イカとクジラ / The Squid and the Whale

 

The Squid and the Whale Trailer (2005)
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概要

基本情報

2005年 アメリカ
監督:ノア・バームバック
製作:ウェス・アンダーソン
キャスト:
ジェフ・ダニエルズ / バーナード・バークマン
ローラ・リニー / ジョーン・バークマン
ジェシー・アイゼンバーグ / ウォルト・バークマン
オーウェン・クライン / フランク・バークマン
ウィリアム・ボールドウィン / アイヴァン
アンナ・パキン / リリー
ケン・レオン / セラピスト

解説

アカデミー賞で脚本賞にノミネートされたほか、各映画賞を席巻したヒューマンドラマ。作家同士の両親の離婚を機に、父と母の家を往復する生活を余儀なくされる兄弟の心情をつづる。監督は『ライフ・アクアティック』の脚本家ノア・バームバック。出演は『グッドナイト&グッドラック』のジェフ・ダニエルズ、『ミスティック・リバー』のローラ・リニーら。シリアスな状況を独特のユーモアでくるんだ監督の語り口と、実力派キャストによる繊細(せんさい)な名演が見どころ。

あらすじ

かつては人気作家だったが今は落ち目のバーナード(ジェフ・ダニエルズ)と新進気鋭の作家ジョアン(ローラ・リニー)の夫婦、は離婚を決意した。そのため、2人の子どもで、16歳のウォルト(ジェス・アイゼンバーグ)と12歳のフランク(オーウェン・クライン)は、父親と母親の家を行き来するややこしい生活を余儀なくされる。

 

イカとクジラ

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要するに、これの話です。って言うと優しくないのでもう少し説明すると、監督のノアバームバックの自叙伝的な話。

ノアバームバックはブルックリン出身で父は作家、母は映画評論家。その両親が離婚しちゃったんだよね。子供の頃に行ったニューヨークのアメリカ自然史博物館でみた「ダイオウイカ VS マッコウクジラ」。すっごい怖くて見てらんなかったんだって。

この子供との頃の体験をつなぎ合わせて作った映画がこれ。ダイオウイカが父でマッコウクジラが母。ダイオウイカが母でマッコウクジラが父。いやまぁどっちでも良いんだけど。要は 父と母が戦ってる んですね、それを見てる子供たちもそんな環境だとね、ぐれますわ。そんな家族を描いた映画。なかなか興味深い作品である。

 

監督と製作

監督はノア・バームバック。製作はウェス・アンダーソン。

2人はライフ・アクアティック(記事へ)の時、一緒に仕事してて、共同で脚本を手がけている。

 

批評と受賞歴

Rotten Tomatoes:93%
Roger Ebert:3.5 / 4

アカデミー賞:脚本賞ノミネート
サンダンス映画祭:監督賞、脚本賞受賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞:脚本賞受賞
ニューヨーク映画批評家協会賞:脚本賞受賞
トロント映画批評家協会賞:脚本賞、女優賞受賞
サテライト賞:助演女優賞受賞
オースティン映画批評家協会賞:助演女優賞受賞

他にもインディペンデントスピリット賞、ゴールデングローブ賞とか色々とノミネートされている。 さて、イカ、ネタバレありますご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

問題だらけの家族

売れない小説家の父バーナード

浮気をするヒステリックな母ジョーン

知ったかぶりのパクリ歌手高校生の兄ウォルト

図書館でマスターベーションしちゃうアル中の弟フランク

もうね、どうしようもない家族なんですわ。みんながみんな問題を抱えてる。実際何の悩みも問題もない家族なんて珍しいのかもしれない。知らないだけで。

そんな中で、必死に生きて行くところに心が動かされるんだよね。離婚してバラバラになってしまったかもしれないけど、それまでの結婚生活、夫婦生活、家族生活が失敗だったかって考えると、多分違うと思う。人はどんどん変わって成長していくものだから。

何が正解かなんてわからないけど、その時その時を一生懸命考えて行動して生きて行くことが 大事なのかなぁと思う。そんなことをね、考えさせられる映画だと思います。

 

パパサイド vs ママサイド

もう少し家族を掘り下げる。

父バーナード

小説が売れないから金がない。だから息子の彼女にも代金払ってもらったりしてる。偉そうで、やる気もなくて、自己中で。結構最悪なんですよ。全然罪悪感も何も感じてなさそうだしね。

フランクには自分で薬買わせるしなんか本気で卓球するし。つまり自分のことが全く見えてない。そんな父。

母ジョーン

浮気をした。だからそれがきっかけで離婚をした。一応浮気が上辺の原因とはなってるけど、そもそも浮気しちゃった原因もあるしね。一概に何のせいで離婚になったかは言えないけど。

でもこの母は他の男とも寝てるしね。愛に飢えていたんだろうね。あと、自分の可能性を信じることにしたんだと思う。バーナードの意見はなんとなく聞くだけ。そこにまた父はイライラしてしまって負のスパイラルに入る。

ウォルトのことをチキン(chicken)、 フランクのことをピクル(pickle)って呼んでたよね。チキンは弱虫、ピクルは困った子とかそんな意味合いを込めて。

どちらの味方か

この父と母の、子供たちはどちらの味方なのかと。 冒頭のテニスのシーン。

バーナード&ウォルト  VS ジョーン&フランク

冒頭からこれだからね。色々と対比しているところがあったけど、大枠はこの構図で良いんだと思う。ウォルトはよく父を庇うし、フランクはよく母を頼る。そんな構図ではあるけど、兄弟は離れない。

 

逃げ出すか戦うか、受け止めるか突き放すか

ウォルトのピンクフロイドの曲パクリが発覚してセラピストと話している時の話。子供の頃の思い出を聞かれたウォルトは、父ではなく母との思い出を話した。ロビン・フッドの映画、イカとクジラ。

パパサイドについていたウォルトだったけど、思い出は母とのもの 。母は自分の過ちに気付いて謝っているのに対して、父は自己防衛の言葉、辛いとか傷ついたとか最後まで自分中心であんまり言葉に真実味がない、というか本心な感じがしない。

だから母とは通じ合える可能性がある。最後に病院で枕がないって言ってた父だけど、部屋を出たウォルトが看護婦さんに言ったのは

「その部屋の患者に枕を」

「父」ではなく「患者」と呼ぶところが自分を見つめ直して、巣立ちというか父親離れをした瞬間。最後、ウォルトは走り出してある種トラウマだった「イカとクジラ」を見に行く。立ち向かって、向き合うことを決意したんだろうね。

 

小ネタ

ピンクフロイドの「hey you」

本当は違う曲だったけど、許可が下りなかったらしい。

Pink Floyd-Hey You {Music Video}

ユスターシュの「ママと娼婦」

本当は違うポスターだったけど、許可が下りなかったらしい。

Noah and the Whale

イギリスのロックバンド(フォークバンド?)のNoah and the Whale はこの映画のタイトルと監督の名前をとったとかとってないとか。真相は知らない。

Noah and the Whale - 5 Years Time - Official
Watch the vid to Noah and the Whale's single '5 Years Time'...enjoy!Official Site: Facebook:

結構好き。

 

キャスト

ジェフ・ダニエルズ(Jeff Daniels)

最近ニュースで出た「ジム・キャリーはMr.ダマー」が出世作?

観たい。。

観ました、ジムキャリーはMrダマー(記事へ)

ローラ・リニー(Laura Linney)

前回の マイ・ライフ、マイ・ファミリー(記事へ)に出てたね。安定して残念な役柄を演じている。そして上手い。そしてジム・キャリーの「トゥルーマン・ショー」で注目される。

父と母はジムキャリーに助けられたようである。

ジェシー・アイゼンバーグ(Jesse Eisenberg)

オーディション9回もやったんだって。決まってから「この役は僕自身だ」ってことを言ってたんだって。監督から、「将来監督になれる」って一押しされてた。何と言ってもソーシャルネットワークでしょう。観てない人はぜひ観てください。

オーウェン・クライン(Owen Kline)

ケヴィン・クライン(Kevin Kline)フィービー・ケイツ(Phoebe Cates)の子供。ノアバームバック監督が元奥さんのジェニファー・ジェイソン・リー(Jennifer Jason Leigh)に、子役はどんな子が良いかなぁって相談した時に「オーウェンみたいな子が良いわ」って言ったらしい。

監督を務めた「アニバーサリーの夜に」にも出てたし。ジェニファージェイソンリーとフィービーケイツって仲が良くて、家族ぐるみで食事とか行ったりしてんだって。そんなこんなでオーウェンに決まったと。

そして自慰行為をさせると。。

これはどうなんだろう。

ウィリアム・ボールドウィン(William Joseph Baldwin)

まぁちょこちょこと出てますわ。TVシリーズだと、「ダーティ・セクシー・マネー」とか「ゴシップガール」とか出てる。

アンナ・パキン(Anna Helen Paquin)

ピアノ・レッスン(The Piano)(1993)で映画初出演。11歳でアカデミー助演女優賞受賞。

天才か。

ちなみにグース(Fly Away Home)(1996)では主演して、ジェフダニエルズとは親子役。本作では先生と生徒で、手を出しちゃってるという始末。

ハーレイ・フェイファー(Halley Feiffer)

ソフィー役。すぐ決まったんだって。父はジュールス・フェイファー(Jules Feiffer)って人で、絵本で有名。作家もやったり、ロバートアルトマン(Robert Altman)のポパイ(Popeye)(1980)の脚本とかやったりもしている。そう、ポパイってあのポパイね。その実写版。

その娘。ノアバームバック監督の次の作品、マーゴット・ウェディング(Margot at the Wedding)にも出ている。脚本とかをメインにやっているみたいだけど。好きな方はぜひ。これから色々やってくれそう。

 

疑問

すんごいどうでも良い疑問が一つ。父が引っ越した先で、フランクに「デスクもある。」みたいなことを言う。フランクが「これ左利き用だよ」って言う。でも、フランクはテニスの時レフティだった気がするんだけど。

どういうこと?いや、ほんとにどうでも良いんだけどさ。

 

ということで

イカとクジラでした。

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