概要
基本情報
2010年 イギリス・フランス
監督:シルヴァン・ショメ(Sylvain Chomet)
原作:ジャック・タチ(Jacques Tati)
解説
『ぼくの伯父さん』シリーズで名をはせたジャック・タチが娘のために書いた幻の脚本を基に、長編デビュー作『ベルヴィル・ランデブー』で独特のセンスを発揮したシルヴァン・ショメが映画化したアニメーション。昔ながらの手品を披露する老人が純粋な少女と出会い、言葉が通じないながらも心を通わせる姿を温かく描く。1950年代のスコットランドを映像化したノスタルジックな情景が美しく、不器用な老手品師の姿やシーンの中にタチへのオマージュがささげられて いる。
あらすじ
1950年代のパリ。場末の劇場やバーで手品を披露していた老手品師のタチシェフは、スコットランドの離島にやって来る。この辺ぴな田舎ではタチシェフの芸もまだまだ歓迎され、バーで出会った少女アリスはタチシェフを“魔法使い”だと信じるように。そして島を離れるタチシェフについてきたアリスに、彼もまた生き別れた娘の面影を見るようになり……。
批評と受賞歴
ノミネート
アニー賞:長編アニメ映画賞(シルヴァン・ショメ)、アニメ映画・キャラクターデザイン賞(シルヴァン・ショメ)、アニメ映画監督賞(シルヴァン・ショメ)、アニメ映画音楽賞(シルヴァン・ショメ)、アニメ映画脚本賞(シルヴァン・ショメ)
アカデミー賞:長編アニメ映画賞(シルヴァン・ショメ)
英国インディペンデント映画賞:技術貢献賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞:アニメ映画賞
ゴールデングローブ賞:アニメ映画賞
放送映画批評家協会賞:アニメ映画賞
サテライト賞:アニメ映画賞
サンディエゴ映画批評家協会賞:アニメ映画賞
ラスベガス映画批評家協会賞:アニメ映画賞
受賞
ニューヨーク映画批評家協会賞:アニメ映画賞
ヨーロッパ映画賞:アニメ映画賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:スポットライト賞
正直に申し上げまして
正直に申し上げますと、 これは観た方が良い。
アニメならではの動きとその見せ方と魅せ方。ノスタルジックな世界観。本当に素晴らしかった。
第83回アカデミーではノミネートされたけどとれなかったけど、しょうがない。長編アニメ映画賞を受賞したのは「トイ・ストーリー3」。相手が悪かったとしか言えない。
ぶっちゃけ、話の内容なんてどうだって良い。セリフだってほとんどないし。というかストーリーなんて
ロリコンじじぃと超絶自己中なわがまま娘の何日間。
というか上記のあらすじが全てです。「生き別れた娘の面影を見るようになり……。」って何かある風に書いてはいるけど、何にもないから。内容がないというより、普通のお話をご用意しております、くらいの感覚。
なんでネタバレがあろうがなかろうが関係ないので適当に参ります。
世界観と見せ方
ノスタルジック感
ノスタルジックというか退廃的というか。移ろいゆく時代な感じというか。全体的にはそんなニュアンスがすごく強い。
主人公のタチシェフさんは人気下火の手品師だし、周りの芸人たちも同様に。そしてアリスも同様に。腹話術の人なんてもう。で、やっぱりラスト。最後のイリュージョンは 自分が消えること。こういうことだ。
今まで自分を魔法使いだと信じていたアリスだけど、イリュージョン(自分)を必要としなくなってしまったと。最後に去っていく姿が切なく、なんというノスタルジック感。
絵の作りとセリフ
本作では定点カメラの引いた視点が多いんだけど、これもジャックタチの作品でよく使われていた技法らしい。そして本作にはセリフなんてほとんどない。字幕もたまについてはいるけど、なくても分かる。
サイレント映画時代は動きとか表情で役者は語っていたけど、生身の人間ではできない動き(そんなに常軌は逸してない)とかもそうだし、煙とか、風で羽が舞うところとか、本がペラペラするところとか、
素晴らしい。
フランスのアニメ
全然関係ないんだけどさ。フランスのアニメということでね。すごい面白いよね。オギー&コックローチ(Oggy and the Cockroaches / Oggy et les Cafards)
監督と原作者
監督はあのシルヴァン・ショメと原作者はなんと、ジャック・タチ。
と言っても知らない人もいるかもしれないね。
僕も初めて知りました。
ということで自分のためにどんな人かざっくり調査。
監督:シルヴァン・ショメとバンド・デシネ
いかにもフランス人らしい名前のシルヴァン・ショメ監督。「老婦人とハト」で初のアニメーション映画作成、いくつかの賞を受賞。2作目「ベルヴィル・ランデブー」でアカデミー長編アニメ賞にノミネート。ちなみにこの年に長編アニメ賞をとったのは「ファインディング・ニモ」。
3作目はオムニバス映画の「パリ・ジュテーム」の1本。そして4作目が本作「イリュージョニスト」。といった感じでアニメーション映画が比較的多いわけだけど、パリ・ジュテームでは実写でも監督をしている。短いけど。
映像系の他にもバンド・デシネの作話なんかもやったりしている。
バンド・デシネって言っても知らない人もいるかもしれないね。
僕は初めて知りました。
バンド・デシネって、フランス語圏での漫画文化で、 日本の漫画家さんにもすごく影響を与えていたりする。
有名な作品としては「タンタンの冒険」「スマーフ物語」「ペルセポリス」とか。どれも映画になっちゃってる。 あと作家さんでは メビウス(Moebius)っていうペンネームのジャン・ジロー(Jean Giraud)という人が有名。
大友克洋、宮崎駿、谷口ジローに影響を与えていて、逆も然り、大友さんの「AKIRA」が世に出る前から大友さんの漫画に影響を受けていたり、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」にちなんで、自身の娘に「Nausicaä」って名付けたりしていたり、共同展示会「MIYAZAKI / MOEBIUS」を開催していたりする、とのこと。
映画関連ではエイリアンとかトロンとかフィフスエレメントとかのコンセプトデザイン、コスチュームデザインなんかやっていたりする、とのこと。
ジャック・タチ
本名はジャックタチシェフ(Jacques Tatischeff)。今回のタチシェフ氏は彼自身を投影している。だから、ジャックタチのファンだったら、本作のタチシェフ氏の立ち振る舞いとかジャックタチにすごく似せて作っているからそれだけで感動ものらしい。
ジャックタチが評価されたのは没後だけど、トリュフォーやらオーソンウェルズやらは昔っから絶賛していた模様。さすが偉大な監督は見る目が違う。
「僕の叔父さん」って作品が評価されて、その主人公、「ユロ氏」っていうキャラクターはミスタービーンに影響を与えているとのこと。
映画ラストのメッセージ
「ソフィー・タチシェフに捧ぐ」
ジャックタチが娘のために書いたと言われる脚本、”FILM TATI No.4″ 。これを娘のソフィー・タチシェフが見つけて、作品の世界観が似ているシルヴァン・ショメ監督に託したと。シルヴァン・ショメ監督もジャックタチの大ファンだからもちろん引き受けたと。そんな感じ。
No.4だからね、実はジャックタチの4作目のプレイタイムの前に、この脚本を元に映画を撮る予定だったらしい。
でも、
本当にソフィータチシェフに向けての作品なのか
が疑問視されている。
実はジャックタチシェフ氏、1942年にHerta Schielという女性との間に Helga Marie-Jeanne Schiel という娘ができている。でも認知しなかった。
だから、一緒に過ごしてきたソフィータチシェフさんじゃなくて、このHelga Marie-Jeanne Schielさん(読み方が分からない)へ向けた作品じゃないかと言われているらしい。
真相は知らない。
ということで
イリュージョニスト、一度は観ておいて損はない。
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