスターであり、6回の結婚。結婚はしなかったけど、ケネディ大統領の父、ジョセフ・P・ケネディとは不倫の仲。
劇中、ホームシアターで映画を観るシーンがある。そこに映しているのは「クイーン・ケリー(Queen Kelly)」。エリッヒフォンシュトロハイムが監督したけど金と時間がかかりすぎて頓挫した伝説の未完の映画。復元したDVDが出ているので興味がある方はどうぞ。
ウィリアムホールデン
サンセット大通りでアカデミー賞にノミネートされるとそこから怒涛のごとくスターの階段を駆け上る。ビリーワイルダーの作品でアカデミー賞受賞。デヴィッド・リーン、キャロル・リード、ジョン・フォードなど現在巨匠と呼ばれる監督の作品に立て続けに出演。
アメリカンニューシネマ以降もサム・ペキンパー、クリント・イーストウッド、シドニー・ルメットなどの監督作品に出演。とにかく名作と呼ばれる作品にめちゃめちゃ出ている。
エリッヒフォンシュトロハイム
異才、偉才、そして異彩。
ジョジョに出てくるシュトロハイムの元ネタになった人。
個人的にはベン・キングスレーに似ていると思う。立ち振る舞いがシャッターアイランド(記事へ)の時のベンキングスレーと似てる。いや待てよ、海老蔵かもしれない。・・早まるなそれはない。。誰だ、誰かに似ている気がする。
あ、アビディかな?シリルアビディ。
エリッヒフォンシュトロハイム
ベンキングスレー
シリルアビディ
あれだな、ごめんなさいとしか言いようがない。毎度のごとく。似ているシリーズで一本記事書けそうな気がしてきた。
話がそれたけど、このエリッヒフォンシュトロハイムは本当に変わった人で、D・W・グリフィス、セシル・B・デミルと並んで称えられている。ビリーワイルダーと同じくオーストリア=ハンガリー帝国出身のユダヤ系で昔は貧しかったんだけど、貴族ぶるためのブラフとして「von(フォン)」を名前に使った。
完全主義者で映画の細部にとことんこだわった。例えば、
セリフを読ませてリハーサルをとことん行う(サイレント映画だから音はない)。
役者の下着を指定(映画には出ない)。
アパートの住人役として、本当に2〜3ヶ月役者に住まわせる(もちろん映画には使われない) 。
とか、とにかく徹底していた。「本物」にこだわりすぎて、金はかかるわ、時間はかかるわ、上映時間は10時間くらいになるわで
こいつ、やりづらいわ
って周りに思われてしまって監督生命を絶たれる。悲しい映画監督である。
ということで
サンセット大通り。 何回も観て楽しんでください。
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