概要
基本情報
1995年 アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)
脚本:
ニコラス・ピレッジ(Nicholas Pileggi)
マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)
キャスト:
ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)/ サム・”エース”・ロススティーン
シャロン・ストーン(Sharon Stone)/ ジンジャー・マッケンナ
ジョー・ペシ(Joe Pesci)/ ニコラス・”ニッキー”・サントロ
ジェームズ・ウッズ(James Woods)/ レスター・ダイアモンド
フランク・ヴィンセント(Frank Vincent)/ フランク・マリーノ
ドン・リックルズ(Don Rickles)/ ビリー・シャーバート
L・Q・ジョーンズ(L. Q. Jones)/ パット・ウェッブ
ケヴィン・ポラック(Kevin Pollak)/ フィリップ・グリーン
アラン・キング(Alan King)/ アンディ・ストーン
パスクァーレ・カヤーノ(Pasquale Cajano)/ リモ・ガッジ
ジョン・ブルーム(John Bloom)/ ドナルド・”ドン”・ウォード
ディック・スマザーズ(Dick Smothers)/ ハリソン・ロバーツ上院議員
フィリップ・スリアーノ(Philip Suriano)/ ドミニク・サントロ
ビル・アリソン(Bill Allison)/ ジョン・ナンス
ヴィニー・ヴェラ(Vinny Vella)/ アーティ・ピスカーノ
ノブ・マツヒサ / K・K・イチカワ
解説・あらすじ
賭博の才を買われてヴェガスのカジノの経営をまかされる事になるサム・ロススティーン。カジノは売り上げを伸ばし、バックについている組織への上納金も増えていく。美しい女ハスラー、ジンジャーを見初めたサムは彼女と結婚し、生活は順風満帆のように見えた。しかしサムの長年の盟友ニッキーがヴェガスに乗り込んで来た事から事態は急変する。暴力的で破壊衝動の強いニッキーは次々とトラブルを引き起こし、それはカジノの経営にも少なからず影響を及ぼしはじめていた……。
批評と受賞歴
Another 3 wins & 9 nominations
受賞
ゴールデングローブ賞:主演女優賞(シャロン・ストーン)
ノミネート
アカデミー賞:主演女優賞(シャロン・ストーン)
ゴールデングローブ賞:監督賞(マーティン・スコセッシ)
批評
- Rotten Tomatoes:80 % 7.2 / 10
- Roger Ebert:4 / 4
- Metascore:73
- IMDb:8.2 / 10
欲望と信頼
ミーンストリート、タクシードライバー、ニューヨークニューヨーク、レイジングブル、キングオブコメディ、グッドフェローズ、ケープフェアー、に続くスコセッシとデニーロの8作目。
1990年のグッドフェローズで成功して、スコセッシとデニーロ、そしてジョーペシと原作・脚本のニコラスピレッジの組み合わせで作られたのが本作カジノ。製作陣も似ていれば、内容も同様に実話に基づくマフィア関係の物語、という似たようなもの。マフィア映画の帝王がもう一度挑むことにしたと。
公開当時から評価はされたけど、良くも悪くも、どうしてもそのグッドフェローズと比べられてしまう。でも、そんな期待感マックスの中、3時間にも及ぶ作品で飽きさせずにこれだけ評価されるのはやはりすごい。
シャロンストーンがゴールデングローブ賞授賞、アカデミー賞ノミネートされたけど、あの、強烈なキャラを演じきったのは素晴らしい。そしてジョーペシのあのキレたら何しだすか分からない狂犬の立ち位置もグッドフェローズから変わらず見ることができる。
欲望が渦巻く60、70年代のラスベガス。お金が欲しい、薬が欲しい、女が欲しい、権力が欲しい。そのためには手段を選ばない。誰かが自分のものを狙っているかもしれない、そんな中で、誰を信じて、誰と行動するのか、そして迎えた結末は。
元になった実話周りとラスベガスの歴史含めた予備知識と軽いネタバレありで参ります。
原作とモデルになった人たちとホテル
上記の通り、本作の原作者であり脚本も担当したニコラスピレッジという人がいる。彼はグッドフェローズでも原作を書き、脚本も手がけている。本作カジノの原作となったノンフィクション本と、モチーフにしている実在の人物、事件をご紹介。
Casino: Love and Honor in Las Vegas
ニコラス・ピレッジ なのか、ニコラス・ピレジー なのかは分からない。本作カジノの原作となったのが、” Casino: Love and Honor in Las Vegas ” 。
フランク・ローレンス・”レフティ”・ローゼンタール
サムのモデルになったFrank Lawrence “Lefty” Rosenthal 。劇中でも出てきた彼のショー。フランクシナトラと。
実際のスターダストのshowの様子もyoutubeに上がってた。
カジノを撮る上で取材を申し込んだ際は断られたらしいけど、演じるのがデニーロになって再度申し込んだらあっさりOKをもらえたとのこと。本人曰く、デニーロが演じたキャラについて、「結構似ているけど、7割くらいかな。」と言った発言をしている模様。
本人は事件後ラスベガスを追放されてその後転々として最終的にはマイアミビーチにいた。オフィシャルサイトもあるようで、スポーツ賭博関係のサイトを運営していたらしい。まだ見れた。
アンソニー・スピロトロ
ニッキーのモデルとなったAnthony John Spilotro。ニックネームは ” Tony The Ant” 。演じたジョーペシと体格が似ていたらしい。
劇中で描かれたように、トウモロコシ畑で金属バットで散々叩かれた後に生き埋めにされたと言われている。見つかった時のニュース映像がこれっぽい。
ジェラルディン・マギー
ジンジャーのモデルとなったGeraldine “Geri” McGee。
劇中でも描かれたように、フランクローゼンタールは彼女に家にいて子供を見ていて欲しかったようだけど、それが嫌だったようで、夜遊びをしたり、アルコール中毒になったり、アンソニースピロトロとそういう関係になったりしたらしい。
フランクローゼンタールと結婚したけど、離婚。その割とすぐ後にフランクローゼンタールの車爆破事故があり、さらにその割とすぐ後、薬物の過剰摂取で亡くなっている。1つの説として、というか彼女の姉は爆破事件の報復として殺された、と主張をしたとのこと。
ジンジャーのことを調べていたら “gold digger” という単語がチラチラ目に入った。知らなかったから何だろうって思って調べたら、「お金持ち狙いの人」「玉の輿狙いの女」「お金目当てで結婚する女」といった意味だった。
gold diggerだね。
フランク・カロッタ
フランクヴィンセントが演じるフランクマリーノ、のモデルとなったFrank Cullotta。
アンソニースピロトロの昔からの友達で、アンソニースピロトロのことなんかを本に書いていたり、本作カジノを製作する際にアドバイザーとなったりもしている。おそらくそのこともあって、作品の詳細部分のリアル感が出たんだと思う。
“Hole in the Wall Gang” として知られる強盗団のリーダーでもあった。Hole in the Wall Gang ってのは、盗みに入る時にドリルで外壁に穴を開けるかららしい。劇中でもちょっと描かれていた(ような気がする)。
ジョゼフ・アイウッパ
シカゴ・アウトフィットというマフィア組織のボスだったJoseph John Aiuppa。劇中では、ニッキーのボス、リモ・ガッジとして描かれた。
柏木昭男
劇中一瞬登場したK・K・イチカワ。サムからは厄介な人物として見られていたけど、そのモデルとなったのが山梨県の不動産業兼貸金業『柏木商事』の社長だった人物。アメリカ大統領になったトランプとも接点があった模様。ググれば出てきます。
K・K・イチカワを演じたのは料理人のノブ・マツヒサこと松久信幸さん。アメリカのお店の常連だったロバートデニーロと共同経営で別の店を出したりしている。
スターダスト
サムが取り仕切るカジノ、タンジール。現実の世界では、フランクローゼンタールが指揮を取っていたスターダストがモチーフ。それを示唆するように、劇中、バージョン違いで “Stardust” という曲がかかる。
タイトルシークエンス
本作は、冒頭から車の爆破シーンでちょっとびっくりしたんだけど、その爆発から繋ぐ感じでタイトルシークエンススタート。炎に包まれているかと思いきや、ラスベガスのネオンの感じに変わっていったりして、面白いなー、って思ってたところで名前が出てきた。
Elaine & Saul Bass
なるほど、ソールバスだった。ちなみに本作カジノが彼が関わった最後の映画になったとのこと。
70年代のラスベガス
本作の前半戦は、サムが管理者に抜擢されるまでも描いていて、テンポよく、サラサラっと、の割に意外と長めに説明してくれている。サラサラすぎて、あんまり真剣に見てなかった人(私)のために補足。
ラスベガスと聞いてイメージされるのは、やっぱり夢の国のような場所。意外と歴史は浅く、カジノが合法化されたのは1931年。まだまだホテルなんかはなく砂漠状態だった模様。そこにギャンブル好きが集まるようになる。
1940年代に入ると、商才もあった大物マフィアのマイヤーランスキーがラスベガスへの投資に乗り出してバグジーことベンジャミンシーゲルを送り込む。その結果完成したのが、バグジーが亡くなった後に大成功を収めるフラミンゴホテル。” フラミンゴ ” はバグジーの愛人のヴァージニアヒルのニックネームが由来という説もある。
これは儲かるということでマフィアがこぞって操っていたけども、それに歯止めをかけたのがハワードヒューズと言われている。1960年代には彼の強迫性障害はかなり進行していたようで、ホテルに篭っていた。篭りすぎてホテルから良い加減出ろと言われたから、ホテルを買収した。
ハワードヒューズに関しての映画「アビエイター」はこちらで書いてます。
そのハワードヒューズはマフィア嫌いだったからか、政府に介入して、1969年にカジノライセンス法を改正。これによって大手企業が参入してくるようになった。マフィアはカジノから撤退をすることにした。
でも完全に撤退をしたわけではなく、見せかけの社長に見せかけのライセンス、そして裏で金をかすめたりをしていたと。その実態が本作で描かれていると。車爆破事件の前後どっちかは分からないけど、より一層ホテル・カジノの会計監査基準が厳しくなって、マフィアはようやく完全に撤退した、と言われている。
見えてくるもの
本作、カジノを通して見えてくるもの。実話を元にしてラスベガスの「カジノ」についての話ではあるけど、胴元とプレイヤーのハラハラドキドキエンターテイメント系の映画というよりは、もっと人の嫌な部分を見せられることになる。
前半は結構調子乗って見ていたのに物語が進むうちに、哀れでもあり、怒りもあり、なんだかモヤモヤする気分になった。決して後味の良い作品ではない。
愛と友情、それは信頼によって築かれて、お金によって見せかけのものだけは買えるけど、本物のそれは買えない。そして欲望。良い方向に作用することもあるけど、度が過ぎると全てを崩壊させる。
欲望によって信頼が揺らいで、最終的にサムとニッキーとジンジャーは一気に崩壊した。
その哀れさというか、不憫さというか、心地悪さというか、それを加速させるのは、実はサムの元々の性格もある。
ギャンブラーとして、徹底的に調べつくして、プレイヤーとしても、胴元としても、勝ち続けていたサム。にも関わらず、ジンジャーに関しては、ほぼ一目惚れで、一点買いの一点張りの地獄待ち。
それまで冷静に判断をしてきた彼が、(嫌な言い方だけど)本来なら不安要素が見えた時点で捨てるべきだったのに、捨て切れなかったニッキーとジンジャー。その辺のやり切れなさが、心をえぐる。
ということで
カジノでした。
本作が好きなら、グッドフェローズ、
fuckが使われた回数をさらに上回ったウルフオブウォールストリート、
男の友情物語ならヒート、
もういっちょ男のマフィア系友情物語ならフェイク
なんかもオススメです。
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