概要
基本情報
2016年 アメリカ
監督:クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)
キャスト:
トム・ハンクス(Tom Hanks)/ チェスリー・”サリー”・サレンバーガー
アーロン・エッカート(Aaron Eckhart)/ ジェフ・スカイルズ
ローラ・リニー(Laura Linney)/ ローリー・サレンバーガー
マイク・オマリー(Mike O’Malley)/ チャールズ・ポーター(国家運輸安全委員会の調査員)
ジェイミー・シェリダン(Jamey Sheridan)/ ベン・エドワーズ(国家運輸安全委員会の調査員)
アンナ・ガン(Anna Gunn)/ エリザベス・デイヴィス(国家運輸安全委員会の調査員)
ホルト・マッキャラニー(Holt McCallany)/ マイク・クリアリー(サリーの同僚)
ケイティ・クーリック(Katherine Anne “Katie” Couric)/ 本人役(インタビューするニュースキャスター)
ジェフ・コーバー(Jeff Kober)/ クック大尉(青年期のサリーの共感)
クリス・バウアー(Chris Bauer)/ ラリー・ルーニー(サリーの同僚)
ジェーン・ガバート(Jane Gabbert)/ シーラ・デイル(事故機 客室乗務員)
アン・キューザック(Ann Cusack)/ ドナ・デント(事故機 客室乗務員)
モリー・ヘイガン(Molly Hagan)/ ドリーン・ウェルシュ(事故機 客室乗務員)
ヴァレリー・マハフェイ(Valerie Mahaffey)/ ダイアン・ヒギンズ(事故機 乗客、ルシールの娘)
デルフィ・ハリントン(Delphi Harrington)/ ルシール・パルマー(事故機 乗客、ダイアンの母)
マックス・アドラー(Max Adler)/ ジミー・ステファニク(事故機 乗客、ロブの甥)
サム・ハンティントン(Sam Huntington)/ ジェフ・コロジェイ(事故機 乗客、ロブの息子)
クリストファー・カリー(Christopher Curry)/ ロブ・コロジェイ(事故機 乗客、ジェフの父)
クーパー・ソーントン(Cooper Thornton)/ ジム・ウィテカー(事故機 乗客)
オータム・リーザー(Autumn Reeser)/ 赤子を連れた乗客
ジェフリー・ノードリング(Jeffrey Richard Nordling)/ バリー・レオナルド(事故機 乗客)
パッチ・ダラー(Patch Darragh)/ パトリック・ハーテン(航空管制官)
マイケル・ラパポート(Michael Rapaport)/ ピート(バーテンダー)
ヴィンセント・ロンバーティ(Vincent Lombardi)/ 本人役(通勤フェリー船長)
解説
俳優としても監督としても著名なクリント・イーストウッド監督と、名優トム・ハンクスがタッグを組んだ人間ドラマ。2009年1月15日、突然の全エンジン停止という危機に見舞われながらも、ハドソン川に不時着して乗客全員が生還した航空機事故のてん末に迫る。『サンキュー・スモーキング』などのアーロン・エッカートらが共演。機長の手記を基に描かれる、奇跡の脱出劇の背後に隠された真実に言葉を失う。
あらすじ
2009年1月15日、真冬のニューヨークで、安全第一がモットーのベテラン操縦士サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は、いつものように操縦席へ向かう。飛行機は無事に離陸したものの、マンハッタンの上空わずか850メートルという低空地点で急にエンジンが停止してしまう。このまま墜落すれば、乗客はおろか、ニューヨーク市民にも甚大な被害が及ぶ状況で彼が下した決断は、ハドソン川への着水だった。
批評と受賞歴
批評
・Rotten Tomatoes:82% 7.1 / 10
・Metacritic:74 / 100
・Roger Ebert:3 / 4
・IMDb:7.9 / 10
・映画.com:4 / 5
・Yahoo!映画:4.3 / 5
静かな感動
出遅れ感は置いといて観に行ってきました、「ハドソン川の奇跡」。
静かな感動。
クリントイーストウッド監督は、あの時起こった事故の一連を忠実に再現した。本当に感動するものは派手に盛り上げる演出なんて全く必要ない。事実の中にこそ存在する。
あ、なんか意外とそれっぽい文章になった。
全体的に見ればすごく無機質な感じがする。ただそれはサリー機長が、、ネタバレしそうなので続きは下で書きます。が、上記のあらすじにちょっと補足。
2009年に起こった航空事故「USエアウェイズ1549便不時着水事故」に基づいて、その時何が起こっていたか、事故の後何が起こっていたか、を描いている。
※事故と言って良いのかわからないけど便宜上事故で通します。
本作の上映時間は1時間36分。でも実際に飛行機が飛びたってから着水までの時間は6分くらい。事故自体に焦点を絞ってたら冗長になってしまう。
それを何で埋めているかっていうと、事故の後、サリンバーガー機長が国家運輸安全委員会(NTSB)から事故原因を追求される過程と、検証の最後である公聴会までを描いている。事故時点とその後の機長に起こった出来事、っていうのがあらすじですと。
「ハドソン川の奇跡」ってすごくクリントイーストウッド臭のするタイトルだと個人的に思った。きっと監督がクリントイーストウッドって知っているからだけど。プラス、マディソン郡の橋に引っ張られてるんだろうと思う。
あと、さらっとあらすじを読んだとき 「フライト(Flight)」を思い出した。見てないけど。数行どうでも良いことを書いてしまったのでさっさと参ります。
ということで、以下、ネタバレあります、ご注意を。
ひとまず感想を
音楽で盛り上げてそれっぽくお涙頂戴的な演出にすがって商業的な成功を目指すだけでは面白くない。確かにビジネス目線も重要ではあるけども。
個人的に、本作は全体的に 淡々と していて、無機質 で、起伏のない 映画だと思った。でもじわじわと少しずつ 心に沁みていく ような感動がある。泣かなかったけど。
なんで淡々としている感があるかというと、サリー機長が淡々と仕事をこなしているから。サリー機長はなんで事故の中、淡々と仕事をこなせたかというと、40年もパイロットとして訓練と実践で経験を積んできたから。
だからこそバードストライクが起こってから、飛行機の状況、周りの状況を見て、約30秒というものすごく短い時間で判断をして、着水という難しいことを成功させることができた。
事故が発生した時こそサリー機長は落ち着いて、いつもの訓練通りに実行できたけど、実際、自分含め155人の命がかかっているわけで、 そこにかかるプレッシャーは半端ない。
心拍数だって数日上がりっ放しだし、飛行機がビルに突っ込む妄想が浮かんできてしまう。その辺りのサリー機長の苦悩、今までの経験、事故原因を追及される過程、事故発生時と発生後に乗客のことを心配する姿。
これを見てきた観客、というか自分は公聴会のシーンの時には すでにサリー機長の味方。
シミュレーション結果を見て高まった緊張感の後の安堵感。こんなのにやられんのかよ、って思うけど、そこにじんわりと感動がこみ上げてくる。そしてセリフ。
“これは自分一人だけの力だけではない”
でも自分が一番好きなのはエンドクレジットの本物のサリー機長が出てる映像。本当に起こった事故、映画ではそこだけ切り取ってるけど、サリー機長の判断のおかげで助かった人がいて、そこで人生を終えることなく生きている。本編には入れられないけど、事実だってことを再認識させてくれる。
ふむ。
タイトル「ハドソン川の奇跡」
邦題は「ハドソン川の奇跡」。原題は「Sully」。
原題のSullyは、主人公のサレンバーガー機長の愛称からだね。
町山さん情報によると、サリー機長はこの事故に関して、着水したことを「奇跡」って言葉を使ってほしくないし、自分のことを「英雄」って言わないでほしい、と言っていたとのこと。
「奇跡」は、ありえないこと、思いがけない力の働き。
「英雄」は、普通の人にはできないことを成し遂げる人。
※日本語での意味なので “miracle” と “hero” で若干ニュアンスが違ってくる可能性はあります。
サリー機長が言いたいのは、無事に着水できて全員が助かったのは、自分が今まで長い間訓練してきて、その訓練の成果を 普段通りに やっただけであって、この普段通りに行動ができれば、着水もできるし 普通にありえることだよ、 ってこと。
それを偶然の産物的に言われてしまうと、NTSBから言われているような「機長のミスがあったんじゃないか」ってことを認めてしまうことにもなる。まぁただ一般人から見れば
神業であり職人技
であることに間違いはない。
1人だけの力じゃない
神業であることは間違いないけど、劇中のサリー機長のセリフにもあるように、全員無事だったのはサリー機長1人だけの力ではない。副操縦士がいて、客室乗務員がいて、乗客たちも凄まじいパニックにもならず、着水後にすぐに救助にきてくれた人たちがいる。みんなが協力し合ったからこそ、全員が無事に帰ることができた。
飛行機関連の報道はアメリカはかなり神経質になっていると思うけど、明るい良いニュースになって良かった。ほんとに良かった。
Heads down Stay down
無神経で全然関係ないけど、ただ言いたかっただけです。
監督が描きたかったこと
クリントイーストウッド監督自身も着水の経験があるらしい。その着水がすごくうまかったんだって。
それはそうと、クリントイーストウッドは映画を撮るスピードがものすごく早いらしい。1,2テイクくらいでOKにしちゃうことも多いらしく、いろんなやり方でベストな状態で撮ってほしいスタンスの俳優さんとは揉めることもあったとのこと。
なんで早く撮れるかっていうと、クリントイーストウッドが長年この業界に身を置いてきたから。1950年代からユニバーサル映画と契約を結んで、それから60年以上。今(2016/10)なんて86歳だけどまだ映画撮っている。ちなみに現役最高齢の監督らしい。
クリントイーストウッドだからこそ、どの角度で、どんな演技で、どんな演出で、どんな舞台を用意すれば良いか、経験値から瞬時に判断することができる。習うより慣れろとは言ったもので、もはや体に染み込んでいるんだろうね。
そしてそんなクリントイーストウッドだからこそ、本作のサリー機長の気持ちはよくわかるし、お互いプロフェッショナルとして、 今までの経験に確かな自信と誇りを持っている。
クリントイーストウッドの思いはそのままサリー機長に乗っけることができる。
サリー機長であり、クリントイーストウッドを演じるのはトムハンクス。
記者会見でモノマネを披露。この人はほんとにサービス精神が強い。
プチ情報その1 実際に乗っていた日本人
記者会見には実際に事故にあった飛行機に乗っていた日本人の方2人も来場し、映画をご覧になられたとのこと。そして当時の機内の様子を語ってくれた。機内の様子は本当に、大きなパニックになることもなく、普通な感じだったらしい。機長が容疑者として詰められていたのはご存知なかった模様。
プチ情報その2 事故の再現率
本作では、クリントイーストウッド監督はリアルさに徹底的にこだわっている。本物のエアバスを購入、救命ボートも実際の救助に使われたものを使用、救助に携わった救助隊、ボランティア、警察官、パイロットなど、本人役で出演させたとのこと。
実際の事故時の画像を出してみる。
トムハンクスも記者会見で言っていたけど、映画だから少しは着色したりはあるけど、あんまり飾り付けをしないことが重要で、体験したこと、見たことを正確にスクリーンに描く必要があると。詳細にこだわること、真実のDNAが作品に含まれていることがすごく大事だって。
トムハンクスはサリー機長と話をした時に、「どんな心境だったか」ではなくて、「どんなことが起こったか」を聞いたらしい。心拍数がどうこう、とか。
どう思ったかなんてあんまり考えられないから、体がどう反応したかを聞くようにした、と。
ここも 体が自然と反応する ってことにつながってくる。
ということで
ハドソン川の奇跡でした。なかなか面白かった。
トムハンクスが監督をした「すべてをあなたに」も面白かった。
アーロンエッカートはもちろん「サンキュースモーキング」(記事へ)、
ローラリニーは「イカとクジラ」(記事へ)
なんかもおすすめです。
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